拝観のマナーについて

京都の或るお寺の方に拝観のマナーについて書いていただきました。
年々悪くなっているようで、中にはこんなことまで
というようなこともありこちらもびっくりしています。
私たちも知らず知らずにマナー違反をしているのかもしれません。
ここで改めて拝観のマナーについて頭に入れておきましょう。

はじめに

「これくらい気をつけておけば、お寺で注意される事はないだろう」とか、寺から見て「最低限これくらいは気をつけて欲しい」という事柄の中で、実際に目にすることが多かったものをあげてみました。書き忘れてる事や、書くべきかどうか悩んだ項目もありますので、後からちょっとづつ増えて行くかもしれません。

「馬鹿にするな」という方や、逆に「何が悪いんだ」という方もいらっしゃると思いますし、また列挙するだけで理由をちゃんと書かないとはどうかと思いましたが、とりあえずの目安だけ、ということで許してください。
各寺院によって、厳しかったり緩かったり、特別なルールがあったりもしますし。

【問い合わせについて】

・電話は常識的な時間にかける(9時〜17時くらい)
・名乗る
・紅葉が見頃になる正確な日にちは、終わってみないと判らないので言われた
 日に来て見て見頃でなくても怒らない
「何日が見頃になりますか?」というお問い合わせをいただきますが、「色がついてみないと判らない」というのが正直なところです。その時の気候で紅葉の進み具合は変るものですし、同じ日でも日当たりによって紅葉している木と色付いていない木があったりします。振り返ってみて、「この木は去年は○月○日が綺麗だったかも」というのが精一杯です。ご自身の季節感を頼りに来ていただくのが一番なのかもしれません。

あ、「お寺だから、朝の5時に電話をかけても大丈夫だろう」ということはありませんので。いえ、誰かが起きている場合もありますが、そういう場合は朝の作務や勤行をされている場合がほとんどですので、電話は出来るだけそのお寺の拝観時間内にかけるのが良いと思います。(去年、夜中の2時と朝の4時半に電話がかかって来た事がありました。眠らせてください(涙))

【自家用車で来る場合】

・迷惑駐車をしない
・割り込みをせず、順番を守って駐車場に入る
・駐車場がない場所も多いので注意
・参道をさえぎるように駐停車しない
駐車場が満車で、周囲に駐車場などがないという時に「どうしたら良い?」とか「何とかしてください」とか「先にいれてくれ」なんて懇願されたり凄まれたり、無言でいきなり割りこんでいらっしゃる場合がよくあります。いま確保してる駐車スペースで精一杯なんです。ごめんなさい。

また、順番待ちをしていただくにしても、路上や歩道での順番待ちは通行の妨げになりますので、お断りすることが多いです。ですから、満車の場合は時間をずらせて再度来ていただくほかありません。しばしば近辺に路上駐車をされる方がいらっしゃいますが、やはり通行の妨げになりますので厳禁です。その時期に合わせて違法駐車の取り締まりも強化されますし。お寺によっては、どれだけ参道(門前の道)があいていても駐車を禁止している場合があります。

【門をくぐる時に】

・拝観料を値切らない
拝観料は、あくまで布施行を体験するという意味の宗教行為になります(布施や喜捨の意味については長くなるので割愛しますが、体験の目安としての金額が決められていたりしますが、中には参拝に来た方自身で金額を決める所もあります)。遊園地などに入る時の入園料のような経済行為ではないということを、頭の片隅に置いておいてください。ですから「団体割引はありますか?」というのも意味のない質問になります。
・飲食をしない
・ガムや飴などを口に含んだまま入らない
・原則禁煙
飲食は、境内に決まった場所がある場合を除き、原則禁止です。清水寺なんかは、中のお茶屋さんでお汁粉を食べたり出来ますね。でも、舞台のところなんかで物を食べてるのを見つかると、やっぱり怒られます。あと、門をくぐる時は他人に挨拶をしてるのと同じことですから、ガムを噛みながら、というのはやっぱり失礼ですよね。

【門をくぐったら】

・柵の中には入らない
・柵がなくても、苔や草木が生えているところには踏みこまない
・樹木や草花の根元には行かない
・樹木に持たれかからない
・樹木の枝を折ったり、葉や草花をちぎったりしない
・ゴミを捨てない
紅葉シーズンに京都の寺院に行って驚くのは、多くの人が平然と植え込みに入るという事です。草花や樹木は、踏まれてしまうとそれだけで弱ったり枯れたりしてしまいます。

また、寺院の場合、柵の中は聖域とされている場合が多いので、決して柵を越えたり下をくぐったりしないでください。「柵の中に落ちている綺麗な落ち葉を取りたい」という時も無理に取ろうとは考えないでください。柵がなくても、苔や草木の植えてあるところには脚を下ろさないようにお願いします。たまに「汚したくないから」というので苔の上に荷物を置く方がいらっしゃいますが、汚すのがお嫌でしたら、手にしっかりと持っておいてください。もちろん、木の枝を折ったり、色付いた葉を千切取ったり、草花を摘み取ったりするのは論外です。

