ちりん… ちりん…
縁側に寝ころんで、なんで風鈴は音がなるのだろうとか、くだらないことを考える。
あまりの暑さに、脳も体もどろどろに熔けていて、何もする気にならないし、動く気力のかけらもない。
「おい半屋。暑いのなら水をまけ」
少し離れた場所で、梧桐は本を読んでいる。こんな暑いのに、本なんか読んでいるなんて、きっとバカにちがいない。いや、そういえば梧桐ははじめからバカだった。
「半屋」
いちいちなんだかんだと言い返す気力さえない。オレはのろのろと立ち上がり、手桶に水を入れた。
暑い。
桶に柄杓をつっこんで、庭に水をまく。
あまりに暑いので、そのまま柄杓の水をかぶった。
少し冷えたが、すぐにその水が暑くからみつき始めた。
本気でやる気がなくなって、オレはそのまま庭にしゃがみ込んだ。
日射しがきつくオレの体を灼いたが、しばらくここから動きたくない。
「半屋」
気がつくと梧桐が横に立っていた。
オレはここから動きたくなかったから、梧桐を睨みあげた。
梧桐はそれを無視して、オレの腕を掴んでずりずりと縁側に引きずった。
元いた場所まで引きずられると、梧桐はまた少し離れて本を読み始める。
ちりん… ちりん…
また風鈴が鳴った。
通り抜ける風が涼しい。
半分寝かかりながら、さっき水をまいたからかと思う。
こうやって梧桐の家に居続けたら、いつか、風鈴の音を聞くだけで涼しく感じるようになるのだろうかと思いながら目を閉じる。
ちりん… ちりん…
涼やかな風が吹き抜ける。
今なら眠れる気がした。