第7回(2018/01/01)

 何用あって月、火星へ。 ~差し迫る「地球船の沈没」阻止が最急務ではないか~

 はじめに

  火星は宇宙の地獄に見える

   今、火星への移住構想など、宇宙新時代への幕開きだと言われる。が、私が生まれ変わり、その時、技術的に火星に行けたとしても、行きたくない。住みたくもない。強い放射線が降り注ぎ、生命体の存在しない、不毛な、赤い宇宙の火星は、さながら、死の砂漠、地獄の谷ではないか。 

 
地球は地上の天国に思える

  緑林が茂り、麗花が咲き、碧水が流れ、好鳥が(さえず)る、多様な生命体が宿る地球は、人間が生存を許された、唯一無二の奇跡の青い星だ。いわば、地上の天国ではないか。天の恩寵(おんちょう)として、万感を込めて感謝し、大切に守るべきだろう。

 
温暖化による地球の危機

  その地球が、環境破壊に伴う温暖化の影響で、異常気象が頻発し、生態系と暮しへの悪影響が深刻化している。宇宙開発に注いでいる、国を挙げてのエネルギーと天文学的な資金を、地球の環境保全にこそ向けるべきだろう。

 地球船の沈没阻止を

 今、地球船は、壊れ、浸水し、沈没せんとしている。その沈没阻止が最急務ではないか。船室内で、呑気に「宇宙飛行パーティー」に浮かれている暇はない。さもないと、第二の「タイタニック」として、宇宙海に身を沈めてしまうのだ。 以下、最近の宇宙情報を基に、我が虚心妄語を綴る。


 宇宙新時代へ

 旧ソ連が人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げてから60年。米のアポロ11号が月面着陸してから半世紀。米ソは激しい宇宙開発競争を展開してきた。両国は膨大な予算を投じて、有人飛行や月面着陸、宇宙ステーションの建設などを実現した。が、冷戦終結で新たな開発は低調になっていた。

が、最近、宇宙開発で、関心を引くニュースが相次いでいる。一つ目は、米トランプ大統領が飛行士を再び月に送り込むと決定したこと、二つ目は、米スペースXの創業者、イーロン・マスク氏が100万人規模の火星移住構想を発表したこと等で、宇宙新時代に突入したと言われる。

  ちなみに、世界の宇宙産業規模は、年々右肩上がりで、2,015年度は、3,000億ドルを超えている
(米 宇宙財団の資料)。今後,月、火星等の開発が進展すれば、今より桁違いの資金肥大になるだろう。


 ホーキング博士の提言

   
著名な理論物理学者、スティーヴン・ホーキング博士(ケンブリッジ大学)は提言している。

  
「人類は、100年以内に、地球を去って、別の惑星に住処を変える必要がある。地球は、このままでは、天体衝突、ウイルス,気候変動、核戦争、人工知能の暴走等で絶滅の恐れがあるからだ」と。

      
                               ホーキング博士の提言「100年以内に宇宙へ」 NHK BS3(前編 2017/11/9 後編 11/16)
 
 
これは,「地球は絶滅する。だから、別の星に引越しをしよう」と提言しているのだ。天主が創造し、46億年かけて磨いてきた珠玉の星(地球)を、現代人の勝手気儘な営為で壊されていくのを、博士はいとも簡単に見過ごすのか。博士は、何よりも先に、なぜ、地球環境の危機に、世界に向けて、全力で警告し、その危機阻止を働きかけないのか。

  
引越し先の星も、これまでの探索では、人間が生存し続けられる所はない。安全・安心が保証された、第二の地球はどこにあると言うのか。この先、地球は絶滅、引越し先の星も死の世界、これでは、進退窮まり、全滅必至ではないか。重大な問題であればこそ、博士は、信頼できる客観的な根拠を示し、納得できる提言をして欲しいものだ。


 宇宙空間の人体への影響

  では、宇宙について、各論に入ろう。先ず、宇宙空間の人体への影響はどうだろうか。これまでに宇宙を往復した飛行士の経験からは、宇宙は、人体に悪影響があることが分かっている。 (NHKスペッシャル 1989年)

