富士北麓24時間リレーマラソン
                                 
金子尊博

2000年8月5,6日(土,日)晴れ時々曇り、一時小雨


レースに参加して感動を分かち合う事を目的に結成したサムズ・アップも半年が経ち、
この辺で一発盛り上がりそうな企画はないかと探していたところ、目に飛び込んできたのが
24時間リレーマラソン。関東近辺で行われる平塚と富士北麓の2ヶ所が候補として挙がったが
1チームの参加メンバーが最高で12名。それに富士山麓ということで涼しいのでは...との
思惑から、富士北麓24時間リレーマラソンの出場を決めた。現在のサムズ・アップのメンバー
は13名。この中の10名と私の草野球仲間の1名合わせて11名での参加となった。
24時間走ると言っても、一人当りにすれば2時間ちょっと。そんなに大したことじゃないだろう
と思っていたが、いざ始まってみるとこれが大したことだった。(少なくとも私にとっては...)
チームの方針としては各ランナーにあらかじめ走る希望時間帯、周回数(時間)をアンケート
しておおまかな出走順を決めてそれに沿って走ろうということだったが実際その通りには
ならなかった。

午前9時 テント設営開始。この時点で男性は2名のみ。ちょっとした?アクシデントや交通渋滞
などで到着が遅れ気味だった為テント設営には苦労した。一番おかしかったのは、屋根を張らず
に骨組みを組んでしまった事。係員に指導されてはじめて気づいた。
そういえば、運動会でこのタイプのテントを設営した時もそうだったな。気づくのが遅かった。

午前10時 なんとかテント設営が完了して24時間リレーマラソン、夢(悪夢?)のスタートを迎える。
記念すべきスタートランナーは鶴ちゃん(関係無いけどチームには亀ちゃんもいる。)
スタートの合図とともに様々な格好をしたランナーがいっせいに走り出す。私はビデオカメラを
片手に鶴ちゃんを探したが結局見つからなかった。これが自分の子供の運動会だったらエライ目に
あうとこだ。幸いにも私に子供はいないが... そしてこれから24時間という時間を同じ空間で
メンバーと過ごす。

午前11時 スタートランナーの鶴ちゃんがいきなり1時間の快走。本人は涼しい顔で7周を一気に
走りきった。途中何度か声を掛けたが、爽やかな笑顔で応えてくれた。
2番目のランナーはキャプテン。予定周回数が2周ということで、ハイペースで軽快に走り始めたが、
2周目に入りちょっと辛そうな顔をしていた。どんなに辛いレースでもまわりにそれを悟られない笑顔
をみせるキャプテンにしては珍しい。1周目のペースが早かったのか?坂が予想以上にきついのか?
そういえば、富士山麓だから涼しいと思っていたのに結構暑いなー。
キャプテンの襷を受けたのはカオルさん。カオルさんも真っ赤な顔をして走っていた。やっぱり暑いん
だな。そしてカオルさんの襷を私が受けた。前の二人をみていたので抑え目に走り出した。
500m付近から心臓破りの坂が始まる。距離はそれほどないが傾斜がきつい。暑さも堪える。
坂を登り来って呼吸を整え始めると第2の坂があらわれる。こちらは短い坂だが呼吸が整い始めた所
だけにきびしい。昇りきると1km地点。ここから先はしばらく平坦で、その後一気に坂を下る。下り坂の
終わり付近が1.5km地点。坂を下りきると競技場裏のストレート。ここは応援も多いし、坂を下ってきて
勢いがついているので気持ちよく走ることが出来る。競技場に戻りメインスタンド前の直線がリレー
ゾーンとなる。予定周回数の2周を走り、次走者の嫁はんに襷を渡した。これから先何度もこの辛さ
を味わなければいけないと思ったらちょっと、へこんできた。ゴールまであと22時間。先が見えない。

正午 襷は嫁はんから、玉さん(遊び人の金さんじゃない)→雨子さん→晴男さん→亀ちゃんと渡る。
そういえば、チーム結成してから雨子さんと晴男さんが同じ企画(レース、練習)に参加したのは2度で
天気はいずれも晴れ。晴男さんの2戦全勝で迎えた今回が3戦目。ここまでは晴れているので、
晴男さん優勢だが遠くの空を見上げると雲が広がり始めていた。雨子さんのリベンジか?
ここまでで9人が出走。残り2名のうち1名は夜中に合流予定の、ながたまさん。もう一人はエースの
うさぎさん。今回は仮装で挑戦。午後4時頃、出走予定。仮装内容は秘密。

