信越本線横川・軽井沢間補機無し運転の可能性について
◆『信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会報告書』の紹介
信越本線碓氷峠の鉄路廃止の動きに際し、碓氷峠の地元の碓氷郡松井田町では、1990年6月に『信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会』を発足させ横川・軽井沢間に適切な鉄道輸送方策に関する調査・研究を行いました。
委員会は学識経験者と松井田町関係者により構成されました。
【信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会メンバー】
委員長 高階勇輔 高崎経済大学教授 教務部長
委 員 青木栄一 東京学芸大学地理学科教授 理学博士
〃 石川弘道 高崎経済大学助教授
〃 内田武夫 松井田町助役
〃 大島登志彦 群馬工業高等専門学校講師 人文地理
〃 小西純一 信州大学工学部助教授 工学博士
〃 佐藤一雄 松井田町議会議長
〃 田島二郎 埼玉大学教授 工学博士
〃 中山孝 松井田町議会特別委員長
〃 西野寿章 高崎経済大学講師 地理学
〃 八木富男 日本鉄道OB会高崎地方本部長(碓氷線物語著者)
〃 上原収 松井田町企画課長
事務局 松井田町企画課
(敬称略、肩書きは1990年当時)
委員会は、約1年間活動して1991年6月に、
『信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会 平成2年度調査研究報告書』を発行しました。
報告書では、下記の4つのテーマが報告されています。
・信越本線横川・軽井沢間補機無し運転の可能性について
・利用者アンケート調査結果
・北陸新幹線開通後の新幹線輸送予測とその問題点
・在来線存続の意義と必要性
報告書の発行部数は少なく、現在では、確認できた所在先としては、国会図書館と安中市松井田町図書館のみです。松井田町図書館では、鍵の掛かった郷土資料室に保管され、申請により閲覧とコピーは可能ですが貸出し禁止になっています。
当時、JRが出してきた試算によると、碓氷峠の鉄路を存続させると年間10億円の赤字になり、赤字額が大きいことが碓氷峠廃線の根拠になっておりました。
しかし、JRの試算は、機関車に補機(EF63)を使用する条件での試算であり、最初から廃止ありきの断り見積のようなものであったと推測されます。(上記金額は、広報まついだの記事より引用)
それに対して、松井田町が立ち上げた『信越本線横川・軽井沢間鉄道輸送方策調査委員会』では、大きな経費を必要とする補機(EF63)機関車を使わない方式の可能性について研究が行われています。平成3年6月に発行された報告書では、補機無し運転が実現可能と結論付けています。
補機無し運転であれば、JRの出した試算のように赤字額が10億円にもなることはありません。委員会では、試算までは行ってませんが、おそらくJRの出した赤字金額よりも遙かに少ない赤字額(両県や沿線自治体で補填可能な範囲)で済むと推測されます。
しかしながら、当時は、そのまま碓氷峠に使用できる車両は無かったため、車両の改造や新規開発が必要でした。そのため、初期費用が、群馬県の試算によると130億円以上と見込まれ、小寺知事が鉄路存続を断念しました。
この報告書発行から6年後の1997年9月30日に
信越本線碓氷峠は廃線になりました。
このページでは、報告書のテーマから『信越本線横川・軽井沢間補機無し運転の可能性について』を掲載しています。
余談ですが、この報告書を見つけるのに苦労しました。
上の画像は、国会図書館の検索画面です。
国会図書館に在るのみで、県の図書館にも安中市図書館、松井田町図書館にも在りませんでした。
この報告書が発行されてから25年以上の歳月が流れ
松井田町が安中市と合併して安中市になってしまったため
当時の関係部署は無くなり、関係者も四散してしまいましたので見つける術もありません。
松井田図書館で話をしたら、国会図書館に行くしかありませんねとの回答でしたが、たまたま話を聞いていた別の職員が、人脈を使って市役所の色々な所に電話して探し出してくれました。
郷土資料の図書として登録され、申請すれば誰でも閲覧できるようになりました。先人の思いが籠もった貴重な資料が日の目を見られるようになり職員の人に感謝しております。
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バックグラウンドの写真; 碓氷第三橋梁(めがね橋)のアーチを経由して見た信越本線の碓氷川橋梁を渡る特急あさまとEF63