 
 ◇ 宇宙飛行士の帰還から

  米(1973年)の宇宙船が、地球に帰還し、飛行士達が着陸する姿を映像で見た。Vサインを出しながら、凱旋将軍のように、意気揚々と下船するかと思いきや、全く逆であった。立ち上がることも困難そうで、一人で、歩くこともできない。

   A飛行士は、人に抱えられながら下船、別の飛行船のB,C,D飛行士達は、わずかな高さの階段でも、独力で降りられず、エレベーターに頼っているのだ。頑強な健常者として、出発したのに、なぜ、衰弱した要介護者として帰還するようになったのか。

    無重力による筋骨の退化


   
それは、彼らが滞在した宇宙船の環境による影響下にあったことに由来する。宇宙空間で無重力に置かれた飛行士は、空中に浮遊する。従って、身体に重力が加わらないので、立つという力も働かず、歩くという運動も加わらない。それ故、筋骨が退化し、委縮していくからだ。いわば、寝たきり状態に置かれた老人のように、筋骨が衰弱してしまったのだ。


  
 ◇ カルシュウム消失による後遺症

   無重力下に置かれた飛行士の宇宙滞在期間は84日間。このような短期間でも、筋肉が急速に劣化するのだ。筋肉だけでなく、骨が細く、(もろ)くなる。その過程で、筋肉を動かす働きをする骨のカルシュウムが失われ、腎臓結石や骨粗鬆症(こっそしょうしょう)になりやすくなると言う。

   A飛行士は、84日間の滞在で、5%のカルシュウムが消失したと言う。16年経過後の今も、カルシュウムの消失で、筋肉の回復が遅れていると、渋い顔で言っている。後遺症にもなっているのだ。



 人類は宇宙移住できるか?
                                                               『人類は宇宙移住できるか?』コスミック フロント NHK BS3 2017/11/2

   上記のテーマが放送された。移住先は、火星を対象に、内容は、「移住先の移動方法」「食料の自給自足」「生活空間の探査」で、それぞれ、日本の研究者が、プレゼンしたものである。そのポイントを挙げる。キーワードは、火星での「移」「食」「住」「人」の問題を考察することだ。

    ◇ 火星の環境


     ✩ 地球からの距離 5,500万Km  ✩ 大気 地球の約150分の1         酸素 0.13%   

   ✩ 重力 地球の約3分の1
      ✩ 平均気温 -43°c           ✩ 水 地下数メートルに氷   

   ✩ 生命体 なし             太陽からの有害な放射線 常に宇宙服着用 

        ◇ 火星への「移住」は?

   NASAの宇宙船6人乗りで、火星到達迄10か月。途中大量の放射線が船の壁を通過する。到達迄、一人当たり1,000ミリシーベルトの放射線を浴びる。そこで、日本の研究者も参加して、1か月で到達できる、マイクロ波の超高速宇宙船を開発中。

  こんな超長期間、膨大な資金と、大量の放射線の洗礼を受けながら行き着く先は、地球を超えるユートピア(理想郷)なのだろうか?
    
        ◇ 火星での「食料」は?

   
火星は不毛の惑星、太陽光は半分、表面の土は大量の放射線、食物を育てることはできない。宇宙での栽培を目指すとして、宇宙農場を構想。今、実験農場で、赤、青色のLEDライトをあて、レタスを栽培。ジャガイモも栽培の候補に。更に、鶏の細胞から作る人口の肉、培養肉を研究中。

  
つまり、食料は自然栽培はゼロで、実験室の試験管とシャーレ等の人工栽培のみ。特定の短期間、特定少数の飢餓食なら、これでもいいだろう。が、未来永劫、万人の日常食たるの条件を満たしているだろうか?

  
◇ 火星での「住居」は?

