鳥取遠征(とうはく梨健康マラソン)
                                 
金子尊博

今回は、鳥取へ遠征して、とうはく梨健康マラソンという大会に出場する。
”とうはく”とは、鳥取県東伯町のことで、東伯町の梨畑を見ながら走り、ゴール後に
梨の食べ放題があるということで『とうはく梨健康マラソン』と命名されているようだ。
何故、このマラソン大会に出場するかと言うと、実は我らがキャプテンの実家が
東伯町で会場から徒歩10分程度のところにあり、出てみる? いいねー! 
という軽いノリで出場が決まった。参加メンバーは、私とキャプテン、K枝さんの3名。
スケジュールは、9月1日午後出発。車で東名高速〜名神道〜中国道〜米子道を通り、
途中で仮眠を取りながら、9月2日朝に現地に到着。9月3日大会に出場して、9月4日
午後帰途につくということになっている。折角、鳥取まで行くんだから、もう少しゆっくり
したいなーとも思ったが、私の仕事の都合上、これが精一杯の計画となった。
鳥取での観光なども考え、車で行くという事にしたが、これが思いも寄らぬアクシデント
を引き起こす。

2000年9月1日(金)晴れ 出発
予定では16時頃、我が家を出発することになっていたが、仕事に手間取り、結局出発
したのは17時30分。キャプテンには我が家で待機していてもらい、私の帰宅と同時に
出発した。東名厚木IC手前で渋滞にはまり、東名高速に乗ったのは、18時30分頃
だったかな?最初のSAである足柄SAに立ち寄り夕食を摂る。計画では、全てのSAで
休憩をとりながらゆっくりと進み、滋賀県の多賀SAで入浴&仮眠を取ることになっている。
足柄を出発して、富士川、牧の原、浜名湖、上郷と各SAで休憩を取り、その都度運転を
交替する。上郷を出発すると小牧JCTを経由して名神高速道に入る。名神高速の最初の
SAが養老、次が取り敢えずの目的地、多賀である。この多賀SAには、レストイン多賀と
よばれる施設があり、入浴施設と仮眠施設がある。このまま走り続けると早く着きすぎて
しまうし、翌日観光する予定になっているので、入浴してさっぱりして、仮眠をとってすっきり
してから先へ進もうということになっていた。予定時間より遅れ気味ではあったがここまでは
順調。特に何事も無く来ていた。(実はこの時点でこの後起こる、悲劇の幕開けを予感する
出来事が起きていたのだが、そのとき運転していたK枝さんは、その悲劇の前触れを見逃
していた!?)

2000年9月2日(土)晴れ 悲劇の始まり?
午前3時頃、多賀SAを出発する。運転は私。次の大津SAへ向けて快調にドライブと思いきや
フロントパネルで何やら赤いランプが点いたり消えたりしている。最初の頃は点灯する時間が
短かったので、よく分からなかったが、だんだんと点灯している時間が長くなる。よく見ると
それは、油圧警告ランプだった。こんなに朝早く、しかも高速道路走行中に...
かなり動揺していたが、同乗者に悟られぬよう平静を装う? 
そして大津SAのガソリンスタンドへ直行。スタンドのおじさんに油圧ランプのことを話し、
オイルをチェックしてもらうと、おじさんの顔が険しくなり、私を呼びに来る。車は修理台の
ところへ移動。

おじさん:お客さん、この車オイルが入ってないよ。こんなんで、どこから走ってきたの?
私   :神奈川です。オイルが入ってないってこの車は新車で7月に来たんだよ。
おじさん:でも、入ってないよ。漏れてるのかな? (覗きこんで)いやー漏れてないな−。
私   :新車点検を7月末に受けて、そのときにオイル交換してる筈なんだけどなー?
おじさん:そのときに入れ忘れたのかなー? とりあえずこのままだと走れなくなるからオイル
     入れとくよ?
私   :お願いします。

こんな会話をしていた時、キャプテンとK枝さんは車の中にいた。車は修理台に乗せられ、
前輪が持ちあがっている状態だったのに...『遊園地みたいだね。』とK枝さんがつぶやく。
まったくのん気だ!私は、これから先のことを考えると非常に不安だったが、この二人の
明るさに不安な気持ちが消し去られていた。オイル交換が終了したので大津SAを出発する。
『きれいなオイルが入ったから、調子いいような気がするなー』これは私の台詞。
わたしも結構のん気だった。このあと、吹田JCTを経由して、中国道に入る。西宮名塩SA、
加西SA、勝央SAで休憩して落合JCTから米子道へ入る。蒜山高原SAで最後の休憩。
K枝さんは最終日になっても、ひるやまこうげん(正しくはひるぜんこうげん)と呼んでいた。
もうひとつ付け加えると、鳥取の大山(だいせん)を”おおやま”と呼んでもいた。
蒜山高原SAをあとにして、米子道の溝口ICで高速を降り、大山のみるくの里へむかう。
ここで前の会社の後輩一家と合流する。みるくの里では、昼食とソフトクリームを食べ、
芝生の上に座り、くつろいでいた。

