めいりょうせかいりょこう 二回目のシンガポール

注意:ラッフルズホテルは有名な割に宿泊者以外立ち入り禁止なところが多いのです。せっかく止まったのだから写真をアップしないともったいない!というわけで、写真をアップしてあります。コメント付きなので少々うざいです。そのへんはごめんなさい。

「本当はダブルがいいんだよね」
 一緒に住み始めて四年。すっかりなじんだ部屋で、ため息をつきながら八樹は受話器を置きました。
「ダブル………だめかな?」
 八樹の愛しい人は何も言わず、厳しい顔をして八樹を見ています。それはつまりダメという意味です。
「でも新婚旅行なんだよ? 普段だってダブルなのに―――」
「新婚旅行じゃねぇって言ってんだろ」
 半屋は吐き捨てるように言いました。

 八樹の両親は、三年前に半屋とのことを知りました。それからつい最近まで、半勘当状態だったのですが、八樹の姉に子供が出来たおかげで両親の関心が孫にうつり、勘当が解けたのでした。
 そして先日、八樹の家族と半屋の家族とで食事会をしました。その後、高校時代からの二人の友人達がお祝い会を開いてくれました。早い話、二人は結婚したのですが、半屋はそれを認めたがりません。
 とりあえずそれを記念して、二人で始めて海外旅行に行った思い出のシンガポールに旅行に行く事にしました。
 つまり新婚旅行なのですが、半屋はそれも認めようとしません。

(新婚旅行でツインっていうのもな―――)
 せっかくの新婚旅行なのですから、ある程度はホテルでいちゃいちゃしたいです。
 八樹が選んだのは、超有名ゴージャスホテル、ラッフルズホテルと往復の航空券のついたセットのプランでした。(別々に頼むとあまりにも高くつくので、仕方なくツアーにしました。シンガポール滞在中はフリーというプランなので、それほど不自由ではありません)
 さっき旅行会社の人から電話がかかってきて、
『もしかしたら、ダブルのお部屋になるかもしれません………』
 と言われたのです。
 ダブルのお部屋。大歓迎です。実は八樹はツインになる可能性があることをすっかり忘れていました。
『別にかまいませんよ』
『でも男性お二人の旅行ですよね。出来る限りツインになるように努力しますが………』
 むしろダブルにしてくれと言いたいところでしたが、往復の飛行機とホテルの送迎だけだとは言え、ツアーはツアーです。男の恋人同士だという扱いでツアーに参加するのは、半屋がとても嫌がりそうです。
 もし半屋がダブルでもいいと言ってくれるなら、電話をかけ直してダブルにしてもらうのですが………
「ダブル………がいいんだけど」
「ふざけんな」
 結局平行線のまま、二人はシンガポールに出発しました。

 到着後、大渋滞に引っかかり、半屋が切れかけたとき、これから三日間の愛の巣、ラッフルズホテルに到着しました。


ラッフルズホテル。すごいっす。

「すごいねー」
 夜見るラッフルズホテルは圧倒的な華麗さを誇っていました。
 どこを見ても完璧な美しさです。しかし、さすがに半屋は何も気にせず堂々としていました。
 八樹にもまったく無関心そうな様子ですが、さりげなく以前八樹がシンガポール旅行でプレゼントしたピアスをしてくれています。
 そうです。これは新婚旅行なのです。そう思い直し、八樹は雰囲気に飲み込まれることなく、華麗なるホテルの中に入ってゆきました。

 ホテルマンが説明をしながら、部屋を開けてくれました。すぐにリビングルームがあり、机の上にはウエルカムフラワーとウエルカムフルーツが置いてありました。
 ラッフルズは全室スイートルームのホテルなので、リビングと寝室が分かれています。
「居心地の良さそうな部屋だね」
 天井がとても高く、セーリングファンが回っています。半屋は天井の高い部屋が好きなのを知っているので、八樹は嬉しくなりました。


ウエルカムフルーツとウエルカムフラワー。リビングルームの一部です。

 ホテルマンがウエルカムドリンクを何にするか聞いてきました。
 八樹はこのホテルの名物、シンガポールスリングを、半屋はオレンジジュースを頼みました。
 軽くグラスをあわせ、二人の夜を祝います。
 しぼりたてのジュースで作ったらしいシンガポールスリングは、とても華やかで、南国らしいカクテルでした。


ウエルカムドリンク。タダですよ。めちゃうま。


「見て、半屋君。ダブルだ」
 隣の部屋に入ると、なんとベッドがダブルベッドでした。
 それも単にダブルベッドなのではなく、やはりここはツインベッドの部屋なのです。つまり、ダブルベッドが二つあるのでした。これなら思う存分いちゃいちゃできますし、ツアーの人にも辺に思われません。なんと良いホテルなのだろうと八樹は感動しました。


ベッドだけではなく、洗面台も一人に一つ。ゴージャスです…


「半屋君、つかれた?」
 家を出てから約半日の長旅です。しかも大渋滞に引っかかりました。疲れていないはずはありません。
「今日は同じベッドで寝よう? 何もしないから。ね?」
「てめぇ、前もそんな事言ってただろ」
「あ、憶えてた? 嬉しいな」
「バカか」
 そう言いながら、半屋は八樹のベッドにもぐりこんできました。
「半屋君!」
 照れくさいのでしょう、半屋は何も言わず、あっという間に寝たふりをしています。
 八樹は嬉しくなって、半屋を抱きしめたまま眠りにつきました。

 

つづく


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