【庭と向かい合ったら】

・寝転ばない
・縁側から足を出さない
・庭に降りない
仏教では、庭は木や草や水で仏の世界を表現した場所で、仏壇と同じように信仰の対象とされています。中を歩くようになっている庭もありますが、そういう場合を除いて、基本的に入れない場所だと思ってください。信仰の対象と向かい合っているわけですから、寝転んでいると「失礼だ」と注意されるでしょうし、縁側から足を垂らして座っていると「仏壇に足をかけてるのと同じ」と見られるでしょう。足を悪くされてる方などには椅子を貸してくれるお寺もありますので、お寺の人に聞いてみましょう。

時折、注意されてから「足が痛い人にまで強制するのか」と怒る方がいらっしゃいますが、口に出して言っていただかないとお寺の方も判りませんので、出来るだけ早く申し出てください。なににしても、かしこまって正座までしなくても良いと思いますが、「初対面の人と向き合っている」くらいの気持ちでいるのはどうでしょうか。

【本堂に入ったら】

・帽子などは着用しない
本堂はその寺院内で一番神聖な場所ですので、帽子やサングラスは外しましょう。

【撮影について】

・撮影目的の方は入山禁止
・撮影に集中しない
・一脚や三脚など、カメラの足や支えは使わない
・樹木や杭、柱などに寄りかかって撮影しない
・撮影の為に他の参拝者をどかさない
お寺では、決して撮影を推奨してはいません。撮影機材(カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、撮影機能付の携帯電話等)の持ちこみを禁止している寺院もあります。円通寺さんなんかが厳しく制限されていたと思います。門をくぐるなり撮影を始める人がいますが、そういう場合、参拝する気がないということで、厳しいところでは追い出されてしまう場合もあります。お寺はあくまで宗教行為のための場所だということを忘れないでください。

同じ理由で、一脚や三脚を使うほど撮影に集中しないで欲しいので、使用を禁止していることが多いです。もちろん地面や床を傷めたり、他の参拝者の邪魔になるという意味もありますが。カメラバックや杖などを支えにしている場合も「カメラの脚」とみなされます。「地面につけなければ良い」ということで、カメラの脚を手に持って撮影される方もいらっしゃいますが、それも注意されます。支えがなければぶれるということなのかもしれませんが、その場合は撮影を諦めた方がよいでしょう。
いずれにしても撮影はあくまで拝観のおまけですので、撮影に熱中するというのは、お寺にとっては「失礼な行為」ということになるでしょう。
・仏像は撮影しない
・庭の中では撮影しない
・本堂では撮影のことは忘れる
仏像や庭は仏教徒にとって信仰の対象ですので、撮影は厳禁です。また、上にも書きましたが、本堂はその寺の中で一番神聖な場所ですので、カメラに触れることもしないでください。
仏教以外の宗教施設にいった時にも、信仰の対象にはカメラを向けないでおきましょう。日本ではあまり聞きませんが、国や地域によっては、袋叩きに合っても文句が言えないという場合があります。
・プロカメラマンはプライベートな撮影の場合でも寺の許可を取る
プロのカメラマンの方は、例えプライベートで撮った写真でも、本や雑誌・ポスター等に使用される可能性が大きいので、そういうつもりがなくても、許可なく撮影はしないでください。プロの自覚と分別をもって行動してください。

【その他】

・ペットは連れて来ない
ペットを門前に繋いでおいたり、連れこんだりする事は原則できません(ペット供養などを行っている寺院などでは可能なところもあるようです)。カゴなどに入れての持ちこみも断られる場合がほとんどでしょう。ペットを飼っている方は、その分、自分の自由が制限されるというリスクを負っていることを承知しておいてください。盲導犬はほとんどのところで同伴可能なようです。介助犬は同伴可能な場所も増えて来ているようですが、お寺によって対応はまちまちです。
・車椅子では行けない場所もあるので、事前に電話等で確認しておく
寺院は基本的に造りが古いので、施設が車椅子に対応しきれない場合が多々あります(東本願寺のようにスロープを設けているところも増えてきてはいますが)。お寺の人が階段の上り下りを手伝ってくれる場所もありますが、どうしても車椅子ではたどり着けないというところもありますので、事前に電話で確認をしておくとよいでしょう。

おわりに

うだうだ書きましたが、なにより、お寺や神社は、信仰にそって礼拝やその他の宗教行為を行う宗教施設だというのを忘れないでください。で、参拝のお客様にその宗教行為を体験していただくというのが拝観なのです。

例えば撮影だけに熱中したりされますと、「ちょっと待ってよ」って注意される事が多いと思います。ですから、「宗教って何なんだろう」とか「ここはどんな事を信仰してるんだろう」というようなことを頭の片隅にでも考えながら門をくぐってみてください。
そうすれば、なんで堅苦しい決まりごとがあるのかが、少しづつ見えてくると思いますし、漠然と紅葉を眺めるのとは違った寺回りになるんじゃないかと思います。

文責:糸さん

ごまこよりひとこと

本当にマナーの悪さにおどろいてしまいました。
でももしかしたら自分もやっていたのかもしれません。
改めて考えさせられました。
これからいよいよ紅葉の季節。
マナーを踏まえて紅葉を愛でましょう!
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