その後、境港の水木しげるロードへ行こうということになり、移動を試みるが、オイルが
ちょっと気になったんで、オイルの量をしらべてみる。オイルゲージを差しこみ見てみると、
ナントオイルが全く付かない。大津でいれたオイルがどこかへ消えてしまった。これは一大事。
オイルの入れ忘れでは無く車の欠陥だ!!ということで日産のディーラーを探して直行。
事情を話して車を見てもらうと、ディーラーのおじさんは、ニコニコしながら
『オイルが燃焼してしまってるようですね。XXがXXだから』と語る。
車はガソリンを燃焼させて走るんじゃないのか?オイルを燃やすなんて聞いた事が無いぞ!
でもそういえば白い煙がマフラーから出るときがあった。
あの時にガソリンにオイルが混じり燃えてしまっていたんだろうか? 
で、どうすりゃいいんだと思っていたら、おじさん曰く『オイルの4g缶を乗せておいたので、
時々オイルの量をチェックして減っていたら継ぎ足して下さい』だって。
そんな車、今どきあるのか?

この後は予定通り、妖怪のブロンズ像を眺めながら水木しげるロードを歩き、後輩一家と
別れて市場食堂で夕食。海が見える入浴施設で入浴して、キャプテンの実家へと向かう。
到着したのは8時過ぎ?大きな家を想像していたが、想像通り大きな家というか立派な
お屋敷だった。門構えがしっかりとしていて倉があり、庭には石が敷き詰められ、まるで
旅館のようだった。
そしてキャプテンのお母さん、お父さん、弟さんにご挨拶。
軽ーくビールを飲んで就寝。疲れていたせいか翌朝まで一度も目が覚めなかった。

2000年9月3日(日)曇り時々晴れ 大会当日
朝、目が覚めたら曇っていて涼しげだった。朝食をご馳走になり支度を整えてコースの下見。
キャプテンのお母さんに車で案内していただいた。前半に上り坂、後半は下り坂というはっきり
としたコース設定で高低差もかなりある。前半の上り坂をいかに上るかがカギとなりそうだ。
受付を済ませて、10時30分のスタートに備える。いつもはアップで走ったりしないのだが、
今回はいきなり急な上り坂を登らなければならないため、珍しくアップを行う。
そう、この大会にはステファン・マヤカとその奥さんの盛山選手が出場する。折り返し地点が無い
周回コースだからマヤカ選手の走る姿を見れるのはスタート直後数秒だけだろう。
10時30分。ほのぼのとした雰囲気の中、スタートが切られる。雰囲気がほのぼのしていたから、
私もリラックスしていたかというと、そうでもない。いつものように緊張し、周りのペースに惑わされ
飛ばしてしまう。いい気になって上り坂を登り、調子にのっていたらやはり、いつものようにバテ
はじめ、下り坂半ばでキャプテンに追い越される。
湘南ビーチではついていったが、今回はそんな余裕はもう残っていなかった。下り坂を下りきる
までに数十メートルの差をつけられた。それでも下り坂は勝手に脚が動いてくれるから良かったが
残り3キロあたりからは平坦な道路が続く。日差しがきつい。のどが乾く。歩こうか? 走ろうか?
迷いながら走りつづけた。沿道の応援は少なかったが暖かかった。
梨園のおばあちゃんやおじいちゃんが声を掛けてくれる。シャワーのサービスもあった。
でもその声援に手を振って応える元気はもう無かった。最後に競技場へ向かう急な上り坂で力を
振り絞り2人追いぬいたのが精一杯。
でもこの二人を抜いたおかげで100位という区切りのいい順位になった。まあ秋緒戦だから
こんなもんか?なんて生意気ないい訳をつけてこの場をおさめる。
成績はイマイチだったが景色は綺麗だし、レース後に食べた梨も美味しかった。
なによりも雰囲気が良かった。昔の運動会を思い出すような雰囲気が懐かしかった。
もう一度走ったらもう少しタイムを縮められそうな気がする。チャンスがあれば...もう一度!?

レース後はいつもの通り、温泉へ。
今回は東郷湖のほとりにある
龍鳳閣という温泉へ。水着着用で数多くの入浴施設やプールが
ある。なかなかよかった。折角だからということで隣接する中国庭園「燕趙園」にも入ってみた。
中国の雰囲気が充分感じられこちらもなかなかのものだった。夕食はさざえご飯。
キャプテンのお母さんにご馳走になってしまいました。
何からなにまでお世話になってしまい、有難うございました。>お母さん。
                                   (キャプテンに雰囲気が似ていて若々しい)
あっという間に2日間が過ぎていった。

2000年9月4日(月)曇り時々晴れ 鳥取砂丘
最終日も朝食をご馳走になってしまった。
本当に有難うございました。一度、湘南のほうへもお越し下さい。
自動車を修理して万全の体制を整えておきますので > お母さん。

