さまよいの記 2000.4
2000.4.1
エイプリルフール。嘘ばっかりついてる僕には意味のない日(笑)。
昼少し前に所用があって相模原へ。道はさすがに渋滞していて、困った。ま、でもこんなものかと諦める。あっさり終わった用事のあと、時間もあるし、天気も良かったので八王子まで行く。そこでふとここ数年、父の墓参りをしていないことを思い出し、家族には申し訳ないが一人で墓参りに行くことにした。自分が29になったこと、今何をしているかということ、これからどうしていきたいか等などのことを報告。ホトトギスが近くで鳴いていた。
帰りはもっとひどい渋滞にハマり、足が怠くなってしまう。こういう時マニュアルの車が恨めしく思う。夕刻に家に戻り、母と雑談。夕食をすませ、風呂を浴びるも、腰の痛みと足の怠さ取れず。巨人は今日も広島にやられた。開幕二連敗に言葉もなし。
春である。新しい出発をする人もいるだろうな。その新しい出発が、みんなにとって輝かしい歴史のスタートになりますように。
夜、村田喜代子さんの『鍋の中』を読み、ネットのオンライン作品を読んだ。これがいけなかった。『鍋の中』の感動が一気に吹き飛んでしまった。こんなもの、いけしゃあしゃあとHPにアップして、得意げにするなよ。こっちが恥ずかしい。不愉快な気分になって、ほとんどふて寝状態で布団に潜った。
2000.4.2
昼から母と買い物へ。昼食は母の行きつけの喫茶店でランチを食べる。しばし歓談。
買い物を終えて帰宅後、テレビを少し眺めてから出掛ける。
夜十時半過ぎ帰宅。何もするきになれず、そのまま就寝。
2000.4.3
新社会人初出勤の日。僕は有給。それでもってウチの会社には新入社員もなし。
朝用事を済ませたあと、髪を切りに行く。ただ少しばかし時間が早いかなと思って、マクドナルドで朝食をとってから行く。平日なのに混んでいてがっかり。切り終わってから帰宅し、昼食にチャーハンを作って食べる。その後車で出掛ける。
靴が欲しくてあちこち回って見るも良いのがない。仕方なしに本屋に出向き、本を二冊、購入。家に戻って夕飯を食べてから寝てしまう。
深夜に起き出し、そのまま寝れずに困り果ててしまう。
2000.4.5
本屋にて宮本輝氏の『ひとたびはポプラに臥す』六巻を購入。シルクロードの旅6700キロの紀行文の最終巻。ただの紀行文ではない。これほど色々なことを考えさせられるものはなかった。僕は読み進めるうちに、妙に静かな気持ちになっていった。一から五までをこれまで何回も読み返したけれど、この六巻もきっと何度も読み返すだろう。帯に人生の紀行というのは的を得ている。
女っていうのはつくづく融通の利かないものなのだなあと呆れ果てる。
2000.4.8
昼過ぎに車を洗車したらワイパーが壊れた。すぐに直せるものなんだけど、個人では治せず、ほっとく。また右フロントタイヤのエア注入口のキャップが無い。自分で洗車しないとわからないこともあるよなあ。あやうく高速に乗るところだった。おおコワ。
今日の巨人戦は実に良かった。こういう勝負のあやっていうのはいいなあ。
2000.4.9
昼にスパゲティを茹でて、明太子スパゲティを作って食べる。そのあとテレビ台を作って、居間のレイアウトを変える。休みの中の肉体労働は堪える。
自分ではどうにも動かしがたい体。気持ちはあっても空回り。信頼できる人もなく、夢や人生を語り尽くせる親友もそばにいない。それでも流れは止まることなく、漕ぎ出さなくてはならない。
誰もオレに指図するな。オレに理解を求めるな。オレに意味なき檄を押しつけるな。
2000.4.11
今日は会社で上司と喧嘩。ひどく不機嫌。なんでもかんでも『大体』ですますな。少しはしっかり会社というものを運営してみろ。中学校の生徒会じゃあるまいし。
