「裕太、メダル製造器があるよ」
出口の近くにある大きな土産物屋で家族用に土産を買っていると、兄が何かを見つけた。
さっき二人で二万マイルに乗ってから―――いや、花火を見てからだろうか、兄の声を聞くと少し緊張してしまう。でも、それは前のように距離感がつかめなくて緊張するのとは少し違う気がした。
どう行動していいのかよくわからない、けれどもどこか甘ったるいような緊張感。
それを感じていたいような、今すぐ逃げ出したいような不思議な感覚におそわれる。
「何だって?」
「スーベニアメダルの製造器。ディズニーランドにもあっただろう? 覚えてない?」
「覚えてねぇ」
「裕太、これがゲームだと思って何回もコインを入れてたよね」
そう言われるとなんとなく覚えがある。
確かコインを入れるとメダルがその場で作られる機械だ。
「間違えてたわけじゃねぇよ」
そう言えば昔、家族で行ったディズニーランドのゲームセンターで、カタカタと作られる薄っぺらいメダルが面白くて何回もやった。
「楽しそうに見てたよね」
兄は本当に嬉しそうに昔の思い出を話す。
「これ作ってみようか」
「でも、せっかく作っても無くすしな」
反り返った薄いメダルは保存が難しく、裕太が昔作ったメダルもいつのまにかどこかへなくなってしまった。
「裕太が作ってくれたメダル、僕はまだ持ってるよ。―――これは今月の限定のメダルみたいだね」
そう言うと、兄はその機械にコインを入れた。丸い銅片がすっと落ちてきて、型を押されてカタンと出てきた。
「はい」
「何だよ」
「あげるよ。持っててくれると嬉しい」
そう言いながら兄はもう一枚メダルを作っていた。
「無くすからいいって」
「裕太は無くしてももいいよ。一枚は僕がとっておくから」
見るとそのメダルにはキャラクターの顔の他に、年号と月のデザインが浮き出ていた。きっとこの時期にしか作れない限定のものなのだろう。
「じゃあもらっとく」
裕太はそれをカバンのポケットに入れた。こうしておけば無くさないだろう。
さすがにキャラクターグッズなどは恥ずかしいけれど、今日は楽しかったから、その思い出を一つは持っておきたいと、そう思わないことはない。
「ありがとう」
兄は嬉しそうに笑った。
なんだか気恥ずかしくて、裕太は顔を逸らした。
スーベニアメダルは色々な場所で色々なデザインのものが作れます。入り口近くのおみやげ屋さんでは季節やイベント限定メダルが作れる時もあります(ランドにも限定メダルがあります)。