百合鴎


白羽の群鳥 鴨川に 飛べば


都人 曰く 冬の風物詩なりと


千年の都鳥 是かと 瞠目すれば


忽ち蘇る 名にし負はばの彼の秀歌
















百合鴎 ゆりかもめ  『伊勢物語』に登場する
都鳥は、百合鴎と確認されている。百合鴎は、く
ちばしと脚が赤く、全体に白っぽい小形の鴎類。
カムチャッカ半島から冬鳥として日本に渡ってくる。

 以前は見られなかった京都にも飛来するように
なり、鴨川などで、エサをついばんでいる。この鳥は、
今や鴨川の冬の風物詩として、多くの人々に愛さ
れている。

白羽 はくう

群鳥 ぐんてう  群れをなす鳥

鴨川 かもがわ  京都市東部を流れる川

都人 みやこびと  ここでは京都の人々を指す。

千年の都鳥 せんねんのみやこどり  都鳥が、平
安時代の初期に書かれた伊勢物語に登場して以
来千年の歴史が経つことを言う。

是 これ

瞠目 だうもく  目をみはって見ること

蘇る よみがへる

名にし負ば・・・・・の歌  『伊勢物語』 (九段)

 白き鳥の嘴(はし)と脚(あし)と赤き、鴫(しぎ)の
大きさなる、水のうへに遊びつつ魚をくふ。京には
見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡守に問ひけ
れば、「これなん都鳥」といふを聞きて、

  名にし負はばいざこと問はむ都鳥
            わが思ふ人は ありやなしやと

   とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。

                歌意

 もし、お前が、その名にふさわしい都の鳥であるの
なら、さあたずねよう。都鳥よ。わたしが思うあの
人は、今、都で無事に暮らしているかどうか、と。
虚心妄語集 第 4 回
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