   
どこに住むか、どうやって住むかである。火星は、大気が薄い、太陽からの紫外線も直接あたる、放射線も強い、ダストデヴィルという竜巻がある。風速50メートルを超える。中で放電したり、建物がぶっつかる問題もある。

  竪穴のくぼみ・・・探査機で火星の表面に、無数のくぼみ、竪穴の入口を発見。直径200メートル。住める洞窟として最適だが、内部は不明。今、日本の研究者が、穴内部の探索ができる、小型の歩行ロボット(重さ3Kg)を開発中。移住の下見に活用できそうだ。

   
それにしても、原始時代に戻り、洞窟住まいに回帰するとは。

  
◇ 火星での「人間」の生活は?

   
複数の人間が、火星で共同生活した場合、どんな問題があるか。「火星模擬生活実験」をした。

   場所・・・ 米ユタ州 砂漠地帯   カナダ・・・ デボン島という北極圏の無人島。 
   参加した人・・・8人(男5人 女3人)  国籍、職業、年齢等バラバラ。  期間・・・160日
   居住空間・・・8畳位。 食品・・・乾燥食品  生活水・・・宇宙服を着て、基地のタンクに取りに行く。

   どんな問題が起きるか?  1週間に1度しか、シャワーで体を洗えない等、普段の習慣が邪魔されることで、お互いに不満とストレスが溜まっていき、3週間目で爆発寸前になる。火星のように、閉ざされた空間での、不自由な日常生活では、様々な人間関係の軋轢(あつれき)が起きそうだ。 

   火星での人間は、生活の自由を束縛された、「収容所」の環境に近い。イライラ多発で、争いに発展しそうだ。


 これまでのまとめと感想

  
(1)宇宙空間は、無重力圏、筋骨等の劣化や人体への悪影響が大きい。

  (
2)環境が過酷で、人間が生存し続けられる星とは到底思えない。生きものゼロが、その証拠だ。

  (3)「移」「食」「住」「人」の環境への対応は、生存できる条件には、ほど遠く、深追いは徒労だ。

  
(4)生存環境の可能性を軽視し、技術力を過信、独走しても、災いを招くだけだろう。

  (5)天を畏れず、宇宙を征服の対象とみなし、神の領域を犯し、暴走すれば、天罰が下ることを知るべきだ。

       
 (6)  温暖化による災害も、あるいは、地球環境の破壊に対する、天の怒りと罰、更に重大な警告かもしれない。




 『「有人月探査」 参加ありき、ではなく』  朝日新聞社説 2017/12/20
       
      
  「参加するのなら、日本として何をめざすのかを明確にし、戦略をもって臨む必要がある。米トランプ政権がかかげる有人月探査計画に、政府が参加する方針を決めた。2020年代後半に月の軌道上に中継基地を造り、人を送り込む構想だ。日本も参加している国際宇宙ステーション(ISS)は24年に運用を終える予定で、その後継プロジェクトとなる(略)。米国は予算難などから月探査構想を中止した過去をもつ。今回、日本に最大限の貢献を求めてくると予想され、それが単なる「お手伝い」であっては国民の理解は得られまい(略)。日本人による月着陸を目指すことになれば、ISSに毎年投じてきた約400億円を大きく超える費用が見込まれる(略)」。

 
この社説の通り、日本は米政権の月探査計画に、政府が参加する方針を決めたという。政府が、この計画に参加する明確な理念、目的、戦略の検討・議論もなく、唯米政権に盲目的に追随してよいのか。費用面で見るだけでも、膨大な負担が見込まれのだ。2018年度予算案は97兆7,128億円。歳入の3分の1以上を新規国債で賄う「借金頼み」の財政である。現在でも、将来に大きなリスクを負わせる危機的状況にあるにも関わらず、今後、不要・不急の巨費で、更に、大きなリスクを積み上げるつもりなのだろうか。  


 
 地球温暖化への取組み
 
                                                                          
 『地球温暖化 米政権は現実を見よ』朝日新聞社説 2017/11/21

   「地球温暖化対策をめぐる国際会議、COP23が閉幕した。画期的なパリ協定の発効から1年。各国が対策に取り組もうと、足並みをそろえたのに対し、米トランプ政権は今年6月、協定離脱を表明し、影響が懸念されるなかでの閉幕だった。

