○ 人はどんな時正氣(理性)を失うか

      かつて、学内改革を求めて、東大安田城に立て(こも)った東大全共闘の学生達は、機動隊と激しく応戦したが、あえなく落城。377人の学生達は逮捕され、輝かしい前途を自ら閉じてしまった(1969/01/19)紛争の過程で、軌道修正、降服、撤退の選択肢もあったのに、暴走していったのだ。目的を失い、指導者無く、戦略無く、戦闘だけの無残な終結であった。

 一人一人の個人の能力が如何に優秀でも、集団が形成されると、グループダイナミックス(集団力学)が働き、個人は、特異な思想・特異な考えに洗脳・支配され、常軌を逸した行動に突き進みがちになる。例えば、ナチス・ドイツ、2・26事件の青年将校達、オーム真理教教団等枚挙(まいきょ)(いとま)がない。

      リング内で、ヘビー級の黒いボクサーは、蝶のように舞い、蜂の如く相手を刺し、袋叩きにした。が、リング外で「今のアメリカはおかしい!」と吠えまくり、身を(てい)して、時勢に抵抗した(人種差別抗議、ベトナム戦争(せんそう)徴兵拒否等)。このため、世間の逆鱗(げきりん)に触れ、タイトル剥奪、試合禁止、投獄等で、袋叩きにされた。が、不屈の意志で、迫害を乗り越え、後年、名誉を回復、波乱の生涯を閉じた(2016/06/03)。故郷で行なわれた追悼パレードには、10万人以上が駈付(かけつ)け、別れを惜しんだ。戦績は56勝5敗、史上最強のボクサーの一人だった。今日、この蜂男は、強烈な信念の人物として、国内外の尊敬を集めている。この男の名を、モハメド・アリと言う。

 

      かたや、信念の欠片(かけら)もない、無節操で厚顔無恥(こうがんむち)(やから)達が(うごめ)く国がある。いわば、蝙蝠(こうもり)軍団だ。鳥と獣の政争があると、蝙蝠達は、右顧左眄(うこさべん)し、鳥が優勢と見るや、「私は鳥だ!」とすり寄り、獣が優勢と見ると「私は獣だ!」とすり寄る。立つ位置が安泰なら、政治信念などは二の次、鳥にも獣にも早変わりするのだ。これを、黄泉(よみ)のモハメド・アリが見れば、再び吠えるに違いない。「お前達はおかしい!」と。

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