sweetapple

 


  「ぼく、テニス習いたい」
 ご飯を食べ終わったあと、裕太は大きな声でそう言った。
「あら、それもいいわね。……テニスクラブがいいんじゃないかしら」
 初めは突然で驚いていたお母さんは、嬉しそうに、良く行くテニスクラブの名前を挙げた。
「ううん。……テニススクールに通いたい」
「お母さんそこは聞いたことが無いわ。どこにあるの?」
 僕はデザートを食べながらそのやりとりを聞いていた。リンゴのクレープのアイスクリーム添え。裕太の好きなクレープの中に僕の好きなリンゴを入れた、お母さんの得意料理だ。あつあつのクレープとリンゴが、溶けたアイスクリームと一緒になってとてもおいしい。

 裕太の通いたいと言っているテニススクールは、少し遠い場所にある全国チェーンのスポーツクラブに付属しているもので、僕にはあまり良いスクールではないように思えた。
 お父さんが日本に帰ってきている時、僕たちはよくテニスを教えてもらう。お父さん達が会員になっているテニスクラブや、夏に行くホテルのコートで良くテニスをしていたので、前から僕もきちんと習ってみたいとは思っていた。

「少し遠いんじゃないかしら」
「大丈夫だよ、かずや君も一緒だから」
 またかずや君だ。そのとき、僕の中で何かが揺れるのを感じ、僕は息を少し吸い込んでから、溶けたアイスクリームにクレープを絡めた。こういう時にデザートを食べてもおいしく食べられない。僕はただアイスクリームを絡め続けた。
「でもかずや君のお母さんにご迷惑をかけるわけにもいかないでしょう。……テニスクラブの方がいいんじゃないかしら」
「お母さん、僕も習ってみたい」
 僕がそう言うと、裕太はすぐに
「お兄ちゃんはダメ!」
と言った。
 なんで? かずや君と習いたいから? 僕はそう訊きたいのを押さえ込んだ。
 昔は何でも裕太に訊くことが出来たのに、近頃裕太に訊くことができないことが増えた。
 どうして僕と帰らなくなったの。どうして他の人と遊ぶの。
 裕太はきっと、そういうことを訊く僕は好きではないだろう。だから僕は言葉を飲み込む。
「どうして?」
「だって、お兄ちゃんが一緒に習ったら、よけいに勝てなくなる」
 裕太はそう言って、すぐに横を向いた。少し頬が赤い。たぶん、言ったことが恥ずかしくなったのだろう。
「大丈夫だよ。裕太の方が強くなるよ。一緒に習おう?」
「本当?」
「本当だよ。だって僕が4年の時より、今の裕太の方が足も速いよ」
 裕太はぱっと顔を輝かせた。
「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に習う」
 裕太がそう言ったので、僕はとても安心した。
 大丈夫。まだ裕太は僕のことが一番好きだ。
 僕はアイスクリームをたっぷり絡めたクレープを食べた。とてもおいしかった。


 

 

 甘く煮たリンゴとアイスクリームは良く合いますよね! 
 さて。私は不二兄弟は小学校からスクール通いだと思うんですよ。乾だってスクールに通っていたらしいのに、不二が通っていないわけはない!というのはおいといて、裕太は中一時点で普通に経験者っぽかったですしね。元々経験者なのは手塚・不二・乾・リョーマって感じでしょうか、青学だと。海堂や桃城は中一からって感じですよね。と考えるとかなり天才タイプですね、二人。中一後半からレギュラーなんだろうしなぁ。ルド選抜組は多分全員経験者でしょう。じゃないとスカウトする意味もないよね。あと、不動峰二年組は経験者じゃないとおかしいはずだが(中一の時点でかなり強いし、自分たちのテニスに自信持ってるし)、近頃はびこる峰貧乏説とは合わないですね。峰は目黒区なんだし、たとえ公立でも普通にお金持ちだとおもうけどなー。じゃないと練習もさせてもらえないのに強すぎる、超天才集団不動峰になっちゃうよ、コノミン(それはそれでまた良し!だけど)