インフラ

 ADSLの大手の東京メタリック通信が、ソフトバンクの傘下に入ることになりました。資金面で苦しくなったのがその原因といわれています。

 このようなインフラ企業は本当に大変です。ADSLのみならず、電話、インターネット、携帯などのインフラ企業は本当にお金がかかります。まず、設備投資ですが、サービス区域全体に、高価なハイテク機材を配置しなければなりません。これは量産されれば安くはなりますが、なんせ、数が必要です。総額は大変です。もちろん、技術革新が早いので、すぐに陳腐化し新型に入れ替えなけれななりません。年がら年中設備投資です。通常は設備投資が一巡して、やれやれですが、ハイテクインフラ企業はそうはいきません。これは買うだけではなく、当然、どこかに設置しなければなりませんので、工事費用、設置場所の費用が莫大になります。

 また、新しいインフラでは、まだ世間に認知されていませんので、宣伝も必要ですし、営業活動も必須です。これは馬鹿になりません。ラーメンを売るのと違って、ほっといても誰も買いにきてくれません。何がいいのか、何がメリットなのかを懇々と説明し、消費者に理解させなければならないのです。

 また、東京メタリック通信のように、プロバイダも兼務している場合には、全ての宣伝を自分でやらねばなりません。相手は一般の人です。いわばマスです。マス相手の宣伝はいうまでもなく、莫大なお金がかかります。

 更に人です。先端のハイテクを扱う人間が大量に必要ですので、これはえらいことです。このあたりの分野はいまだに人は余っていません。給料も上がる一方なのです。ですから、人件費は通常の企業よりも数倍かかります。

 これだけお金かかりますが、ではどれだけお金がはいってくるかというと、これが大変厳しいのです。先端の話題の分野ですから、実に多くの企業がそれっとばかりに参入してきます。競争が激しくなり、営業戦争も激化します。そして、価格に強い値下げ圧力がくわわります。価格がさがれば利益はさがります。あとは、どう競争が続くかというと、我慢くらべです。どっちが最後まで資金面で耐えられるかということです。

 このように、大変厳しいシビアな世界ですのでインフラを扱う分野に参入する際には、安易な希望的観測、イケイケおやじギャル的発想ではいずれ破綻します。たとえ、その分野で生き残っても、その分野自体がいつまでも続くとは限りません。敵は分野内だけでなく、他の分野にもいるわけです。ともかく金がないと、話しになりません。

 さて、BSデジタル放送もえらいことになってるそうです。当初の予定より、大幅に普及が遅れています。いや、遅れているどころの騒ぎではなく、やばい状態といっていいでしょう。視聴者が増えてくれないのです。視聴者が増えないと、スポンサーは金は出しません。大変なことになります。ちなみにお金は莫大な額かかっています。緊急事態なのです。

 でも、こちらもインフラですが、お金の問題が本質ではないようです。ゲームの世界では新しいゲーム機を出すときに、看板ゲーム、キラーソフトといわれるものを出すのが普通です。「あ、あのゲームを遊びたいなあ、だから、ゲーム機を買おう」となるわけです。ファイナルファンタジーのおかげで、PSは任天堂に勝利しましたし、ポケモンのおかげでGBはあれだけ普及しました。

 だから「絶対にあのゲームをやりたい!」と思わせるゲームを、ゲーム機と同時に開発し、宣伝しなければ普及なんかしません。ゲーム業界ではそれが常識になってます。パナソニックの3DOというゲーム機は、多くのいいゲームはありましたが、この「キラーソフト」がなかったのです。ゲーム機をいくら、いいものにしても、安くしても、宣伝してもほとんど効果はないのです。

 しかし、BSデジタルの関係者には、このゲーム業界の常識が理解できていないようです。消費者は別にBSデジタルの機械がほしいのではありません。おもしろい番組がみたい、以外の欲望はないのです。

 BSデジタルの宣伝では、やれ、画質がきれいだ、相方向性だと叫んでいますが、そんなものは消費者には関係ありません。番組しか興味ないのです。DVDはきれいだけで売れたのではなく、マトリクス、アルマゲドンというキラーソフトに運良くめぐり合えたのです。(最近は、キラーソフトもなくなってきており、DVDも厳しくなっているようですが)双方向だって、双方向だから、ものすごく面白い!という番組が作れなければ、だたのしゃれです。オンラインショッピングとアンケート、懸賞だけでは情けないです。

 んじゃ、BSデジタルというインフラを普及させるための「キラーソフト」はなんなの?といっても何も思い浮かびません。「あー、どうしても、この番組をみたい!!!でも、見るためには、BSデジタルがいるの?じゃ、買います」となるはずです。でも番組は、みんな今までの民放などが作っているわけで、目新しいものではないのです。こんなものは地上波で十分です。

 スカパー、CATVなどは、各個人ごとに別々の「キラーソフト」があるだろう、(麻雀好きには麻雀番組がキラーソフト)という発想です。ですから、存在意義があります。

 BSデジタル陣営も今後、徹底的に普及活動に力をいれるようですが、宣伝費に金かけるんだったら、その金を全部、BSでしか楽しめないキラー番組の制作費にぶちこんだほうがましです。早く、そういった胸をときめかしてくれるような番組が現れることを望みます。でも、きっと宣伝が足りないからだとなるのでしょう。

 今の状態では私はBSデジタルを買おうとする気など全然おきません。新らし物はほとんどなんでも買ってしまう好きの私が買う気がおきないのですから、普通の人は絶対に買いません。