2000/3/19

 いわゆる、お役人(キャリア)の弊害・不正が報道されている。

 お役人(キャリア)と、我々庶民が出会う機会は少ない。報道だけで見るわけだから、悪いイメージばかりが付きまとう。
 同じ公務員でも市役所などにいくと、親切で感じのいい職員の方が接してくれる。私はあまり役所の公務員に悪いイメージを持っていない。いま、悪くいわれている警察官にしても子供ころ、よく遊んでくれたし、いやな思いをさせられたことはない。現場の公務員の方はいい人ばかり、というイメージだ。

 一回だけ、私はキャリアと呼ばれる人にあったことがある。X部省のお役人である。ある高級串揚げ屋に、会社の接待で出かけた。部長と、お得意さんと、私の部下である。まあ、接待し無難に楽しく過ごしていた。

 すると、カウンターの端のほうでやっている5人組みのグループがいた。
 そのグループは雰囲気が異常だ。1人のふんぞり返って、いかにも偉そうにしかめっつらしているスーツ姿の白髪の大柄の男。そして、それを取り囲こむように座っている4人の中年。かれらは、へつらうような笑顔を作り、その老人の話しにあいづちをうち、歯の浮くようなおべっか言葉を連発している。いまにも、揉み手しそうである。

 いくら接待でも異常なのは、そんなに卑屈な態度でおべっか口調で接待されたら、通常の会社員なら、いやになるはずだ。友達のような雰囲気でいい気持ちにさせるのが、通常の接待スタイルだ。それなのに、そのおっさんは、その周りの人間の卑屈さをそれが当たり前のように、タバコを悠然とくゆらせている。たいこもち顔負けだ。見ていて噴出しそうになった。まるで安手の小説の接待シーンか、マンガだ。
 やがて、愉しそうに話している部長とお得意さんの会話にわりこんできた。
 名刺を交換すると、なんとその男はX部省のXXXXXX課の課長。まわりのたいこもちは、いまをときめく超有名企業4社の部長だ。

 初対面の人間たちに、「君達は、なにものかね」と冗談でなく言う男。部長は、相手の肩書きをみて早速、いやー、お会いできて光栄です、とか言い出す。ふんぞりかえりは、初対面相手にも、店の人間にも、続く。お得意さんまで参加してのお役人大持ち上げ大会になってしまった。
 しかし、それにしても、あの態度は... おろかな庶民どもを俺が導いてやっているのだ、とでも思っているのだろうか。本などで、キャリアの悪弊をよく読むが、ここまでひどいのだろうか。

 突如、私の部下がさけんだ。「おれは役人は、大嫌いだ!無駄飯食いだ!なんにもわかってないくせしやがって、働かないで偉そうにしてやがる!」罵倒の連続である。酒癖が悪いのだが、それだけでなく、彼のSE経験で過去に役人となんかあったのだろう。私は慌てた。部長と私は一緒になって、そのお役人様のご機嫌をそこなわないように、謝りまくった。
 でもほんとは、私は気持ちよかった。
 帰り際、「こいつらの食うものにはマスター、毒をいれろ」と命令してお役人様は不機嫌そうなお顔でげっぷをして帰っていった。そのあとを、私達に「すいませんね」と頭をさげて、超有名企業の部長たちが続いた。

 キャリアとは1人しか会っていないが、それがこの男だったのだ。これが国の行政を仕切っているのだから、恐ろしくなる。
 もっと、謙虚に真摯に国のために働く、我々は公僕である、という紳士の立派なお役人様もいるぞ!という方は教えてください。この私は1人しか知らんので変なイメージがついてしまっているのです。

 ここまで書いて、もう一人、キャリアを思いついた。やはりX部省の役人であるが、ある教育組織の立ち上げパーティでの挨拶だ。「私はビルゲイツさんの本をよんで感動いたしました。本当に素晴らしい内容です。これから時代はこう変わっていくのだとわかりました。」彼は、ビルゲイツの熱狂的ファンらしく、延々賛辞のことばをつなげた。これが日本のキャリアのレベルなのか。