市場経済にも、私生活にもよりかからない「マイナーな普遍」

書評:『虫の目で人の世を見る』

池田 清彦 著 平凡社

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『虫の目で人の世を見る』


 今年で、クワガタムシを本格的に飼育し始めてから満十年になります。よくもまあ、ここまで続いたものだと自分ながら感心する今日この頃ですが、さすがに累代飼育も飽きて来ました。現在では、ホームページを通じて知り合いになった友人の方から里子として頂いた、貴重な地元産クワガタ(ヒラタクワガタが中心)のみ飼育している状況です。

 ホームページも、最近ではすっかりネタが尽きてしまい、思うように更新することができない毎日ですが、このまま閉店するのも何となく寂しい気がするため、書評と称する読書感想文を書くことによって、かろうじて時間つなぎをしているのが現状です。

 最近は、「構造主義生物学」を説く池田清彦さんの著作に凝っており、書店で入手可能なものについてはできるだけ読むようにしているところですが、生物学の知識がバックグラウンドにないと、なかなか読み通すのが難しいものばかりで、本棚の飾りと化しつつあります。

 その中にあって、「虫の目で人の世を見る」は、著者のエッセイ集なので比較的読みやすい部類に入ると思います。この本を読んで初めて知ったのですが、グランディスとクルビデンスが別種であると確認されたのは池田さんのようで、1995年にその論文が発表された直後、グランディスの価格が100倍近くになったそうです。また、グランディスとクルビデンスの雌は、種差より地域差のほうが大きくて、区別がつかない(つきにくい)と記述されておりました。このような、クワガタに関する論考もたくさん含まれていますので、是非ご一読ください。

 最後に、お気に入りのフレーズを掲載させていただきます。

市場経済にも、私生活にもよりかからない「マイナーな普遍」。

そこに、虫屋の孤独と栄光があるのだ。


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