社会人十年目の区切りで新しいスタートを思ったのに、いきなり喧嘩をするとは如何なものか。すれてしまってるのかなあ。
小説を書くには『向こう岸』に行かなくてはいけない、とさる作家が仰しゃっていたけれど、ほんの少しわかる(ような気がする)。その岸にいかなくては物語が、人物が動き出さない。ここ数週間長編の着地点をどこにしたらいいのかわからなくなっていて、止まったまま。その他書き始めた短編も立ち止まっている。あと少しで岸に行く決意が固まりそうなのに、何故か足が向かない。何かこっちに気にすることでもあるのかな。いや、ありすぎるのかもしれない。
美しい人に出会いたい。美しい物語を書きたい。
2000.4.13
会社を七時に出て、帰りに本屋へ足を向ける。金子達仁氏の『惨敗』の文庫が出ていたので購入。なんだかんだ言っても、この人の熱にあてられてるのかもしれないな。夕食はマクドナルド(粗食)。
巨人の試合を途中まで見るが、勝てそうになかったので、某テレビ局の手塚治虫劇場を見る。手塚治虫氏の作品というのは優しさに溢れているが、残酷で非情な部分がある。優しさは理想やファンタジーとして埋めこまれ、残酷で非情さは現実というカタチで表現されている。その二つを分けるのではなく、混ぜて物語を構築させている。漫画家だけど、希代の作家であろう。先日やった『ブラックジャック』は失敗だけど、今回のはまあまあだった。『るんは風の中』と『カノン』は良かった。『ふしぎなメルモ』はいささか無理がありすぎ。僕は『雨降り小僧』と『夜よさようなら』を見たいけど、ドラマでやるとつらいんだろうなあ。
2000.4.14
今日の深夜M君が遊びに来てくれる。非常に嬉しかった。色んな話をして、僕は元気を貰った。ありがたいなあ、こういう生命力に溢れる人に出会えることは自分の生命力をも燃えさせてくれる。
人間は脆弱で、弱い。強くなるにはどうしたらいいのだろう。今日僕はそんなことを考えた。
強くなるには、やはり生命力という、人間の奥底に眠る大きな力が必要だ。この生命力という力が人を強くさせ、かつ人間の器を大きくさせる。その力を湧き上がらせた時、人は乗り越え難い壁を突き破ることが出来るのだろう。
それは地表を突き崩し、出来上がる山と同じだ。塵が積もったものは山でもなんでもない。
2000.4.15
朝から雨、雨、雨。ひたすら寝る。まどろんで、断片的に色んな事を考え、またまどろんで。
昼過ぎに起きて、稲荷寿司を2つ食べる。今日は買い物には行かない。夜、お世話になっていた車の担当者が新しく出来た港南区の店に異動になったのを知って、店の場所を確認がてらドライブに行く。しかし雨の日はドライブするべきじゃないな。どうも車としっくりいかなくて、疲れるドライブとなる。しかも不慣れな道を走ったら2回も道に迷った。深夜帰宅。『惨敗』を読むも、途中で飽きる。面白くなし。
2000.4.16
昼より町内会の集会へ出席。先月は仕事のため欠席したので、一ヶ月ぶりの顔出し。皆さんお元気そうでなにより。Kさんと今後の打ち合わせをしたあと、M君と二人でI君に会いに行く。みんな元気があって、非常に嬉しい。帰宅後母と二人で買い物に行く。
巨人は横浜相手に二連勝。気分がいい。
一度でも勝利を味わったことがあれば、人は苦難を乗り越えてでも大きな壁に挑戦することが出来る。負けたとしても「次こそは」と思い、立ち上がれる。そしてそれは単純な「負け」ではなく、「勝利」への因と出来る。誰だって勝ちたい。じゃあどうすれば勝てるのか。
