人見知りが激しいクセに寂しがり屋。人の意見を素直に聞けないガンコ者。出無精で、短気で、恥ずかしがり屋。
そんなハタから見ればほとほと手を焼きそうな人物は誰でもないこの僕である。
社会人になってから人付き合いの多くなった僕はこの性格にふりまわされ、本当に困ってしまう男である。
社会人になって覚えたこと。それは愛想笑いと議論をしない事。とにかく当たり障りのないようにと生きてきた。
そんな僕にガツンと言ってくれた男がいた。それは僕が本当に大事にしている親友、Mである。
「ダイアモンドって知ってるか?」
高校を卒業して、四年ぶりのMとの再会を果たした夜、彼は突然僕にそう聞いてきた。
「いくらなんでもバカにしすぎだろう」
僕は口を尖らせて答えた。
「ダイアモンドの原石を指輪にのせるような石に磨くのに何を使うか知ってるか?」
僕はわからずに首をかしげた。
「ダイアモンドっていうのはすごく堅くてなかなか研磨できないんだ。それを研磨出来るのは同じダイアモンドだけなんだぜ」
へえそうなんだ。僕は彼特有の雑学の話だと思って耳を傾けていた。
「人も同じだ。人は人とでしか自身を磨けない。イヤなやつだろうがいいヤツだろうがそいつとぶつかりあってこそ自分を磨けるんだ。偉大な人はそうやって人格を形成していったんだ」
オレもそうして磨いていくんだ。そうつぶやくと彼はゴロリと横になった。
僕は会社勤めがいやになったとか、人付き合いに嫌気がさしたなんて一言もいわなかった。ただ近況をボソボソと話しただけである。その時の僕の心の内を見抜かれたようで、
僕はハッとした。いつもならカチンとくる言葉だったがその日の夜は心に沁みた。
人は人とぶつかることでしか磨かれないという言葉はまことに至言である。
そしてこの言葉はまるでダイアモンドのように僕の心に残っている。
その時から僕は人付き合いを率先したかといえばそうでもなかった。いやになって放棄してしまうこともしばしばだ。
けれど、いつでも思い出す。
あのMの言葉は暗くなった僕の心の中でキラキラと輝いているのである。