最近、周助は誰にも向けないような表情で裕太を見るようになり、裕太も周助にどう振る舞ったらいいのかわからなくなった。
大勢の中で会っても、二人だけで会っているような気がする。周助はいつでも裕太を見ているし、裕太もつい周助を見てしまう。
二人とも、なにかに気づいているのに、それを言葉にすることができない。
見つめ合って、目があった瞬間、確かに通じ合うことがあるのに、どうしていいのかわからない。
もどかしくて―――でも、どこかが浮ついていた。電話で話していると胸が甘くうずく。顔が赤くなる。
なんでそうなるかなんて、きっとそんなこと二人ともわかっていて……そしてそうなってから、初めて二人きりになったのが今だった。
「だって言わないとわからないだろう? 僕は裕太がここにいてくれて、本当に嬉しいんだ」
「んなこと、わざわざ言われなくたって…」
とっさにそう答えてしまい、裕太は自分の失言を悔やんだ。そんなことわざわざ言われなくたってわかっている―――確かにわかってはいるのだが、それを兄に知られたくはない。
兄が失言に気づかなければいいのだが。そう思いながら裕太は周助をのぞき見た。
「わかってくれてるんだね」
もちろん周助が気づかないなんてことはなくて、嬉しそうにそう言われた。でも、そう言われても答えようがない。どうしていいのかわからなくて周助を見ると、周助はわかっているとでもいいたげな顔で微笑んだ。
そのまま視線が絡み合う。
幼い頃、裕太と周助はただ視線を交わすだけでお互いの思っていることを伝えあうことが出来た。そのときのように視線を交わしあう。
言葉では伝えることのできない想い――この数ヶ月、お互いにどこかで気がついていた感情――が確かに通じ合うのを感じた
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