映画鑑賞(名画)

 名画といっても、一般的に言われるような名画ではありません。私の価値観の範囲で勝手に決めた名画です。SF,ホラー、一般映画の3つに分類して書きます。

SF映画

 監督では、デビッド・クローネンバーグ、ジョンカーペンターが好きです。

1.デビッドクローネンバーグ「スキャナーズ」

 基本的に彼の映画は「全て」面白い。ザ・フライで有名になったが、他の映画も「ブルート」「シーバース」など傑作多し。

 超能力ものなのだが、超能力者が持つ悲しみなどを描くと同時に、アクション、スリルいっぱいの映画。マイケルアイアンサイド演じる、表情かえずに残酷な計画を進める悪役が光っている。超能力を出す瞬間のシーンが、いちいち、ドキドキハラハラさせる。

 好きなシーン。主人公が電話回線を通じて公衆電話から、大型コンピュータに侵入する。データを取り出している最中に、コンピュータを悪役たちがシャットダウンさせる。
 そのため激痛を感じた主人公が絶叫に似た悲鳴をあげると、電話ボックス、電話線、コンピュータなどが火を噴き、爆発する。迫力がある。

2.ジョンカーペンター「スターマン」

 アカデミー賞候補にまでなった傑作だが、日本では無視されたに近い興行成績におわった。

 最愛の夫をなくし悲しみにくれる女性のもとに、人類と友好をもとめる宇宙生命がやってくる。生命形態が異なるために、コミュニケーションをとるために毛髪のDNAから、彼そのものとして再生する。地球外生命に対する人類の醜いエゴまるだしの追跡がはじまる。

 ラブロマンスが主だが、その中で彼が発する人類への問いかけがするどい。ラストシーンのヒロインがただ見上げているシーンが記憶に残る。

3.ジェームス・キャメロン「アビス 完全版」

 監督は「殺人魚フライングキラー」「ターミネーター」「エイリアン2」「タイタニック」のキャメロン。深海で繰り広げられる未知との遭遇もの、と思いこんで映画館にいった。
 ところが、実際には、その内容は人間ドラマであり、夫婦愛であり、壮大な人類愛のドラマであった。
 特に、あの有名な蘇生術のシーンでは感動のあまり、ぽろぽろ泣いてしまった。感動させてくれるシーンである。ポセイドンアドベンチャーで、おばあちゃんが死ぬシーンと同じくらいに泣けました。
 夫婦ってこんなに素晴らしいものなのか!深い愛に基づくものなのか、と感激しました。
 なお、この映画は「完全版」でなければだめです。完全版を見て、はじめて、この映画の全体像が見えるのです。完全版を見ていない方はぜひ見直してください。ああ、こういう意味だったのか、と思われるはずです。
 この映画の次に、タイタニックを作ったのですが、その前にアビスを見ていたので、すごい映画になるだろうと確信していました。タイタニックでラストシーン(老婆のベッド脇の写真、深海のタイタニック、みんなに祝福されてあの階段の時計の場所で抱擁するシーン)を見て、キャメロンらしいな、と感じました。

ホラー映画

 もともと、顔がホラー映画っていう説もありますが、怖い映画(ただの心霊現象ものオカルトもの残虐実写ものはNG)が大好きです。最近はホラースプラッター系の映画がすくなく、残念です。一時流行したんですがねー。好きな映画監督は、ダリオアルジェント、ルチオフルチ、ジョンカーペンターなどです。

1.ルチオフルチ「地獄の門」

 もう、ファンが狂喜するホラースプラッター映画。歴史に残る傑作と言うマニアは多い。
 フルチは、子供に死ぬほどの恐怖を味わせるシーンが好きで、ビヨンドという映画でも同様なシーンがある。また、記憶に残る驚愕のシーンも。ドリルで生きたままコメカミをえぐられる、手で頭蓋骨ごと脳味噌をつかみとられる、そして、口から全ての内臓を吐き出してしまうシーン。血まみれのゾンビと化した姉に食われる両親、追いかけられる弟。

 これだけ、残虐・スプラッターに徹底した映画はないです。なんでも一番というのは大したものです。徹底さで感動し芸術性を感じます。

 この監督は他に「サンゲリア」「墓地裏の家」「ビヨンド」といった眩暈がしそうな映画をつくっています。どれもエグイです。ほんとに気持ち悪いです。

2.ダリオアルジェント「フェノミナ」

 美しいホラー映画を作りつづける監督。サスペリアでは残虐だが、同時に美しい映像を見せ、更にイタリアのロックグループ「ゴブリン」を起用し、恐怖をもりあげた。美と残虐が見事に融合した映画が、このフェノミナで、主人公を若きジェニファーコネリーが演じている。

