もう3〜4年前になると思います。クワガタ飼育もピークを過ぎ、愉しみと言うよりもほとんど義務感で飼育していた頃、左手の親指の爪の先が何やら白くなっているのを発見しました。
私はてっきり自分の知らぬ間に爪の先を傷つけたと思いましたが、痛くもかゆくもないので、そのまま放置して様子を見ることにしました。すると、日を追ってその白い部分が広がって行くではありませんか。
だんだんと心配になり、皮膚科で診察してもらうことにしました。すると、先生は一目見るなり、「ああ、爪水虫ですね」とおっしゃられ、「別に心配するほどの病気ではないので、飲み薬と塗り薬を出しておきますから、しばらく通ってください」と言われました。
専門家の先生に「たいしたことない」と言われ、私も安心したのですが、完全に治癒するまでに1年以上かかりました。思っていたよりも長引いてしまい、心配になったこともありました。それでも、完治してホッとしています。
でも、何故急にそのような病気にかかったのか、自分でも不思議でした。特に思い当たる節もありませんでしたし、まったく原因がわかりませんでした。
普通、爪水虫というのは、手の爪ではなく、足の爪によく出来るそうらしいのですが、私の場合は左手の親指にできたのです。「何か、汚いものを触ったのかな」、「クワガタ飼育のし過ぎで、爪の中に水虫菌がはいったのかな」とも考えましたが、それならもっと早い時期に罹っていると思われ、直接的な原因とは考えられませんでした。
今も、はっきりした原因はわからないのですが、爪水虫に罹った頃、ちょうど世の中ではO−157の食中毒が広がりを見せている時であり、勤めている会社でも、その対策として、トイレに消毒用アルコールを常備して、盛んに手の消毒をするように薦められた時期でした。
私も、自分はもちろん家族にもうつしたら大変だと思い、会社ではトイレに行った時は勿論のこと、数時間おきにトイレに行って消毒用アルコールで手を消毒していました。そのような期間が1年ほど続いたでしょうか。何の前触れもなく、先ほども書きましたように、突然左の親指の爪の中が白くなり出したのです。
初めは、これほどいつも手を清潔にしているのに、なぜ水虫菌に冒されなくてはならないのか、検討も付きませんでしたが、考えられる原因として、消毒用アルコールによる日々の消毒が原因ではないかと先生に言われました。
聞くところによると、人間の皮膚の表面には、様々な細菌が生活しており、中には人間に取って悪影響を及ぼす悪玉菌もいるが、逆に外部から侵入しようとする善玉菌もたくさんいるらしいのです。
しかし、当然の事ながら、手の表面に生息しているそれらの菌は、消毒用アルコールによって、死滅してしまいます。ただ、永久に細菌が手の表面からいなくなるわけではなく、数時間から数日すると、また再生して来るとのことでした。
もう、おわかりだと思いますが、私のように、毎日数時間おきに手をアルコールで消毒していては、再生しようとしている善玉菌も、再生するタイミングがなくなります。すると、爪水虫菌のような悪い細菌が外部から侵入して来るときに、防ぎようがありません。
事実、家の中で爪水虫になったのは私だけで、手をアルコール消毒する習慣のない家内や息子は、まったく何ともありませんでした。
このように、過剰な清潔志向は返って逆の結果をもたらすと言うことを、身をもって体験した訳です。その仕組みを科学的に実証されているのが、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生なのです。
最近は、滅多に手を消毒することはなくなりました。(勿論、日々の手洗い等は常識の範囲内で行っております。)風呂にはいる時も、今までは毎日石けんとタオルで身体をゴシゴシ洗っておりましたが、それも良くないことを知り、タオルで身体をこするのは、一週間に一度に決めて、日常は石けんを使わず、シャワー等で汗を流す程度にしております。
どんなことでも、「やりすぎ」はろくな事にならないですね。ぜひ、皆さんもご一読されることをお勧め致します。特に、潔癖症の方には、認識を新たにする意味でも、読む価値があると思います。
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