と個人的なメッセージはこの辺にして、この日は寄り道をしながら鳥取砂丘を見学して、
門脇茶屋というお店で山菜料理を食べ、キャプテンとはお別れし、帰途につくことになっている。
最初に行ったのは、潮風の丘とまり と言う場所で、海を見渡せる眺めのいい場所で
スーパースライダーというソリのような乗り物で滑り台を下る。3人とも滑ったが、
私が一番遅かったようだ。マラソン同様、やはり下りは苦手なのか?
それからここ、とまりはグランドゴルフ発祥の地だそうでグランドゴルフのコースがある。
折角だからということでちょっとやってみることに。成績は伏せておくが私の名誉の為に言っておくと、
8H中でホールインワンを2度出した。(ひとつはインチキ?)
次の寄り道ポイントは白兎海岸。ここはあの有名な神話『因幡のしろうさぎ』の舞台だそうで、
うさぎが渡ってきた岩(島)が沖に見える。ガイドブックでは『因幡のしろうさぎ』の歌が彫られている
石碑があったはずなんだが、なくなっていた。
そして本日のメインイベント、鳥取砂丘。これはびっくり。広さもさることながら、あんなに高い砂山が
あるのかというくらい高い砂山があってそこを登りきると、日本海を一望できるという絶景ポイント。
こうなると、この高い山を海に向って一気に下って行きたいという衝動が生まれて来つつある時に、
既にキャプテンはアルプスの少女ハイジのように手を振りまわし、砂山を駆け下っていた。
この鳥取砂丘もだんだん狭くなってきているそうだが、いつまでもこのままであってほしい。

鳥取砂丘を充分に満喫し、最後の目的地『門脇茶屋』で山菜料理を堪能して、鳥取駅へ。
ここでキャプテンとはさよなら。またすぐに東京で会うのに何かさびしかったのは
この3日間が楽しすぎたからか、それともこれから家までの道のりが辛く感じたからだろうか?

往きは米子自動車道を使ったが、帰りは鳥取砂丘からだったので岡山へ下り、中国道の佐用IC
から高速を使った。オイルの量が気になっていたので、最初の加西SAでガソリンスタンドに入り、
オイル量をチェックしてもらう。やはり不安が的中。オイルゲージに1滴のオイルもつかない。
事情を説明して、オイルを注ぎ足してもらう。

スタンドのおじさん:『こんな車いまどき無いぞ! ディーラーに言って車ごと換えてもらえ。』
私:『そうだよね。ひどいよね。』
スタンドのおじさん:『これで、神奈川まで帰るなんて大変だな−』
私:『...』

ねぎらってもらうのはいいが、余計に不安が高まる。
その後も車は、時折白い煙を吐き、ガラガラという異音を立てて東へ向って怪調に走る。
カーステレオの音を小さくしておくとガラガラという音が良く聞こえるので、わざとボリュームを
上げる。それでも、白い煙と異音以外には特にこれといって異常はなく(これだけで充分だが...)
着実に距離を稼ぐ。加西SAでは20gのガソリンをいれた。これはケチっているわけではなく、
オイルの注ぎ足しをしてもらうのにガソリンもいれずに頼むのはちょっと気が引けたからだ。
牧の原SA手前でガソリン不足の警告ランプがついたのでガソリンを給油することにした。
もちろんオイルも...
やはりここでも、オイルは無くなっていた。

スタンドのおじさん:『ひでぇーな、オイルが無ぇよ。』
私:『そうなんですよ。XXがXXでXXだから、(中略) オイル足しておいてください。』
スタンドのおじさん:『おーいいよ。でもオイルが燃えてるとすると、マフラーも...
      (マフラーを覗きこんで)うわーひでぇなこりゃ。ディーゼルカーでもこんなに汚れねえぜ』
私:『...』

まったく困ったもんだ。新車点検でも異常が無く、買ってからわずか2ヶ月でこの始末。
怒り爆発という感じだが、ここで車にあたっても仕方ない。とにかく家まで無事帰りつかなければ...
それでも何とか御殿場まで来た。ここまでくればもう平気だ。ラストスパートで追い越し車線に入る。
中国道に乗って以来ここまで、一番左側の車線を80キロに抑えて我慢してきた。後ろから迫り来る
トラックに怯えながら... でも、もう大丈夫。そしてついに厚木ICに辿りついた。疲れも出たが、
妙な感動すらあった。

ということで、鳥取遠征はこれにて終了。
自動車の方は、ディーラーに持っていってもらい診断を受けた結果、なんとかというパッキンに漏れ
があり、シリンダ内にオイルが混じってガソリンと一緒に燃焼していたとのこと。パッキンだけの交換
でも治るが、エンジンがダメージを受けている可能性があるので、エンジン毎交換。さらにマフラーも
汚れてしまっているので交換するらしい。ちなみにこの車は、N産自動車の青い鳥です。

今回のレポートは、マラソンレポートというよりも単なる旅行記になってしまいましたが、
梨マラソンがたいへんすばらしい大会だったということを付け加えておきたいと思います。


戻る