スイスの保存鉄道の例を紹介。 スイスの有名列車の中に氷河急行がありますが、この列車はレーティシュ鉄道(RhB)、 フルカオーバーアルプ鉄道(FO)、フィスプ・ツェルマット鉄道(BVZ)の3社直通で運転 されています。その中のフルカオーバーアルプ鉄道(以下FOと略)のフルカ峠越え (オーバーワルト〜レアルプ間)は車窓に氷河が眺められる人気路線でしたが、同時に冬 季の積雪、雪崩などで毎年長期運休となる難所でもありました。 この事態を解決し同区間を通年運行とすべく、スイス連邦政府は長大トンネルを建設、FO はフルカ峠越え区間を1981年10月12日に廃止し、同区間は長大トンネルによる 新線に切り替えられました。 (※FOの立場から見ればフルカ峠越えが人気路線であることは承知していたものの、フルカ 峠旧線の廃止がスイス政府による新線建設費負担の条件だったので、FOはしぶしぶ条件を飲 まざるを得なかった側面があります。) しかし、この17.5キロのフルカ峠越え旧線はスイス国内のみならず、ヨーロッパ各地で廃線 を惜しむ声が高まり、1982年にフルカ旧線保存を目的とした委員会を設立、新聞誌上で レール撤去延期運動を展開、1984年に活動を更に発展させる目的でVFB(フルカ山岳 区間保存協会)が設立、しかしあくまでもVFBは保存運動の支援組織…ということでVF Bとは別に鉄道を復元して運営する為の組織DFB(蒸気鉄道フルカ山岳区間)が設立され ました。 その後、ボランティアを主体としてローヌ氷河への最寄駅グレッチェ駅の修復を手始めに1 986年にはレアルプ寄りのトンネルの修復、1990年にはスイス連邦から路線認可、ベ トナムから旧FOの蒸気機関車4両を購入(ただし一部は既に解体されていた)しハンブルク (ドイツ)でレストア、レーティシュ鉄道(RhB)などからも旧客も入手など… 様々な問題をクリアし、1992年にはレアルプ〜ティ−フェンバッハ間が開通、翌年には フルカまで延伸、1999年にグレッチュまで到達し現在に至っています。 (しかしながら以前この路線を運営していたFOは、泣く泣く旧線を手放した経緯もあり、何 とか自社での旧線再建を計画を模索しているうち、ボランティア団体が設立し路線が復活し てしまったことで、FOとしてはDFBに対し非協力を決め込んでいます。つまりDFBとFOの溝は 深いと…) DFBは株式会社形態で資本金10万スイスフラン(約930万円)、株主9500人、 社員1名(DFB社長の本業は新聞業)、総括責任者はスイス国鉄からの出向、VFBがD FBを後方支援しています(VFBとDFBメンバーの重複者も多い)。 法律的には一般の株式会社ですが決定的に違うのは配当金がないことで、株主特典は運賃1 割引のみ、つまり純粋な寄付に近い…と言えます。 収入は運賃収入、物品販売、スポンサー企業からの援助、及び一般寄付とのこと。 運賃はレアルプ〜グレッチュ間2等往復93スイスフラン(約13kmの往復で何と8650円!!) とのことです。 この保存鉄道(兼ローヌ氷河への観光鉄道)は株式会社形態ですが、ボランティアメンバーが 主体であることは先で述べた通りです。とはいえ専門知識を持った人間も必要なのでスイス国 鉄からの出向者1名が常駐し、蒸気機関車の運転には資格を持ったスイス国鉄やブリエンツロ ートホルン鉄道(スイスの蒸気観光鉄道、)の本職のメンバーが本業とは別にボランテイアと して活動しているようです。 (注:スイスフランは全て今年10月25日のレート、1スイスフラン93円で計算しました。) (Copyright by Y.Abe) (注)フルカ鉄道は、最急勾配110パーミルで、アプト式です。廃止前は電化されていました。 電化前のアプト式蒸気を世界各地から買い戻して蒸気で復活しました。