答えは単純明快。勝つための努力を怠らない事、そして執念を持ちつづけることだ。人は勝ってこそ幸福である。しかし勘違いしてはいけないのは、たとい負けたとしても「次こそは」と思っていれば、それは負けでは決してないことである。勝負なんてと思うやつほど、人生を真剣に考えない。幸福にはなれはしない。どんなものであれ、人生は勝負だ。そして勝負であるならば勝たなくてはいけないのだ。
オレは勝ちたい。どんな汚い手をつかっても勝ちたい。
2000.4.18
仕事は昨日と打って変わって暇。雑談をしながら時間を稼ぐ。けど定時でもはるか遠い道のりだよなあ。眠くて仕方がなかった。
今日は阪神にしてやられた。ぐうの音も出ません。福原は良いピッチャーだ。あれは打てないよなあ。明日はたのんまっせ。
もう少しで短編小説の構成が出来上がるんだけど、どうも見えてこない。要所要所をつなぐ、場面が浮かばない。書き出しちゃった方が良いのかなあ。今のままだと絶対にずれちゃいそうで、怖い。
連載はようやく動きだす。でもイマイチしっくりこない。
執筆枚数三枚。
2000.4.19
朝起きるとどうも喉が痛い。鼻水もずるずる。こりゃ風邪を久しぶりに引いたなあと思いつつ、会社へ。なんだか怠くてぐったりとしていると、同僚から『顔色が悪い』だの『目が虚ろ』だのと言われる。定時に帰宅。薬を飲んで早々に寝ることにした。
2000.4.20
朝からの雨も手伝って、会社に行くのが面倒くさく、初めて体調不良で会社を休む。朝飯を食べて薬を飲み、テレビをぼーっと眺める。昼飯はカップラーメンを食べて、薬を飲んで夜まで寝る。七時に起きて飯を食べて薬。とにかく左後頭部に鈍痛があり、このまま血管が切れてしまうのではないかという恐怖に襲われる。
2000.4.23
朝からどうも不機嫌。風邪は大分良くなったのに、体の怠さが抜けない。
2000.4.24
今日から仕事が入るも、全然進まず。納期がほとんどない状態なのにも関らず、これは間に合わないのではないかという勘が働く。焦燥感が募る。夜十一時になっても半分も片付けられず、いけないとは思いつつもモノに八つ当たりをする。
とにかくどれだけ時間があっても、どれだけ考えても解決出来る糸口がほとんど見えてこない。覆いかぶさるように出てくる問題に、対処仕切れず、焦燥、苛々が募り、頭はもうパンク寸前だ。
ひどく疲れる。
2000.4.26
とにかく仕事が片付かない。相手先の担当者は良い人だし、仕事もひどく大変なものでもない。いかんせん日程がない。GWというものさえなければ、楽にこなせる仕事なのに。あと二日は欲しいよなあ。今日は十一時半まで仕事。深夜十二時に帰宅。何もする気にもなれない。
2000.4.29
世はGWの初日。なんとか昨日で仕事を終わらせたのでワシも休み。とにかくこの二日は寝る事、体を休めることにした。で、ビデオを一本借りる。前々から見たかったロベルト・べニーニ監督の『ライフイズビューティフル』をようやく鑑賞。実に陽気で、自然にこみあげてくる笑い。どこまでも優しくて、人を喜ばせることの出来る前向きな主人公のグイド。その姿はなるほど、チャップリンが描きそうな人物である。ただ違うのは辛辣なる批判が込められているわけではない。しかし、戦争とはかくも愚かなものなのかという事は充分に伝わる。笑うって大事なんだな。そんなことがしみじみと胸に迫る作品である。最後はやっぱり泣いてしまった。
昼間にあの『知ってるつもり!?』の再放送でジャイアント馬場氏がやっていたけど、あれには涙が止まらなかった。「敵はもういません。戦うべき相手は自分自身です。これからは自分との戦いなのです」この言葉の重みを知るには、僕はまだまだ未熟だけどそれを少しでも経験している。この言葉は沁みるよなあ。
執筆枚数三枚。
つづく
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