「キスしたい」
「は?」
裕太はきょとんとしている。すごくかわいい。
「だから、キス」
「てめぇ正気か?」
昔はいつでもしていたのに、それを忘れたように裕太は冷たい。昔は僕にキスをせがんだことだってあったのに。
そう思ったらどうしてもしたくてたまらなくなったから、僕は裕太にキスをした。
「……!」
すぐに唇を外して裕太を見ると、大きな目が丸く開いているのが見えた。
「どうしたの?」
「てめぇ、俺の、俺の…」
裕太はぱくぱくと口を開けている。どうやらファーストキスを奪われたとショックを受けているらしい。
「ファーストキスって… 昔はしょっちゅうしてたよ」
「それとは違うだろ!」
「違うの?」
そう言えば今日、英二も変な反応してたな。もしかすると、こうやって裕太が好きだよってキスするのも、普通のキスのうちなんだろうか。子供の頃のキスとはなにか違うのかな。
僕はそれを確かめたくて、怒りに震えているらしい裕太に、もう一度軽く口づけた。
「てめぇ!」
もしかするとこれは、好きな人にする普通のキス?
「大丈夫。僕も初めてだから」
「そういう問題じゃねぇ!」
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