案件20・キレる奴
すずいち: ルールを守ってないにせよ、三巻まできたね。
すずに: そうだね。守ったルールといえばパスをしたことぐらいだろう。
すずいち: どうしようもないな。
すずに: ところでこの案件ポイントは生徒会長は空手着に欲情する、ということでいいのかい?
すずいち: ……どうだろう。それは直接過ぎるんじゃないかな。
すずに: 別になにもおかしな事は言っていない。生徒会長は中学時代、空手着をパンツごと引き下ろした、という記述から簡単に読みとれることだろう。
すずいち: まぁそこまでは事実だがね。『空手着』と限定するのはどうだろうか。
すずに: 角頭はたしか古武術をやっていたはずだが、わざわざ空手の試合に出ているのは、空手着に欲情する性質を持っているからだろう。それともなにかい、古武術の道場というのは空手の試合に参加するものなのかい?
すずいち: 確かに角頭は古武術の道場の代表で空手の試合に出ているようだな。つまり、ここには作者のK1好きが表れているのだろう。ある空手のオープン試合、といいながらつい異種混合マインドが出てしまったのだ。
すずに: 違うな。角頭は伊織佳澄の操り人形だろう? 当時ドロップアウトしていた愛する半屋工を正しい道に戻すため、わざわざ操り人形を空手の試合に送り込んだのだ。しかしこの人形は空手着に欲情する体質だったのだ。
すずいち: まだ君はサル×伊織を推していたのか。
すずに: 当然だ。それが原作からの当然の帰結なのだ。
すずいち: それだったらいっそ素直に、生徒会長×サルに行ったらどうだい? 君の言うところの空手着に対する欲情だとか、わざわざ空手の試合に出ているとかは生徒会長×サルの方が意味が取りやすいだろう。
すずに: そんな表層で物事を判断してはいけないな。
すずいち: 生徒会長は、サルの初登校を、校門前で待ち続けていたはずだ。でないとタイミングがおかしいからな。つまりこの案件は遠大なラブストーリーなのだ。
すずに: まあ、ルールに則るとそういうことになるだろうな。
すずいち: ルールとはなんだい?
すずに: 忘れたのか? 『一話ずつ判断する』という掟さ。つまりサルと生徒会長の仲は中学時代からで、その結果生徒会長は空手着に欲情し、パンツ引き下げ事件を引き起こした。しかし懲りない生徒会長は病み上がりのサルを校門前で待ち続け、サルが表れたとたん殴る蹴るのSM行為に及んだ、とみるべきだな。
すずいち: ……。
すずに: ちゃんと君の主張に従っているだろう?
すずには笑った。 すずには「攻め」なのかもしれなかった。または「受け」なのかもしれなかった。真相は藪の中だった。
…そしてすずめは飛び去っていった…。
案件22・全面対決
すずいち: 攻めというのは身長で決まるものではない。
すずに: そうだね。また肌の色合いで決まるものでもないな。
すずいち: おお、めずらしく意見が一致したね。
すずに: 僕はいつでも君に合わせているつもりなのだが。
すずいち: とてもそうは見えないが。…まあいい。 つまりあるものが攻めかどうかは対象を我が物にしたいという意図があるかどうかできまるのだ。
すずに: 一部例外もあるだろうが、おおむねそういうことだな。
すずいち: どちらがより対象に興味があるか、と言い換えることもできる。つまりこのあたりが総受が許されるが、総攻は少ないという理由だろう。
すずに: 攻めというのは通常の恋愛感情より、より強い執着を受けに対して抱いていなくてはいけないというテーゼから、総攻不可の一般原則が生まれるのだな。
すずいち: わざとわけのわからない言葉を使っても同じだ。結局、対象に対する感情がなくても受けにはなれるが、攻めにはなれない。つまりこの場合、比較するとサルが攻めであるということだ。
すずに: 違うな。二人はラブラブなのだ。しかし受けは控えめでかつサルをたてている。従ってサルが攻めなのだ。
すずいち: それはまたずいぶん時代遅れな受け攻め感だな。しかも別にここの受けが控えめであるようには見えないのだが…。
すずに: サルは戦うことによって受けに強さを見せつけている。不良系オラオラ攻めだ。
すずいち: 確かにそうともとれるな。。
すずに: しかしケンカ中見つめ合うのはよくないな。いくらバレバレだとはいえ、一応秘められた関係なのだから。
すずいち: いや、関係はここから始まったと見るべきだろう。今、まさにサルは獲得宣言をしたのだと思うが。
すずに: それはおかしいだろう。わざわざお揃いにしてきているんだぞ。
すずいち: おそろい? 服がかい?
