「 STAP細胞ねつ造問題の根深さを見た (その1)」

Jimmy


 先日のNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」は、素人が見てもその内容がよく理解できる、実に良く出来た番組であったと思います。中でも、論文のねつ造不正については、既に撤回されているので言うに及びませんが、その他で特に不思議に感じたことを、いくつか下記に列挙させていただきます。

(1)若山研にて作成したSTAP細胞を組み込んだキメラマウスが光ったとき、つまり世界で初めてSTAP現象が具現化された時の小保方さん(以下小保方)の実験ノートに、その事実を記載した記録がまったく見当たらないこと。

 この件について、NHK取材班は小保方に書面で質問を送ったけれども、小保方からは何の返事もなかったとのことでした。普通なら、一般的に誰が考えても、世紀の大発見を世界で初めて目の当たりにしたのですから、その時の興奮と感動を何某かの形でノートに記載するのが当たり前であり、まして早稲田大学から授与された博士号を持った科学者(のはず)なのですから、冷静にその事実をありのままに克明に記述するぐらいの能力は持ち合わせていると思われます。

 つまり、この件から導き出される結論は、小保方にとってキメラマウスが光ることは想定内であった、つまり若山研でマウスの卵子に組み込んだ細胞は、STAP細胞でなく、既に万能細胞として実績のあるES細胞であったことを、小保方は事前に知っていたからと推測されます。そう考えると、わざわざ実験ノートに記載するほどのこともないことは、容易に想像されます。とは言え、そのことを正直に伝えると、自らねつ造したことを申告することになるので、何も返事が出来なかった、または誤魔化す妙案も浮かばなかったので、黙殺したのだと思われます。

 これまで、STAP細胞の作成に200回以上も成功したと自ら発言しておきながらも、再現実験の準備に二か月、そして本実験にさらに二か月もかかるような人ですから、自分でマウスの体内から細胞を取り出すような基本的なことすら、実は自分では一度もしたことがない(する能力がない)ような人のように、素直に考えれば思えて来ますがいかがでしょうか。

 
(2)小保方研の冷凍庫にあったES細胞は、旧若山研の元留学生が作製したもので、元留学生は小保方氏に渡した(譲与した)覚えはないと証言していること。

 この件について、4月に開いた小保方本人の会見時には、本人がES細胞の混入を防止するために、ES細胞は研究室内に持ち込んでいない旨の発言をしておりましたが、問題発覚後に小保方研の冷凍庫からES細胞が発見されました。その理由について、小保方は旧若山研から譲与されたものであると主張しています。
 
(NHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」より引用)


 この問題については、いわゆる言った言わない(渡した、渡していない)の世界で話が食い違い、裁判でしか結論が出せないかも知れませんが、理化学研究所(以下理研)としては、情報セキュリティ上で重要なミスを犯していると考えられます。つまり、若山先生が理研から山梨大学に引越しされるときに、若山研の留学生が作製したES細胞の数量を前もっていくつあるのか、確認して記録しておくべきだったと思います。そうすれば、山梨大学にES細胞を移した時に、間違いなくすべて持って来たか否かが解ったはずで、紛失、又は盗まれていたとすれば、その時点で気づくはずです。あくまで推測の域を出ませんが、旧若山研の元留学生か小保方のどちらかが嘘をついているとしか考えられません。

 これだけで、十分小保方が計画的にねつ造を企てた証拠になると思いますが、決定的なのは、若山研のマウスには、他のマウスとは区別できるように特殊な属性(目印)が埋め込まれていたことを、小保方は知らなかった(聞かされていなかった)のだと思います。番組でも説明されていましたが、若山研の所有するES細胞由来のマウスには、目印が埋め込まれており、遺伝子解析すると他のマウスとは区別できるようにしてあったようです。

 ただし、当たり前のことですが、若山研から小保方に渡されたSTAP細胞作製用マウスには、そのような目印は埋め込まれていなかったにも関わらず、第三者機関による遺伝子解析の結果、小保方から返って来たSTAP細胞(らしきもの)には、その属性が埋め込まれてあったそうです。つまり、なぜか小保方から返ってきた細胞は、ES細胞由来のマウスの細胞に変わっていたと言うことです。この件についても、小保方はこれまで一度たりとも説明したことがありません。

 もし、若山研の所有するマウス全部が目印のないマウスであったとしたら、ES細胞をSTAP細胞と見逃していたかもしれません。(いずれ、他の研究者が追試を行うことで発覚したと思いますが、このようにいち早くバレてしまうとは、思ってもみなかったのではないでしょうか。)テレビや新聞の報道を読み返してみると、この疑惑が発覚して以来、小保方は若山先生に電話をかけて口汚く罵倒したそうですが、まさにこの件について、事前に知らされていなかったことに対してではなかったのかと想像しています。

 その他、私にはよく理解できませんでしたが、専門家の意見としてTCR再構成を確認できていないこと(確認したデータが見当たらない)等、他にもいくつもの不備が見つかっています。

 このようにして、STAP細胞と言う架空の細胞がねつ造されていったのだと、番組の前半を見て改めて強い印象を受けました。しかし、問題の本質はそれだけではなく、その裏に隠された理研と関わりのある民間企業、それに自治体の神戸市が存在していることを、番組の後半では予想させてくれます。確かに、小保方一人の不正疑惑のために、理研がこれだけ手厚く保護する(できる)ものでしょうか。裏にはもっと根深い闇が広がっているようです。
 
番組後半の感想については、続編でお伝えしたいと思います。
 


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