 スイスの美しい森、湖、その美しい自然と、美少女。これを舞台に猟奇殺人事件が発生する..対比して、頭がちょんぎるわ、うじの池に主人公は落ちるわ...いやはや

 この映画を見終わると、美しい自然が頭から離れず「スイスに行ってみたい」と思うのは私だけだろうか。

3.監督わすれた...「ゾンビ復活」

 昔のホラー映画ブームの火付け役になったのが、確かロメロ監督の「ゾンビ」だったと記憶している。その後、数え切れないほどのゾンビ映画が作成された。そもそも、少し前まで家族た友人だった人間が何も言わずに食いついてくるというのはシチュエーションとして恐い。

 やたら、ゾンビものを見てきた私が、この「追いかけられる」恐怖を徹底的に追求した映画だと思うのが、この映画だ。

 状況説明や人間描写などどうでもいい。ただ、映画のはじめから終わりまで、主人公たちが、ひたずらゾンビの大群においかけられる。同様の映画には「ゾンビ3」があるが、「ゾンビ復活」のほうが上である。

 ラストシーンは、もうひどい。どうヒドイかはぜひ、自分でみていただきたい。ひどいんだから。

一般映画

 SF,ホラー映画以外の映画です。

1.自転車泥棒

 「禁じられた遊び」という映画のラストシーンで、主人公の少女が泣きながら、走っていくシーンがあります。当然、これは映画なのですから演技のはずです。でも、この映画を最初から見て、このシーンにたどりつくと、どうみても、このシーンの少女の振る舞いは演技には見えません。今、ビデオで再度見直しても、演技にはまったく見えません。だから、何度見ても、このシーンで感動をしてしまうのです。

 最近はビール片手に、これは映画だよ、楽しむために時間を今、俺はとって鑑賞しているんだ、と覚めた頭で、映画をみていますが、昔のこの映画などを見ると、完全に現実と思い込んでしまいます。感情移入が完璧に進むと、主人公と自分が完全に約2時間、同化します。このためには、ストーリにも、演出にも、演技にも完全なリアリティが必要です。

 このころ白黒画面の映画の時代には、リアリティに優れた映画が多いのですね。この自転車泥棒というイタリア映画もその1つです。小学生のころ、TVで見たのですが、感性がもっとも強い時代に見ましたので、強い印象を受けました。

 この映画でも、子役の男の子が完璧なリアリティの神がかり的演技をみせてくれます。貧しいけど、愛情のあふれた家庭の子と父親が主人公です。貧しいがため、現代社会のように複雑なややこしい、ごちゃごちゃした人間関係は存在しません。ただ、父親は家庭のために、仕事をし、子供はそんな父親を愛しています。思わず、この2人に頑張れと声をかけたくなります。

 この2人に、残酷な運命の仕打ちがこれでもか、これでもかと襲い掛かります。決して極悪人がほかにいるわけではありません。ただ、社会が残酷なのです。みんな一生懸命生きているだけなのですが、その結果が残酷な仕打ちというわけなのです。

 最後に、父親は自分が受けた仕打ちを、他人にとうとう、自らしてしまいます。おそらく、ここまで見た人は彼を責めることはできないはずです。そのように観客が感じるように監督は演出したはずです。しかし、彼はつかまってしまいます。つかまってしまうのは、そんなに観客は驚かないでしょう.でも、この監督は更に残酷な結末を用意したのです。それは子供に見られてしまうということでした。これほどの残酷な結末があるでしょうか。

 子供のおかげで父はゆるされ、呆然と歩き出します。いや呆然ではないのでしょう。父の頭の中には、入りきれないほどのいろんなものが渦まいてしまっているのでしょう。それは屈辱であり、後悔であり、苦悩であり、罪悪感であり、そして究極の絶望感だと思われます。それが、一切のせりふなしで、見ているものに伝わってきます。

 そして、子供は父の横で、父と同様に絶望を感じながら、泣きながら父を仰ぎ見て歩いています。もし、この映画のラストが、「父親が警察につれていかれるシーン」または「子供がなにがおきたのかと呆然としているシーン」で終わるのなら、こんな傑作にはならなかったのでしょう。父親が、声すらだせないまま押し殺して泣くというシーンで終わります。

 「映画の中の登場人物と完全に同化できるリアリティをもつ映画」というのは、いうまでもなく、現代では生まれておりません。所詮映画だと感覚が伝えてきてしまいます。過去の名作をみるしかないのです。