会議

 会社員の人であれば、会議ほど、うっとおしいものはないだろう。さあー会議だ!と喜んで参加する人も少ないと思う。あの人会議スキだなーと思うけど、聞いて見るとその人も実はうんざりしているものだ。

 会社の風土で、短時間に会議を終わらせるのであればまだましなほうで、気の遠くなるような長時間の会議もある。回数も実に多い。私も、午前中、会議用資料を作成しつづけ、午後はずーっと会議という生活を延々おくっていた管理職を知っている。つまり仕事が会議だというわけだ。そうでなくても、多くの会社員が労働時間の多くを会議ですごしている。外資系などはまだ会議時間は短いようだ。個人の業務が非常に明確だからだろう。

 なんで会議は長くなってしまうのだろうか。この問題はビジネスにおける解決されない永遠のテーマである。古来多くの人が短縮しようとしているが、挫折しているし、いまだに効率的な手法は見出されていない。せいぜい会議室に「会議を短くしましょう」という張り紙をしたり、通達する程度だ。

 会議が長いので、問題点を解決する作業を行う時間が足りなくなる。ひどいときには0になってしまう。まだ、時間をかけて会議の成果がでればいいが、多くの場合、不毛の論議でおわるのが、落ちである。長時間の会議がつづくと、社員は疲労する。ましてや、結果が出ないともっと絶望する。

 会議に出ていても、内職していたり、違うことを考えていたり、居眠りをしている社員が続出する。腕くんで、目をあけたまま、居眠りする達人も現れる。

 会議が多い会社はどうみても、生産性が悪い。会議用資料を作って会議だけをやっている人が利益を生むはずが絶対にないのである。小さな会社では会議は少ない。後述する私の考えでの原因もあるが、そもそも小さな会社でそんなことをやっていたら、会社はすぐに低い生産性、利益性でつぶれてしまう。

 なんでこんなに会議が長いのかを若いことによく考えた。会議が長くなる原因は、1つの会議に実に多くの人が参加し、その会議で多くのテーマが同時に検討されるからではないかと若い頃に思ったのである。それにテーマにどうみても関係しない人まで出席している。

 そこで会議後に、常務に質問した。「なぜ、この会議はこんなに長いのですか?このテーマは全員が参加するべきものではないし、XXXさんたちには関係ないはずです。なぜ、こんなに多くの人が参加しているのですか。これでは長時間になるはずです」

 回答は「伊藤くん。会議は何かのアイデアを出し合って、解決するためのものだけじゃあないんだよ。もっと多くの目的があるんだ。1つには、あとで文句を言わせないため、という理由もあるんだよ」であった。

 つまり、日本企業では、「きいてないよー」という思考発想文化がある。自分に相談なく進むことを大変いやがる。たとえ、関係なくてもそうである。きいていたとしても、何もやってくれるわけではないが、ともかく、事前にきいていないとイヤなのである。事情が変わって、その「きいてない」人に協力を依頼することになろうものなら、「きいてないぞ、おれは。絶対に協力しない」となる。だから根回しが必要になり、決定が大変遅いものになるのだが。

 また、常務がいうのは、「俺はそう思わないのに勝手に決められた」と後でいう人間が多いからだそうである。決定する際に、参加さえさせれば、何も討議中に発言しないくせに、決定に文句をいわなくなるというのである。確かに身に覚えがある。上で決まったことを連絡すると必ず、それには問題がある、これこれを考えていない、と文句をいう人がいた。私は、それだけ問題意識があるのだから、ぜひ、上の会議に参加してほしいと思った。そして参加させたら、なんと、一言も発言しないのである。私が「XXくん、こういうのでどうかな?」と聞くと、「ええ、それでいいです」というのである。自分が参加した決定には、もう彼は文句をいわなかった。

 この2つの目的が会議に実は秘められているというのだ。なにかを決定するのだけが目的ではなく「きいてないよー、をなくす」「自分が決定したと認識させ協力させる」も含まれているというわけだ。

 だから、日本式会議の長時間化をふせぐには、「きいてないよー」文化をまずなくす。その時点で関係していないことについて、きいてないのがあたりまえと、しっかりと認識させること。関係した段階で、あらためて、きけばいいのである。ある程度問題が発生はするけれども、そうでもなければ解決しない。「きいてないよー」を事前に厳格に全てなくそうとするから、予防的にあらゆる人間を参加させなければならなくなるのである。皮肉なことに、「きいてないよー」を連発するやつに限って「会議がなんでこんなに多いんだ!」というから面白いものである。でも実際には、管理職、経営者にかぎって「きいてないよー」文化そのものだから、直すのは無理なのである。

 そして、社員が「その会議に自分が参加して、ほんとに、決定内容が違うものになったのか」を考える必要があるだろう。へんな自意識をなくすことである。

 だから、仕事の分担が明確な外資では会議が少ないのも理解できる。

 ここまで読んで「きいてないよー」は正しい、会議で事前にあらゆる部署におうかがいを立てるのは当然だ、という経営者の人がいたら、会議短縮など、到底、絶対、不可能です。いままでとおりに、会議室をたくさんつくって、1日中会議してよろこんでください。短縮は無理だと思いますです。