木材の組織と構造を知る

書評:『木材科学講座2 組織と材質』

古野 毅・澤辺 攻 編   海青社 


『木材科学講座2 組織と材質』


 本著は、木材の組織と材質について専門的に記述されている、大学で言えば農学部林学科等で使用するような書物です。以下の8章に分かれており、それぞれ下記のような順序で構成されています。

第1章: 樹木と木部形成
第2章: 木材の外観
第3章: 針葉樹材の細胞構成
第4章: 広葉樹材の細胞構成
第5章: 細胞壁の構造
第6章: 組織・構造の変動
第7章: 組織・構造と材質との関連性
第8章: 異常組織と傷害組織
資 料: 木材組織実験の手引

 木材の組織と材質について詳しく知りたいと思う人には、約160ページほどにまとめられていることもあり、それほど読み難いとは思われませんが、クワガタムシを飼育するためにそこまで知る必要はないと思われる方は、ぜひ第五章の細胞壁の構造だけでも目を通されても良いかと思います。

 第五章では、セルロースの分子および結晶構造や、ミクロフィブリルの基本構造、化学成分の分布等について、図解入りで、実験や観察、分析等によって得られた事実が詳しく記述されております。

 木材の主要構成は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンから成り立っていることは、よくわかりました。ご存知のように、クワガタムシは食材性昆虫なので、その幼虫は、枯れ木や朽木で生息し成長しています。そして、担子菌等によってリグニンから分離されたセルロース等を食しているものと考えられます。

 自然界では、いわゆる材飼育状態で成長するのがふつうですから、材飼育で育てるのが最もクワガタムシにとっては負担の少ない、自然な方法だと考えておりますが、成長過程が観察できないことや、時間がかかること、それに羽化時期等も確定的でないので、やはり一番難しい飼育方法なのかも知れません。

 しかし、菌床飼育に飽きてきた人や、たくさんのクワガタを飼育しておられる方には、材飼育に挑戦するのも面白いかもしれません。最近では、飼育に使えるよい材が入手し難くなってきておりますが、良い材を見極めるためにも、木材の基礎を学んでおく価値はあると思います。

 以上です。
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 編者略歴 : 古野 毅 (ふるの たけし) 島根大学総合理工学部教授
        澤辺 攻 (さわべ おさむ) 岩手大学農学部教授
 その他  : 著者18名 (省略)


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