《 外国産を飼育する資格とは! 》

書評:『外国産カブトムシ・クワガタ飼育図鑑』

内山りゅう 著      ピーシーズ

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『外国産カブトムシ・クワガタ飼育図鑑』 


 この本を手に入れた今年の6月頃は、外国産クワガタ飼育を本格的に始める予定で、飼育部屋にもエアコンを設置し着々と準備を進めていたのを思い出します。

 ところが、結果は予定に反し惨憺たるものとなり、とうとう外国産クワガタ飼育から撤退を余儀なくされることとなりました。オオヒラタ系はともかく、オオクワガタ系は幼虫や成虫を問わず夏場の高温に弱いように感じられ、室温を高くても25度前後に押さえ込まないと、生きてゆけないように思われます。

元来、外国産クワガタの生息環境が、一年を通して温度変化の少ない気候条件であることを考慮すれば、仕方のないことなのかも知れません。

 エアコンを設置したにもかかわらず、結果的に室温を30度前後に保ってしまったことが、そもそもの間違いだと後悔しています。それでも、電気料金を考えると設定温度を下げるのが恐ろしく、どうしようもなかったというのが本音でもありました。高価な外国産クワガタを飼育する時に、電気代のことを心配しているようでは、まだまだ尻が青いと笑われてしまいそうで恥ずかしい限りですが、今となっては後の祭りです。

 話がそれてしまいましたが、昨年5月に出版された「手に取るようにわかるオオクワガタの飼い方」の第二段として製作された本書は、掲載されている写真が美しく、私のような外国産クワガタ飼育に失敗した者でも持っておきたいと思う、鑑賞に耐える一冊だと言えます。

 飼育方法についても詳しく書かれていて、カブトムシ、ヒラタクワガタ、オオクワガタに分けて書かれているのはもちろん、オオクワガタについてはアンタエウスとシェンクリングを、その生態の違いから区別して記述してあるのも特徴の一つと言えるでしょう。また、観察用飼育方法と繁殖飼育方法の違いが説明されているのも、以外と気づきにくいポイントとして親切な印象を受けました。

 ただ残念なのは、誤植が幾つか見受けられ、25ページに記載されているマレーアンタエウスとゾンメルツヤクワガタの名前と画像が入れ違っていたり、65ページのダールマンツヤクワガタが、ダーマンツヤクワガタと表記されていました。
また、本書のタイトルが「外国産カブトムシ・クワガタ観察図鑑」となっているにも関わらず、最終ページでは、「外国産カブトムシ・クワガタの詳しい飼育方法」と記載されいます。(第二版以降では修正されているかも知れません。)


 ご承知の通り、外国産カブトムシ・クワガタムシは、昨年末に生体での輸入が法的に可能になりました。(一部種類を除く)
それに刺激され、インターネット通販はもちろん街のペットショップの店頭にも様々な外国産カブト・クワガタが並び、今年は名実共に外国産飼育ブームとなった感があります。

 大きさや外見の美しさなど、国産には見られない魅力を持った外国産は、今後もクワガタ飼育の中心的存在になって行くように思われます。それに伴ってクワガタ飼育人口が増え、趣味のペット飼育としてメジャーな位置を確保して行くことは、同じ趣味を持つ一人としてうれしい限りです。

 しかしながら、やはり問題となるのは、飼育中の個体が逃げ出して野生化したり、国産の固有種と交雑して雑種が増える危険を孕んでいることではないでしょうか。厳密に言えば、山梨産オオクワガタを能勢に放すことも問題ですが、元々国内に生息しない種を放すことは、それ以上にやってはいけない罪なことだと思います。

 奈良県産コクワを京都府に放虫してしまった当方としては、決して言えた義理ではありませんし資格もありません。しかし、敢えて言わせていただくならば、飼育仕切れなくなった外国産生体は、飼育を希望している人に譲るか、あるいはペットショップに引き取ってもらうと言った対策を施す必要があると思います。もし、それでも追いつかなくなった場合は、自分の手で処分してしまう勇気や責任感を持たなくてはいけないことに今頃になって気が付きました。(標本にすることも、よいアイデアだと思います。)

 大型個体を羽化させることを目的として飼育してきた結果、いつの間にか飼育数が予想以上に増えてしまったと感じておられる方も多いのではないでしょうか。もちろん私もその中の一人なのですが、そうした場合でも増やしてしまった責任が本人にあるのは自明の理であって、人間のエゴによって必要以上に増やされたカブト、クワガタに罪はありません。

 罪のない外国産を自らの手で殺す勇気と、それに伴う悲しみを背負ってのみ、外国産を飼育する資格があるのだと信じている今日この頃です。 
 

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