午後2時 キャプテン2度目の出走。残念ながら私は買出しに出かけていたのでその勇姿をみること
は出来ず。襷はカオルさんを経由して私へ。2度目の出走も以前として暑い。こうなると、にわか雨が
欲しくなる。雨子頑張れ!! しかし、その願いも通じず。 予定では2周を20分以内で走ろうと思って
いたのに20分を超えてしまった。予定では15周(150分)走ることになっているので残り11週。エーーッ

午後4時 エースのうさぎさん登場。仮装はライオン。うさぎさんなのにライオン!?
ライオンはうさぎを捕まるのにも全力を尽くすというが、全力を尽くして走るという意気込みだろうか?
1周目、競技場裏のメインストリート?に戻ってきた時に、その早さに唖然。うさぎを追いかけるライオン
のごとく(見たことないが)猛然と走りぬける。声を掛けると手を振ってくれるので、割りと気さくなライオン
のようだ。ライオンさんは、1時間20分の間に10周を消化して順位を119位から80位まで持ち上げた。

午後6時 鶴ちゃん2度目の出走中。今回も1時間の予定。順調に周回数を重ね7周でキャプテンに
襷リレーを行う。このあたりからメンバーがちょっとづつ壊れ出す。といっても足の故障ではなく、頭の方?
薄暗くなり始め、照明に灯がともり始めるとメインストリートで応援に精を出している亀ちゃん、カオルさん
雨子さん、そしてキャプテンまでもが照明に照らせれて明るくなっているところ(ステージ?)でパフォー
マンスを始める。鶴ちゃんが出走している時には、鶴のまね?、扇?、キャプテン出走中は命の人文字や
ちょっと言葉では言い表せないようなポーズまで・・・
お祭りムードがそうさせるのか、それともあまりの疲労で頭の回路が狂い始めたのか?
苦しさを乗り越えてだんだん楽しくなってきた。

午後7時 キャプテンの襷がカオルさんへ。カオルさんは翌日仕事に行かなければならない為、早朝に
競技場を離れる事になっている。次の出走がラストランとなる。日が暮れて涼しくなったきてから、それまで
2周にしていた走者が3周に切り替え始めた。キャプテン、カオルさんともに3周づつ周回し、私の3回目の
出番となった。確かに涼しい。また暗いせいか昇り坂が短く感じる。スピード感もある。結構とばしてるよう
だったが疲れはそれほどない。軽快に走り(つもり)3周の役目を終え、雨子さんに襷を渡す。時計をみる
と32分。飛ばしていたような気がしてたけど、暗さに惑わされてただけみたい。そういえば、私の出走中、
雨が振り始めた。さすが雨子さん。自分の出番に合わせて雨を降らすなんて...
晴れ男さんに一矢報いたというところか?

午後9時 雨子さんの襷が玉さんへ。そういえば玉さんは1回目の出走後、私に『とんでもないイベントに
誘ってくれたね』と言っていた。そう言いつつもこれが3度目の出走。これを機会にマラソンにはまったり
して...そうそう、今回のチーム、ランナーは11名だが、玉さんの奥さんがサポーター?として参加。
この24時間リレーマラソンは走るだけじゃなく、応援したり、記録とったり、食べ物の調達にいったりと、
結構雑用が多い。そういう点では玉さんの奥さんが来てくれて本当に良かった。ランナーが一人増えれば
それだけ楽になるのは当たり前だけど、サポーターが一人増えてくれるのもすごく心強いということが
分かった。そうこうしているうちに午後10時。スタートしてから12時間経過で残り半分。まだー!

午後11時 亀ちゃんから襷を受けた晴れ男さんがうさぎさんに襷を渡す。晴れ男さんはこの時間帯に
勝負を掛け、1時間走に挑戦。1時間チョットで7周を消化。夜になって走りやすくなったせいか、
みんなの走りに気合が入ってきた。でもまだ半分。ちょっと仕掛けが早過ぎやしないか?夜明け頃に
ちょっと不安を感じる。晴れ男さんから襷を受け取ったうさぎさんは、仮装第2弾。深夜ということで、
映画『スクリーム』の仮装で走りぬける。おーこわー。うさぎさんは仮装して走ることは、自分に負荷を
かけて走ることなので能力の向上にもつながるといっていた。このスクリームの仮装はまさにそのもの。
マスクの口の部分に小さい穴があるだけで、呼吸しづらくなっている。まるで高地トレーニング?
うさぎさんは2周走り、応援団の前へ来ると突然黒いマントを脱ぎ捨て、マスクを外し普通のランナー
姿になって走り出した。ここからが本領発揮。いままで呼吸がしづらい状況で走っていたのが急に
楽になったのでスピードが一気にあがる。本人のベストラップを叩き出した。結局うさぎさんは、計4周
を消化して、うちの嫁はんに襷リレーを行う。順位はついに70位台に突入。

