いいコトあるよ
 ~コーギョーカの変-2-~
 

 

 

    

 クリフやアオキが対応策を練っている間に、当事者であるはずの半屋は、頭痛がするとでも言いたげに眉間をおさえて自室に帰ってしまった。

 しかしそれを大して気にすることなく、なぜか八樹も含めた三人は半屋の選挙対策を検討しつづけた。

 

※    ※    ※

 


  「ホントはさー、半屋くんに来てもらうのが一番いいわけ。
 コーギョーカも本気で半屋くんを嫌がってるわけじゃないと思うんだよね。たくみさまグッズの売り上げは悪くないし、初めての自分たちのプリンセスなんだし。
 でも上からの押しつけだってことがイヤなんだと思うんだよね、あの人たち。あの星は不良揃いだからさぁ。
 だから、半屋くんがすごく遠くから自分たちのためにわざわざ来てくれた、ってことになると、ずいぶん話が違くなると思うんだけどなぁ」
「それは半屋君がニコニコ手を振ったりした場合、ですよね? プリンセスとしてがんばります、とか選挙演説したりして」
「……ムリだと思います…」
「問題はそこなんだよねぇ…」
 クリフは大げさに肩をすくめてため息をついた。 
「ゴトーさんは何か言ってなかったんですか?」
「なんかね、ビデオの撮影をしてこいとか言ってたよ。セージにしちゃまともすぎて逆に怖いんだけど、それしかないかなぁ」
「きっとゴトーさんも半屋さんにプリンセスになってほしいんだと思います!」
 アオキは今にも立ちあがって演説でもしそうな勢いだ。
 「どういうビデオにするんですか?」
 そのアオキにまったく影響されることなく、八樹は淡々と話の流れをさえぎった。
「セージからの細かい指示はなかったからね、イメージビデオみたいなやつにしようかなと思って。
 半屋くんって、メーリョーで一番の美人だと言われているセージの従妹、カスミちゃんに似た系統の顔だから、表情を加工すればすごい美人になるんだよね~」
「だからですか?」
「え?」
「だから半屋君が選ばれたのかな、と思って」
 八樹は穏やかな表情のままだったが、アオキとクリフはなぜか背中に冷たいものが走るのを感じた。
 そんなくだらない理由で俺の半屋君(この言葉については誰もコメントをしなかった。怖かったからだ)を巻き込んでるんじゃないよねぇ、という無言の圧力は、無言の分よけい怖かった。
「そ、そういうことじゃないと思うよ。ねぇ」
「ええ、ゴトーさんは顔で人を選ぶような人じゃありません!」
「じゃあなんで半屋君なの?」
 まだ八樹は穏やかな表情のままだ。しかしこの場合、そんな表面の筋肉の動きはまったく関係ないのだ。
「それは……」
「セージはそんな理由で結婚相手を選んだりしないよ。だいたい美醜の感覚をもっているかどうかもわからないしね。
 でも実はボクもなんで半屋くんなのかはわからないんだよね。セージがやたら楽しそうなのだけはわかるんだけど。
 そんなことより、北海道のラベンダー畑の中で微笑むのと、ゴールドコーストで水着♪とサハラ砂漠でたたずむのと、他にどんな絵がいるかなぁ」
 クリフは無理矢理話題を変えた。これ以上この話題を追求しても得るものはないと判断したらしい八樹もそれに乗った。
「半屋君がそれをやるんですか?」
「やっぱムリかなぁ。もう適当に半屋くんを撮影して合成するしかないよね」
 そのとき半屋の部屋のドアが開く音がした。
 そして廊下を歩く軽い足音が聞こえ、玄関の鍵を外す音が聞こえる。
「行くよ」
 クリフは急に立ち上がった。手にはなにやら小さな機械を握りしめている。
 どうやら撮影機器らしかった。
 そしてリビングにいた三人はそのまま半屋の後をついていった。

 

つづく


 この続きのシーンのための取材&調査に手間取ったためここまでです。すいません。取材とか言っても別に大したことじゃないんですが、一回行ってもまだよくわかんなかったので(笑)