《 クワガタ愛好家必携の書 》

書評:『オオクワガタの飼い方』

坪井源幸 著       ピーシーズ

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『オオクワガタの飼い方』 


  今回は、ヒラタクワガタのホームページにもかかわらず、初めてオオクワガタの飼育書を取り上げました。実は、これまでにも何度か飼育関係の書籍に関する書評を書きたかったのですが、すでに皆さんのほうが詳しくて、今更この場で紹介するほどのこともないかと思っておりました。 

  もともと、この本が出版されたのは昨年の5月末なので、すでに9ヶ月を経過していることを考慮すると、読まれた方もたくさんおられるかも知れませんが、どうかご容赦ください。

 この本の特徴を一言で言い表すことは難しいのですが、オオクワガタのみならず、ヒラタクワガタの飼育方法についても、かなり詳しく書かれていると思います。

 たとえば、ヒラタクワガタは、オオクワガタと異なり、菌床飼育や材飼育よりも、マット飼育の方が大型個体を羽化させやすいようですが、マット、すなわち添加物フレークの交換時期など、飼育を始めた頃はどのぐらいで交換してよいものやら、よくわからないことがあります。

 オオクワガタの菌床ビン飼育の場合、白い菌床が減って行くのが手に取るようにわかるので、毎日よく観察していれば、比較的交換時期を逸することはないのですが、添加物フレーク飼育の場合、マットの色と幼虫が排出した糞の色が似ているため、区別することが難しいと思います。実際、ヒラタクワガタを飼育して5年ほど経ちますが、恥ずかしながら未だによくわかっていないのが正直なところです。

 このような、ある程度経験を積まないとよくわからない、添加物フレークの発酵のさせ方や交換時期をわかりやすく解説してくれているところが非常に参考になるかと思います。

 また、ヒラタクワガタの幼虫を飼育する場合、オオクワガタのような菌床ビンを使用せず、その使い古しを利用したマット飼育でも、大型個体を羽化させる可能性が十分ある等、実践に則したノウハウが具体的に示されていますので、ヒラタクワガタ飼育ビギナーにも親切な内容となっています。

 ただ、個人的に納得がゆかないのは、ヒラタクワガタの方がオオクワガタより飼育が容易な面が多いと書かれていることです。私の飼育経験からすると、成虫はヒラタクワガタの方が気が荒く、ペア飼育していてもオオクワガタより事故が起こる確率が高いですし、寿命が短い分、ペアリングやメスが産卵する期間も限られるため、繁殖が簡単だとは思えません。

 さらに、幼虫の生存率もオオクワガタの方がよく、8割は無事に羽化するのですが、ヒラタクワガタの幼虫は以外と弱く、6割羽化すれば良い方な気がします。(特に、乾燥に弱いように見受けられますし、スジブトヒラタなど、3割ぐらいしか羽化させられませんでした。)

 ヒラタクワガタフリークとして、若干独断と偏見に飛んでいるかも知れませんが、皆さんはどのように感じておられるでしょうか?また、良ければご意見などお聞かせいただければ幸いです!  

 しかしながら、その疑問と2400円と言う価格がちょっと高いかなと言う点を差し引けば、この本は大変良くまとまった1冊だと思います。産地別オオクワガタを掲載するところなど、産地にこだわるオオクワガタファンの関心を集めそうで、価値観により賛否両論ありそうですが、企画としては面白いと思いました。クワガタ飼育、採集のベテランの方も手元に持って置いて損はない一冊だと思います。

 


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