   世界の年間平均気温は昨年まで3年続けて観測史上最高を更新し、海面の上昇も加速している。猛烈な台風やハリケーンの発生など極端な気象現象も相次ぎ、温暖化を意識せずにはいられないのだろう。

   にもかかわらず、トランプ政権は逆行をやめない。中国に次ぐ世界2位の二酸化炭素排出国である米国の無責任な姿勢は、< 先進国が責任を果たしていない>という途上国の不満を噴出させた」。


  
この社説のように、地球温暖化をめぐる国際的な取り組みは徐々に進展している。が、米政権の逆行姿勢は温暖化阻止の大きな障害になっている。「温暖化はでっち上げだ!」と批判していた米大統領が、その後、テレビでこんな発言をしていた。


    「
今日の気温は、21度で凍えそうだ。地球温暖化は一体どこへ行った?寒いぞ!」


    
温暖化の本質に無理解で、曲解したこの発言を正常化させるには、どうしらよいだろうか。



 『地球が壊れる前に~ディカプリオの黙示録~』

                                                                                
BS世界のドキュメンタリー NHK BS1 2017/11/7-8

                     
<米 俳優 レオナルド・ディカプリオの国連でのスピーチ>

    映画「タイタニック」で、主役を演じた、レオナルド・ディカプリオは、国連平和大使として、2年間、地球各地の温暖化被害地を見て回った。その報告と、彼の抱いた警鐘を、パリ協定署名で集まった世界の代表を前に、スピーチをした。(
2016/4/22  N.Y)。下記にその要旨を記す。


             
~今こそ、温暖化を阻止し、地球を守る行動を!~

  
各地の温暖化被害に驚愕(きょうがく)

   「大気汚染に苦しむ北京のような都市、伐採が広がるカナダの太古からの森林、野焼きで失われつつあるインドネシアの熱帯雨林 、インドでは穀物を流された農民たちに会い、アメリカのマイアミでは、海面の上昇で、浸水する通りを見ました。グリーンランドと北極では、氷河が予測より遥かに早く、解け始めているのを見て驚愕しました。こうした旅で見たもの、学んだことの全てに震えあがりました。

  
協定以上の行動を

    確かにパリ協定は成立しました。人類史上大義のために集まったことのない数の人々が、この協定署名のために集まりました。が、残念なことに、これでは、十分ではありません。今、直ぐ大がかりな転換が必要です。新しい集団意識につながる転換、差し迫った思いを達成できる人類全体の新しい進化です。協定への署名は喜ばしいことです。が、それぞれが国に帰り、この歴史的協定以上のことを目指さなければ、意味がありません。もはや言訳はいりません。

 
 地球を守る綱は、みなさんにある

   
 私達の将来を左右する科学や政策を、化石燃料の会社に託す訳にはいかないのです。世界は今見ています。皆さんは将来の世代から称賛されるか、非難されるかの何れかです。皆さんは地球の最善にして、最大の頼みの綱です。どうか、地球を守って下さい」。以上

    
L・ディカプリオの熱意溢れた名スピーチである。が、その1年後、こともあろうに、彼の母国の大統領が、「パリ協定離脱」を表明、ディカプリオの訴えを、いわば全否定してしまった。しかし、報道では、温暖化阻止と、そのための新ビジネスチャンスを巡る世界の潮流は、今世紀後半に二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするという「脱炭素革命」に向けて激変している。世界は、ディカプリオの訴求に沿って進んでいるのだ。
  
                                                                                                                 「脱炭素革命の衝撃」NHKスペッシャル 2017/12/17

 『何用あって月世界へ』

   半世紀前、米のアポロ11号が月面着陸した時、随筆家の山本夏彦はこう書いた。

  「アポロは月に着陸したという。勝手に着陸し、次いで他の星へも行くがいい。神々のすることを人間がすれば、必ず、ばちがあたる、と言っても分かりたくないものは分かるまい。
何用あって月世界へ? 
 -月は、ながめるものである」。

                          
『何用あって月世界へ』   山本夏彦名言集 文春文庫



 あとがき

  
何用あって月、火星へ。 ~差し迫る「地球船沈没」阻止が最急務ではないか~

                                                
以上

       

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