クワガタムシ幼虫の好物は何なのか

書評:『キノコを科学する』

檜垣宮都 監修 江口文陽・渡辺泰雄 編著   地人書館 


『キノコを科学する』



  本著は、キノコの基礎から応用までを11章に分けて、7人の著者が各専門分野を担当して記述されている、キノコの生物学的位置づけから、研究成果公表の仕方までを網羅した、大学で言えば教養課程で使用するような書物です。

 よって、内容が専門的で読破するのが困難であると言うものではなく、複数の専門家がキノコについて、一般向けにも理解できるよう、平易に書く努力をされているため、何とか読み通すことができました。

 専門的な内容を平易に記述することほど難しいものはなく、それができるのは、基礎から完璧に理解している証拠でもあると思います。

 よって、クワガタムシを飼育している方にも一読する価値があると思うのですが、出版年数が2001年と少し古いので、古書でないと手に入らないかも知れません。

 さて、本著を読んで改めて考え直したことは、クワガタムシの幼虫はいったい何を好物にして成長して行くのかと言った、ごく当たり前のことです。クワガタムシ幼虫の飼育方法は、今では誰でも知っているように、菌床飼育が基本で、オオクワガタを始めとして、クワガタを飼育している方の大多数は、菌床飼育をされていると思います。

 しかし、私が本格的にクワガタムシの飼育を始めた1990年台後半では、菌床飼育は非常に新しい飼育法であって、飼育費用も高価であることから、大多数の方は発酵マット飼育をされていたものと思います。

 その頃から10年以上が経過し、今では菌床飼育で育てる方が早く成長することが、明らかになっています。

 すると、その成分の違いを比較すれば、クワガタムシ幼虫が早く、かつ大きく育つヒントが見えてくると思うのですが、いかがなものでしょうか。実際、菌床の中身を見ても、発酵マットとは違いがよくわかりません。

 木材の主要な構成要素であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンは、どれも3次元の高分子で、がっちりとくっついているので、分解するのは容易でないようです。ただ、カワラタケやシイタケ、ヒラタケなどの担子菌類は、それらを分解することができる自然界でも特殊な菌であることがわかっているそうで、別名を白色腐朽菌ともよばれているようです。

 クワガタムシ幼虫飼育に使用される菌床は、確かに外観や内部も白色なので、やはり菌糸を食べることが、早く大きくなるポイントなのでしょうか。しかし、菌床では飼育が困難と言われているアンタエウスなどは、どう考えればよいのでしょう。

 だいたい、木材のおがくずであるマットを何度発酵させても、上記にあるようにセルロースやリグニンは分解できませんから、発酵前と何が変わったのか、発酵についての知識が希薄なので、うまく自分を納得させることができません。マットを何度も発酵させると、色が黒くなりますので、微生物にセルロースを食べられてしまい、分解され難いリグニンの密度が増えて行くばかりに思うのですが、おかしいですよね。

 クワガタムシ幼虫がリグニンを好んで食べているとも思われませんし、わざわざ発酵させる必要もないと思います。そんなことを考えながら読み進めるのも一考かと思います。

 以上です。

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  監修者略歴:檜垣宮都 (ひがき みやと) 東京農業大学名誉教授 農学博士
 編者略歴 :江口文陽 (えぐち ふみお) 高崎健康福祉大学教授 農学博士  
         渡辺泰雄 (わたなべ やすお) 日本薬科大学教授 医学博士
 その他 著者7名 (省略) 


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