パンパカパーン。 7月の暑い午後、外に出かける気にもなれず、半屋は一人、部屋のソファーでくつろいでいた。 除湿だけかけた室内は快適で、外のうだるような暑さが嘘のようだった。 しかしその快適な空間は突然の乱入者によって破られた。 「おめでとうございます! 半屋工さま! あなたはメーリョー連合帝国第26代皇帝、メーリョー帝ゴトーセージューローさまのお妃候補に選ばれました!!」 「あぁ?」 マンションの11階の部屋のリビングに突然現れた小柄の少年と能天気そうな金髪男の二人組は、手にラッパとクラッカーを持って、なにやら嬉しそうにしている。 あまりのことに半屋は目をつぶり、寝直すことにした。くだらない夢は寝直せば忘れる。 「ダメだよ半屋くん〜。ただでさえここの戸締まりはなってないんだから、そんな安易に眠っちゃ〜」 しかし半屋は金髪男に揺り起こされてしまった。 何が起こったのかはわからないが、どうもここに見知らぬ人間が二人もいるのは事実のようだ。 「出てけ」 半屋はすごんだ。眠いしいちいち事を構えるのも面倒だ。 「あ〜ダメダメ。そんなに眉間にしわを寄せちゃ! ほら笑って笑って」 そういうや否や、金髪男はカメラとおぼしき物体を半屋に向け、バシバシ撮影を始める。 「すいません、お話だけでも聞いていただけませんか。でないと………」 その横で小柄な少年はどこか怯えた様子だ。 金髪男は勝手な事を言いながら写真を撮り続けている。 よくわからないが、物取りのたぐいではないようだ。 少年がびくびくと怯えているのがなぜか気になって、半屋は話を聞くことにした。
「―――なんだって?!」 少年の話はとんでもないものだった。 銀河の中心には二十数個の星による連合帝国、メーリョー帝国があり、その帝国を治める皇帝、メーリョー帝というものが存在する。 その結婚相手として半屋が選ばれたので、今すぐメーリョー帝国に出発しましょう、という、まじめそうな顔して暑さにやられたのか大変だなという内容だった。 「外にお迎えの船も泊めてあります。さあ行きましょう半屋さん!」 「誰が行くか」 「え?」 少年は何が起こったかわからないような顔をしている。 「だってメーリョー帝のお妃さまなんですよ! 半屋さんは男性だから色々反対もあったんですけど、それをゴトーさんが説き伏せて―――」 「ほら、ハヤタくん、婚姻申込ディスクを見せなきゃ! 急なことだから半屋くん信用できないんだよ」 「ああ、申し訳ありません。本当に本当なんです! これを見ていただければ―――」 そのとき、玄関で「ただいまー」という声がした。 「あれ? 半屋くん、ご両親が海外だから一人ぐらしなんじゃないの?」 「んでそんなこと知ってんだよ」 「だって婚約の儀のために三年準備したんだよ。ここは独立星系だからほとんど情報がなくて大変だったんだよ〜」 そうこうしている間に、その男、八樹がリビングに入ってきた。 「あれ? 珍しいね。半屋君、お客様?」 「勝手に入ってきた」 「押し売り―――には見えないね。誰?」 「半屋くん同棲してるの!? どうしようセージになんて言ったら………セージに殺されちゃうよ〜!」 「んなんじゃねぇ!」 話がかみ合わない半屋と金髪をよそに、少年は八樹に向き直って説明を始めた。 「僕はアオキハヤタ。こちらの方はクリフォード・ローヤーさんです。よろしくお願いします」 アオキがぺこりとお辞儀をすると、八樹も笑って「よろしく」と言った。 「てめェ、ワケわかってねーのに慣れあうんじゃねぇ!」 「そうだね。 悪いけどよく話が見えないから、説明してくれるかな?」 半屋はまだぶつぶつと文句を続けたが、アオキは八樹に説明を始めた。
