決めないことを、恐れてはいけない

書評:『腹を割って話した』

藤村忠寿 嬉野雅道 著   イーストプレス


『腹を割って話した』


 
  皆さんは、「水曜どうでしょう」と言うテレビ番組をご存じでしょうか?北海道テレビ(HTB)が、1996年10月から放送を開始したバラエティ番組です。(主に、旅に出るのが多いので、一風変わった旅番組とも言えると思います。)

 出演者は、大泉洋、鈴井貴之、ディレクターは、藤村忠寿、嬉野雅道の総勢4人で行動を共にする構成になっています。

 番組の内容を一言で説明するのは本当に難しいので、できれば実際の番組を見ていただくのが早いと思います。ただし、一回見ただけでは、何のことやらさっぱり解らない場合がありますので、できれば3〜4回は見続けていただきたいのです。

 私も、最初は目的があって見たわけではなく、偶然チャンネルを操作しているときに、映ったのを何気なく見ていたのですが、他の番組にはない、何か思いもかけないことが起こったりするような気がして、つい次回も見てしまい、気が付いたら、毎週録画してまで見るようになっておりました。

 番組自体は、2002年にレギュラー放送が終了し、現在は再放送が地方のローカル局を中心に何度も放送されており、それ以外には、数年に一度、新作が数ヶ月間限定で放送されているような状況です。

 しかし、この番組の凄いところは、レギュラー放送終了後も人気がなくなるどころか、それ以上に人気が出て来て、番組終了後10年以上もたった今では、数ヶ月に一度、DVDが発売されているような始末です。そんなテレビ番組は、少なくとも私が知る限り他にありません。画質もデジタル補正されておりますが、やはり古さを感じます。

 さらに、驚くべきことに、「どうでしょうグッズ」なるものが毎年のように登場し、またそれを購入する人が何万人もいると言うことです。もちろん、私も懐が許す限り、買い集めておりますが、それでも全種類をそろえることはできておりません。多分、今後もできそうにありません。

 そして、とうとう昨年の秋には、京都大学の臨床心理学の佐々木玲仁先生が、「結局、どうして面白いのか」(水曜どうでしょうのしくみ)と言う解説書まで出されました。いずれ、この本についてもご紹介したいと考えております。

 これは、在る意味で宗教のようなもので、見るとなぜか安心するのです。しかも、もう何度も同じ放送内容を見ているので、筋書きが解っているにも関わらず、つい見てしまうと言うところに、この番組が持つ魅力(魔力?)があるように思います。

 宗教であるならば、聖地が必要となりますが、それはまさに、HTBのすぐ隣にある地元の人しか知らないような、何の変哲もない、ただの公園なのです。

 なぜそこが聖地となっているかというと、番組のエンディングには、かならずその公園で収録された予告編が放送されるためであって、信者はいつか訪れなければならないと思っていることでしょう。もちろん、私も聖地巡礼には、3回出かけております。

 肝心である、本の内容について書くことを忘れておりました。この番組が成り立っているのは、もちろん出演陣の独特のキャラクターによるものが大きいのですが、ディレクターの存在がこれほど大きなウェイトを占める番組も珍しいと思います。

 はっきり言って、この二人のディレクターがいなければ、「水曜どうでしょう」は成り立って行かなかったと思います。それほど、個性の強いディレクター陣なのです。

 番組の構成上、大きな存在である二人のディレクターが、初めて明かした「水曜どうでしょう」の裏側を、対話形式で綴った、信者はもちろん、これから信者になろうと考えておられる方には、必見の一冊になることでしょう。




 

《水曜どうでしょうの聖地 札幌市 平岸高台公園にて 2006年 夏》       
 


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