「菌糸ブロックから菌糸ビンに詰替える時の工夫(2014_3)」

Jimmy


  今ではオオクワガタに限らず、クワガタ一般の幼虫飼育には、菌糸ビンが用いられていることは、誰しもよくご存じのことと思います。この飼育方法は、非常に理に適っていて、クワガタムシの幼虫はキノコの菌糸を食べて成長していることが明らかになっています。
  そこで、自ずと幼虫飼育には菌糸ビンを使うことになると思うのですが、飼育数が増えると、必要となる菌糸ビンの数も半端ではなくなってきます。おそらく、100頭以上の幼虫を飼育しておられる方も、今では珍しくないのではないでしょうか。
 そうなると、問題になるのが飼育ビンにかかるコストになりますが、例えば以下に示すような3種類の方法が、コストを考慮した飼育方法として考えられると思います。

 1. 菌糸ビンを購入して使用する。
 2. 菌糸ブロックを購入し、菌糸ビンに詰め替えて利用する。
 3. 菌糸ブロックとおが粉を購入し、混ぜることによって菌糸ビンの容量を増やしてから、菌糸ビンに詰め替えて利用する。

 コスト面から考えると、1>2>3 となりますが、その分手間がかかるため、いわゆる人件費は考慮に入れておりません。人件費まで考慮すると、1≧2≧3となるようにも想像されます。(各自の飼育環境や条件に左右される要素が無視できません。)
 しかし、ここではクワガタ飼育を業務としてではなく、単に個人の趣味として考えるのであれば、人件費はほぼ無視してかまわないのではないでしょうか。そうすると、最も低コストで菌糸ビンが作成できる方法は、3番目の方法になってきます。

 前置きが長くなりましたが、今回は菌糸ビン作成時の工夫と称して、低コストの菌糸ビン作成方法をご紹介させていただこうと思います。なお、すでに実施されておられる方も多いかと思われますので、その方については読み飛ばしてください。

図1 おが粉を加熱殺菌処理するふた付きPP製耐熱容器

  まず最初に、菌糸ブロックとおが粉を混ぜる必要がありますが、この時に最も重要なのは、おが粉を事前に電子レンジ等で加熱消毒することが大切です。もし、この作業を怠ると、混ぜた後に綺麗に菌糸が廻らず、青かび等が発生し、使用できなくなる可能性が非常に高くなります。 

 そのための下準備として、上記に示したような耐熱容器におが粉を入れ、電子レンジで約3〜7分ほど加熱します。加熱時間は、おが粉の量に依存すると思われますが、私の場合約1.5リットル分のおが粉に対して、最初に3分30秒ほど加熱し、5分ほど間隔をあけた後で、再度3分30秒加熱しております。

 これは、あくまで経験則なので、もっと短時間でも大丈夫かもしれません。ただ、少なくとも私の場合は、これで今まで失敗したことは一度しかありません。
 使用する耐熱容器は100円ショップ等で売られているもので十分と思います、この時に気を付けないといけないことは、プラスチックの材質です。一般的には、容器にはポリプロピレン、ふたにはポリエチレンが使用されているものが多いようですが、ポリエチレンの耐熱温度は70〜80℃なので、使用するのは危険です。その場合は、ふたを取った状態で使用してください。

 私が使用している耐熱容器は、ふたもポリプロピレンなので、100℃まで耐えることができるため、ふたをして使用しています。なぜふたをして使用しているかと言うと、ふたがない場合はおが粉の温度が上昇した時に、かなりの刺激臭が発生するためです。
 一人住まいの方は、何の問題もないかもしれませんが、家族でお住まいの方であれば、間違いなく奥様を筆頭に、同居している家族からクレームが来ることは必至です。最悪の場合、二度と電子レンジを使わせてもらえない可能性もありますので、臭いだけには十分注意して、換気扇を回したり、窓を開けて換気をしながら作業を進めることをお薦め致します。

 なお、ふた付の容器であっても、ふたを固定しないで、半開きにしておくことが大切です。容器に入れたおが粉を加熱することにより、内部に含まれている水分等で蒸気が発生し、容器の圧力が上昇するために、ふたを固定していると場合によっては、ふたが吹き飛び、電子レンジ内におが粉がまき散らされると言う、取り返しのつかない事態を招きます。こうなると、間違いなく、電子レンジ使用禁止令又は買い替え命令が下ると思いますので、くれぐれも圧力の上昇にはご注意ください。 

図2 加熱処理した後のおが粉の状態

  加熱処理したおが粉は、自然に温度が下がるまで、冷暗所で保管しておくのが良いと思います。急激に冷やしたりすると、せっかく加熱したことによる殺菌効果が薄れる可能性があります。私の場合、夜遅くに加熱して、朝まで一晩放置しております。しかし、これも人それぞれなので、いろいろと試してみてください。

 一晩放置して温度が下がったおが粉は容器から出して、菌糸ブロックと混ぜるための大きな容器に移しますが、この時に幾分加水してください。水分量はおが粉の容量に依存しますけれども、普通1.5リットルに対して200〜300cc程度で十分と思われます。ただし、これもあくまで経験則ですので、参考程度にしてください。

 加水した後のおが粉を手で握って、崩れるか崩れないかギリギリぐらいが経験的に良いように思います。ここで水分が多すぎても少なすぎても、混ぜた後で菌糸の廻り具合が悪くなるように思いますので、慎重に加水してください。
 なお、ここで小麦粉やふすま等の添加物を加える方も数多くおられると思いますが、私は考え方が違うため、まだ一度も試したことがありません。

図3  加水したおが粉に菌床ブロックを加えたところ

   いよいよ加水したおが粉と菌床ブロックを混ぜる作業になりますが、ここはそれほど気を使わなくても大丈夫です。 一つだけ注意点を上げるとすれば、双方が十分に混ざるように、根気よくひたすら混ぜることです。混ぜ方が不均一だと当然うまく菌糸が廻らないものが出てきます。 力のいる作業ですが、ここが肝心なところだと思って丁寧に時間をかけて混ぜてください。

図4 おが粉と菌床ブロックを混ぜ終わったところ

  混ぜ終わると、このように菌糸がほぼ見えなくなります。(実際には菌糸は生きています)最後に、これをお好みの容器に詰め替える作業になりますが、時間が経つと表面から乾燥し始めますので、詰め替え容器は事前に用意しておいて、素早く詰め直すことが大切です。  

図5 用途に合ったお好みの容器に入れ替えて作業終了

 このように、用途に合わせた容器に詰め替えられるのが、この方法の長所でもあります。ここまでくれば、ようやく作業終了です。 あとは、菌糸が廻るまで1〜2週間ほど冷暗所(18〜20°前後の場所が適しています)に保管しておきます。 

図6  一週間後の状態 まずまず綺麗に菌糸が廻りました

  このようにして、飼育頭数は多いがお金がないと言う人には、ご紹介させていただいた方法も選択肢の一つとして考えられると思います。 オオクワガタを始めとする大多数のクワガタは、自然界では白色腐朽菌によって白腐れした枯れ木の中で、グルコースと菌糸を主に食して成長していると考えられます。

 その意味でも、菌糸ビン飼育は非常に理にかなった幼虫飼育方法と言えるのではないでしょうか。菌糸ビンの価格も昔に比べると安くなりましたので、手軽に利用できると思います。短期間(1年以内)で大型のクワガタを羽化させてみたいと思われる方は、ぜひ菌糸ビン飼育をお試しください。
 

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