午前0時 嫁はんは、予定通り2周を消化。7月からジョギングを再開したせいか、以前よりもちょっと
足取りが軽くなってきているような気がする。(気のせいかも...少なくとも本人はそう信じている?)
次走者のカオルさんはこれがラストラン。翌日に仕事が入ってしまい、残念ながらゴールを皆と迎えら
れない。その悔しさを晴らすかのような快走をみせる。2周目、3周目に入っても足取りは衰えず見事に
ラストランを最速ラップで飾った。そしてカオルさんの襷を受け取るのがながたまさん。カオルさんの
旦那さんだ。カオルさんの最後の襷を旦那さんが受け取る。二人で一人。夫婦二人三脚か?
ながたまさんは、カオルさんの気合が乗り移ったかのような快走を見せるが、2周目、3周目と次第に
表情が厳しくなって行く。聞くところによると大会直前、貝にあたってしまい体調を崩していたそうだ。
それでも、3周を走りきり、キャプテンへ襷を渡す。

午前1時 キャプテンが3周し、私がその襷を受け取る。ここ数時間のみんなの気合を受け最初から
飛ばす。登り坂でもスピードをできるだけ落さず、下り坂では一気にスピードを上げて駆け下りる。
予定通り3周を消化して、雨子さんへ襷リレー。そういえば雨子さんは、大会にエントリーしていたもの
の都合が悪くなり欠場する予定だったが、大会4日前に都合がついて出場できるようになったの
だった。私は走り終わった後、シャワーを浴び休憩(睡眠)に入ってしまったが、こうして休憩できるの
も雨子さんが出場できたからかもしれない。午前2時を過ぎ、走者が手薄になり始めていた。
こんな状態で休んでいていいのか?と思いながらもキャプテンの暖かい言葉に甘え休憩をとった。
(気持ちでは休みたくはなかったんだけど、体がいうことをきかなかった。) 走り終えたあと、
シャワールームに直行。深夜2時近いのに結構混んでいた。ロッカールームには全裸でシャワーの
順番を待つ行列が出来ていた。ちょっと異様な雰囲気?
この後、襷は雨子さんから玉さん、亀ちゃん、晴れ男さんと渡ったが、この時間帯私は夢の中にいた
のでみんなの走りの様子はわからない。が、手薄になっている時間帯に晴れ男さんが1時間走った
おかげで、なんとか乗りきったようだ。

午前5時 晴れ男さんからキャプテン、雨子さんを経由して襷はうちの嫁はんに渡っていた。
私はこの頃ようやく目が覚めて戦線復帰。しかし休憩直前の走りの影響か足が重い。この後の出番に
不安を感じつつも応援に加わる。睡眠時間は2時間弱だったがぐっすり眠れた。目は冴えている。
猿の仮装をしたランナーがギターを抱えて『モーンキー、モンキー 君の朝だよ!』と歌っている。
確かに朝だ、ゴールまで残り5時間。日が昇り始め再び暑くなりそうな気配。でも先は見えてきた。

午前6時 うさぎさん3度目の出走。今回はキティーちゃん。サンリオチームの人から『頑張れ!』と
声を掛けられていた。相変わらず走りは軽快。チームの順位を75位まで引き上げた。ここまできたら
何とか現在の順位をキープしよう。これがチームの目標になった。
そしてうさぎさんの襷を私が受けた。足が重い、体がだるい、呼吸が苦しい。1周目から辛かった。
まだ6時過ぎだというのに日差しが強い。それでもこの出走を終えると次がラストラン。キャプテンの
暖かい気配りで最終ランナーを努めさせていただくことになっている。残り3時間ちょっと。必至に耐え
次走者の鶴ちゃんに襷を渡す。あとは気持ちで乗りきるしかない。

