オオクワガタ飼育方法のバイブル

書評:『オオクワガタ飼育のすべて』

森田 紳平著  むし社 


『オオクワガタ飼育のすべて』


 
 
最近、クワガタ飼育方法について、復習を兼ねてネット上のさまざまなホームページを参照させていただいておりますが、見れば見るほど、自分が行ってきた累代飼育方法と言うのは、本当にお粗末なものだったと、恥ずかしくなります。

 私がクワガタの累代飼育を始めたのは、今から17年ほど前になりますが、最初はコクワガタの累代飼育から スタートし、本土ヒラタクワガタ、離島産ヒラタクワガタと進み、最後は国産オオクワガタに行き着きました。

 当然ですが、コクワガタと言えども、累代飼育する方法など当時はまったく知識がありませんでしたので、何か参考になる文献はないかと探し回った末に、オオクワガタの飼育マニュアルを通販で入手しました。確か、30ページそこそこで3000円したように記憶しております。当時はずいぶん高い買い物でしたが、それしかたよるものがありませんでした。

 オオクワガタの飼育マニュアルを隅から隅までじっくりと熟読した結果、これなら何とかなるのではないかと言う希望が持てたため、オオクワガタの累代飼育方法を、コクワガタに適用したのです。なぜなら、オオクワガタもコクワガタも、同じDorcus属であることから、生態もよく似ているのではないかと言う、はなはだ短絡的とも思われる類推によるものでした。

 結論から言うと、見事にその予測は的中し、数ペアのコクワガタから、数年で100匹以上のコクワガタを羽化させることに成功しました。オオクワガタの累代飼育についても、この時の経験が生かされたのは言うまでもありません。

 しかし、今では常識となっている菌糸ビンによる飼育方法は試したことがなかったため、ひたすらマット飼育を続けたのですが、何年経っても70mm以上のオオクワガタを羽化させることはできませんでした。

 当時(今から15年以上前)、菌糸ビン飼育はまだ一般的でなく、未知の部分が多い飼育方法でもあったため、手を出しにくかったこともあります。また、菌糸ビン自体が高価なものでもあり、金銭的にも余裕がなかったことも、菌糸ビン飼育に踏み切れなかった理由でした。

 時代は変わり、今ではオオクワガタの飼育に菌糸ビンは常識となり、80mmを超える超大型のオオクワガタも羽化させる方も数多く出てきておられます。そうしたオオクワガタの飼育技術を総合的にまとめたものが本著です。

 著者である森田紳平さんが、子供の頃から如何にしてオオクワガタの魅力に取り憑かれ、材飼育法やマット飼育法を経て、菌糸ビン飼育法にたどり着かれたのかが、化学の研究者らしく、詳細に、かつ読みやすく書かれてあります。

 私も、12年振りにこの本を読み返してみましたが、まさにオオクワガタ飼育方法の教科書とでも言える、初心者からベテランまで読んで損をしない、価値ある内容にまとめられているのではないでしょうか。

 ただ一点、当時もそうでしたが、今も疑問に思う箇所が一つあります。それは、成虫を飼育する時に使用するマットも、幼虫を飼育するときに使われるものと同じ微粒子マットを使用することを薦められておられます。

 菌糸ビン飼育を極められながら、他方では成虫飼育時のマットについてもこだわりを持っておられるところに、著者の豊富なオオクワガタ飼育歴を感じます。
 


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