すずに: ピアスに決まっているだろう。お揃いでありながら数を減らしている。この控えめさこそ受けのかがみだ。サルはこれから打ちひしがれた受けとのラブラブタイムの予定だったのだ。しかしむだな体力を使ってしまったせいで、文句を言っているのだ。
すずいち: ……。いや。ここは譲れないな。ここは遠大なラブストーリーの始めの一歩なのだ。始めは攻めをバカにしていたナマイキ受のキツネが徐々にサルを認めてゆくという、その貴重な第一歩じゃないか。
すずに: まあそれでもかまわない。
すずいち: 珍しいな。
すずに: お揃いのピアスまでしてラブラブだったにも関わらず、絶世の美人であるキツネに出会って、鞍替えしたのだな。まあ男なんてそんなものだ。
すずいち: ……。
…そしてすずめは飛び去っていった…。
次はRDさんで『生徒会合宿』です。
案件24・山中
すずいち: ずいぶんと久しぶりだな。
すずに: そうだね。僕たちが観念上のすずめでなかったら、すでに年老いているはずの時間が経過したな。
すずいち: 僕たちは観念上のすずめなのかい?
すずに: 僕たちは桜新町あたりの一家と同じ時間を生きているというわけさ。
すずいち: それはあまりにローカルすぎて、誰もわからないだろう。それにあの一家が桜新町に住んでいるという確証はない。
すずに: それとも、どこにあるかもわからない生徒数五千人だとかいうマンモス校と同じ時間を生きていると言い換えた方がいいかい? その場合僕たちはひたすら冬を生き続けていることになるが。
すずいち: …。とりあえず始めよう。
すずに: なに、何事もなかったように始めれば、いずれ誰にもわからなくなるさ。さて。今回のテーマは女王受けだね。
すずいち: なるほど。下僕に世話をさせていながら、それに気づいていなかったり、すぐに不満を口にするあたりは女王らしいが、金髪は女王というには格が低すぎるな。
すずに: 金髪? 太古の昔から前髪のある金髪は王子だと決まっているのだ。もちろんここでも金髪は王子だ。女王受けの醍醐味は格下のものが女王に仕えるところにある。
すずいち: では普通の女王受けなのだな。女王は気高く、自分のわがままを通す。
すずに: そうだな。そして周囲は女王に振り回されるのだ。
すずいち: しかし女王にメロメロなのだな。しかし、女王受けというのは気高いゆえになかなか手を出しにくいというのが、同人上のネックだな。
すずに: まぁ理想としてはそうだろう。しかし、女王受けというのはその魅力にふらふらと手を出す輩が多い、というところに特徴がある。女王危機一髪という現象だ。この場合も何度も起こっているな。
すずいち: ………? この男はこの場面では危機一髪現象を起こしていないだろう。しかも普通の女王受けの中でも、一二をあらそうほど危機一髪現象を起こさない女王だ。
すずに: まあよいとしよう。この受けは自分の思い通りに下僕を動かしていながらも、下僕の危機にはじっと耐えている。しかもそれでも自分からは動かない。まさに理想の女王と言えるだろう。
すずいち: じっと? 君は何を言っているのだい?