午前7時 鶴ちゃんが1時間弱で5周を消化。それにしても、うさぎさんと鶴ちゃんの走りにはチーム
としてかなり助けられている。このお二人はサムズ・アップのホームページを見てメンバーに入った。
他のメンバーはチーム結成時からいるわけだが、もしこの二人がいなかったら、ここまで走りつづけて
来れたのだろうか? うさぎさん、鶴ちゃん、晴れ男さんを軸にしてその前後を他のメンバーでつなぐ。
という図式が自然のうちに出来ていた。
鶴ちゃんの襷はながたまさんへ渡される。体調不良だがそれでも体に鞭打ち、熱い走りを見せる。
そしてチームはここから一人一周のスクランブル体制に入る。うさぎさんが、晴れ男さんが落ちかけて
いた順位を75位に上げ、玉さん、鶴ちゃん、キャプテンと続きリードを広げる。続く雨子さん、嫁はん、
亀ちゃんも我慢して順位を守る。

午前9時 残り1時間。ながたまさん→うさぎさん→晴れ男さん→うさぎさん→私。という最終計画が
立てられた。しかしここでアクシデント。ながたまさんが12分を経過しても戻ってこない。やはり体調が
悪くダウンしてしまったか? 転倒か? ここまで来てリタイヤ? 悪夢が頭をよぎった。
メンバーがコースを戻って探しに行く。すると、ながたまさんが元気に走って戻ってくる。アレ?
どうやら1周目の通過を見逃していたらしい。リレーゾーンに次走者がいなかったため、もう1周走っ
ていたのだった。最後へきて大きなミスを犯したが、後続チームとの差は縮まっていなかった。
ながたまさんの襷をうさぎさんが受けベストラップ更新を目指し、晴れ男さんも最後の力を振り絞って
激走する。そして9時41分、最終ランナーとして最後の襷を私が受けた。これまでのみんなの努力が
汗となって襷に重みを加えている。残り19分あったが、今の自分の体力では2周走るのは厳しい。
1周目を全力で走り、2周目はウイングランで楽しもう。そう心に決めた。1周目が走り終え、残り9分。
あとはこれまでの24時間を振り返り、メンバーが待っているメインストリートへ戻るだけ。
1歩づつ感動を踏みしめてゴールへと向う。

午前10時 下り坂の途中でカウントダウンのアナウンスが聞こえた。10,9,8 ・・・・・ 3,2,1
競技場から、沿道から、大きな歓声が上がる。『ご苦労様ー!、お疲れー!!、おめでとうー!!』 
他のチームからも声を掛けられた。帽子を振って声援に応える。そして最後のメインストリートへ。
遠くでチームメイトが手を振っている。帽子を高く上げそれに応える。暑くて、厳しい、24時間が
今終わろうとしている。チームメイトの姿が次第に大きくなってくる。声も聞こえてきた。
みんなの笑顔を見たとき、それまで我慢していたものが一気にこみ上げてきた(?)
応援団の前まで辿りつき、チームメイトと合流して、栄光のゴールを目指す。競技場ではトップガン
のエンディングテーマが流れ、ゴールの感動をさらに盛り上げる。

キャプテンがチームをひとつにまとめ、亀ちゃん、雨子さんがチームを盛り上げ、晴れ男さんが
チームの危機を救い、鶴ちゃん、うさぎさんが記録を伸ばした。そして途中で会場を離れたカオル
さんの気合を受け、ながたまさんは最後に底力を発揮し、玉さん夫婦は、まだサムズ・アップの
メンバーではないが、チームに溶け込んでサムズ・アップのメンバーとなった(?)
私達夫婦は... とにかく頑張った。
誰が一人抜けてもこのゴールは果たせなかっただろうし、この感動はなかったろう。
全員で、一本の襷を一度も休ませることなく、誰一人として歩かずに最後まで走りつづけた。
目標としていた『完走そして感動』を果たす事が出来た。チーム全員、手をつなぎ万歳のポーズで
ゴールラインを走りぬける。終わったー!!

さあ、来年はどうする?


うーん。きっと富士北麓公園に戻ってくる。今回の反省点をクリアして...パワーアップして...
サムズ・アップの夏は、24時間リレーマラソンがなければ、始まりも、終わりもしない。

         
※このレポートはノンフィクションですが、一部感動のあまり脚色されている部分があるかもしれません。ご了承下さい。


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