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「―――というわけなんです」 「よかったね、半屋君」 「どこが!」 「その婚約の儀っていつ行われるの?」 八樹は半屋を無視して話を進めている。 「半屋さんのお妃教育が済み次第、すぐに行われます。国民もいまかいまかと待ち望んでいて―――」 「その申込ディスク、見せてもらえる?」 「あ、はい」 アオキは手にしていたオルゴールのようなものを半屋に向けた。 「これは古式に則った儀式で、ゴトーさんから半屋さんへの愛の告白が納められたものです。これは半屋さんのものですから、いつでも好きなときに眺めてください」 そう言うと、アオキはディスクのふたを開けた。 軽い起動音がして、ディスクの上に手のひらサイズの男が現れる。 男は仮面舞踏会に出るかのような、顔を半分だけ覆う仮面をかぶり、深紅の重厚感溢れるマントを羽織っていた。 髪はなぜか三本の角にまとめられている。 半屋が呆然としていると、その手のひらサイズの男はマントを見せびらかすようにくるりと身を翻し、大きな高笑いを残して消えていった。 「………」 「………」 「セ、セージったらシャイだから〜」 「そうですね! ゴトーさんは照れ屋なので………」 「でもすごいね、これは。地球の技術ではまだここまでできないよ。これってどういう仕組みなの?」 「これはイベントと位置情報をパス化して縮小保存したもの張り付けたもので、昔からのフォーマットなのでちょっと画像が荒いんですけど…」 八樹は説明を最後まで聞かず、半屋に話しかけた。 「どうやら本物みたいだよ。どうするの? 半屋君」 「どうもこうもねぇだろ。 ―――てめぇら、気が変わらねぇうちに出てけ。叩き出すぞ」 「ダメだよ半屋くん、そんな怖い顔しちゃ」 クリフは写真を撮り続けている。 「出てけってるのが聞こえねぇのか」 「みんな待ってるんだよ。いきなりのコトでとまどってるのかもしれないけど、セージが本気なのは事実だから、セイトカイに行ったら急に気が変わって追い出されるなんてことはありえないし」 「んなこと誰も言ってねぇだろうが! とにかく消えろ。また来たら殺すぞ」 半屋がすごむとクリフは陰でこそこそアオキに相談し始めた。 「半屋さん」 「まだ居たのか」 「色々考えたのですが、今、半屋さんをセイトカイに連れて帰るのは難しいような気がします」 「セイトカイってなに?」 八樹はいちいち聞き返す。 「メーリョー帝国の首都です。政府の関係者しか入れない都市で、半屋さんはフウキイインという役職にありますので、いつでも入ることが出来ます」 「へぇ、よかったね半屋君」 「てめェはいちいち………」 「ここは独立星系だからいまいちメーリョーのすごさがわかってない気がするんだよね。だってメーリョー帝のお妃さまなんだよ! だからまず色々知ってもらおうと思うんだ」 「いらねぇ」 「そんなこと言わないでよー。ホントにセージに殺されちゃうよー。 だからハヤタくんをおいていくね。ハヤタくんはプリンセス・コーギョーカ専属の小間使いだし、役に立つと思うよ」 「よろしくお願いします」 そして「写真いっぱいとれてよかったけど、かなり加工しないと使えないなぁ」などといいながらクリフは消えていった。 八樹は何を考えているのかわからない笑顔を浮かべ、半屋は凍り付いたままだった。
あんまなにも考えたくなかったので、とても軽いものを(笑)
チンプイは私の一番好きなアニメで、エリ様は王子さまとくっつくのか、それとも内木くんとくっつくのか、はらはらしながら見ていました(笑)
キャラもすごくしっかりしていて、エリ様もすごくよかったのですが、なんと言っても内木くん!弱いながらに男らしいすごくかっこいい男の子でした。
さて、これはこのHP始めてのパラレルにしてダブルパロです。パロ好きの私にしてはがんばったよな(笑) しかしダブルパロといいつつ原作(チンプイ)に忠実じゃありませんね。原作に忠実なダブルパロって絶対できないっぽいです。こまったもんだ。
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