すずに: このつぶられた瞳の気高さを見たまえ。王子に抱きかかえられて歩きつつも、つぶれてしまった王子の醜い姿には目をつぶり、復活の際には言葉ではなく全身で喜ぶ。言葉を与えてしまっては女王受けとして失格だからな。
すずいち: ………?
すずに: 角頭も女王を狙っているのだ。しかし王子より格が高いので、女王は貞操の危機に瀕する。これが女王受けの醍醐味だな。
すずいち: ………。獣は攻めとしては使えるが、受けとしては使ってはいけないはずだ。
すずに: おや、獣に攻めができたとは知らなかったな。
すずいち: それを言っては終わりだろう。
…そしてすずめは飛び去っていった…。
次は麻乃さんで『パーティ騒動』です。
案件26・教育実習生
すずいち: 教育実習生というのはその場で受けても良し、新人教師として赴任してきたあとに受けてもよしという受としては最高の人材だ。
すずに: 基本的に教育実習生は身分が不安定で格下だからな。それが実習生攻をは見かけない理由だろう。
すずいち: 二週間だけとの期限が愛をドラマティックにする。しかし本当の愛を見つければ、同じ日本である以上、そのまま愛を続けることもできる。簡単なドラマづくり方法だな。
すずに: 二週間の期限は能力への挑戦として使われることの方が多いな。実際には二週間では長すぎて、能力のあるものにとっては何の意味もない期間制限だろうが。
すずいち: なるほど。しかしたいてい教育実習ものというのはラストに盛り上がるものではないのかい? 頼りない教育実習生にいつの間にかひかれていく攻。しかし明日になればあの人はもうこない…これが教育実習ものの醍醐味だろう。あまりナンパ攻めが受けを落とすような話は見かけないな。
すずに: まあそういうパターンもあるだろう。しかしあまり見かけないな。特に今回のように、教育実習生もの場合、問題となるのはスピードだ。その点、角頭は優秀だな。
すずいち: そうかい? 受が角頭の優しさに気づくのは最後だろう。基本的に攻め側の押せ押せがめだつ教育実習話にしては珍しい展開ではあるが、なんにせよ盛り上がるのがラストであることには変わらない。
すずに: ラストで受に自覚が芽生えたのは確かだな。教育実習もののラストは、たいてい運命の享受と自覚の芽生えなのだ。
すずいち: ? 君は何を言ってるんだい? この話は押せ押せの攻めとそれに翻弄される受け。しかしラスト目前に攻めの優しさに受けが気づくという、青春教育実習ものだろう。そして一年後、受けは攻めの学校に戻ってきてラブラブ生活を送るのだ。
すずに: 角頭が優秀である以上、ラブラブ生活は厳しいな。
すずいち: 優秀とはなんのことだい? 角頭は愛を素直に口に出来ない攻めという不器用さを上手く出しているとは思うが。
すずに: 調教のスピードさ。即座に緊縛し、その後流れるように自我を破壊してゆく。身体を限界まで酷使した上でルーティンワークをさせて徹底的に思考能力を奪い、極めつけには麻薬の投与だ。そのようなぼろぼろの状態で目的を与えれば、どんな教育実習生でもイチコロだろう。最後にはお定まりの大勢の前での公開調教だ。さすが『教育実習生・はるみ22歳』なだけあるな。
すずいち: もしかすると『第一章・被虐の目覚め』などと書いてある黒い背表紙の文庫本の話をしているのかい?
すずに: そういう君は章のタイトルもなく、ブックカバーを掛けてもきゃぴきゃぴとしたイラストが透けて見えるような新書本の話をしているのかい?
すずいち: ………。
すずに: どちらの本も古本屋には売りやすいが、うるときに恥ずかしいという点では共通だな。
…そしてすずめは飛び去っていった…。
次は麻乃さんで『球技大会』です。
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