派閥

 人間が集団でなにかをやろうとすると、必ず派閥ができます。3人で何か仕事をやろうとします。すると、2人と1人になります。最初3人は仲良しの度合いは同じでも、そのうち、2人が特に仲良くなり1人はおいてけぼりになります。

 5人となればいろんなパターンがありますけど、やはり、派閥ができます。3人と2人の2グループになることもありますし、1人と4人、1人と1人と3人とかにもなります。もっと大人数になると、更に多くのパターンがありますし、入れ子にもなります。100人おて、30人と70人で大派閥をつくってるけど、そのうちの70人はその中でまた30と40の小派閥をくんだりします。

 今、派閥と聞いて、あ、自民党のことだな、と思ったでしょうが、そうではありません。人間が集団でなにかをやると、必ず派閥ができるのです。私達もそうです。学校でも、社会でも、会社でも、遊び仲間でも...あなたの身の回りをみてください。必ず派閥をつくっているはずです。だれそれは、だれだれと仲がいい、だれの集団と誰の集団は仲がわるいとか。5人の社会でも100人の社会でも同じです。

 10人いて、9と1なんて場合もあります。この場合、1人は「いじめ」られるような傾向にあります。面白いのですが、この1人がいなくなると、9人の中でまた8と1になったりして新しい「いじめられ役」ができたりします。

 というか、人間は派閥を作らないと何もできないのかも知れません。一枚岩の集団なんて、存在しません。それは単に締め付けているだけです。人間は本来、1人1人が違うので、集団で行動しようとすると、絶対に無理が生じます。摩擦が生じます。ウニとウニが相撲をしているようなものです。そこで、派閥を組んでその摩擦をやわらげようとするのだと思います。1対多の摩擦よりも、1対1のほうが少ないからです。派閥同士が衝突する、と考えることで、個人間の摩擦はあまり感じなくなるわけです。

 ある外国SF作家の素晴らしい小説があり、冷戦で全世界が緊張して、今にも破滅しそうな時に、西側と東側のコンピュータが共同して、架空の侵略的異星人をでっちあげ、人類をひとつにさせ、戦争は回避されるというのがありました。これなどは、派閥の面白さで、いがみあっている派閥同士も、更に大きな派閥の脅威にさらされると、仲良くなってしまいます。

 人間はグループを作ってしまい、必ずいがみあったり、いじめをしてしまうんだ、ということを自覚すれば少しは、事態も改善するかもしれません。この点についてはおサルの集団から、私達は何も進化していません。

 問題は、派閥ができてしまうことではなく、派閥がよくない効果を発揮することを抑えればいいのです。例をいうと、自民党では派閥の弊害で、人材の効果的配置ができない、自由に個人の意思を表明できない、自分の派閥に利益誘導してしまう、などをあげられていますが、これらの個々の問題を、絶対に発生させないように、仕組みを作っていくべきなのです。派閥をなくするというのは、私個人は無理だと思います。どうしても人間は群れてしまうのです。一度解消しても、また時間がたてば、自然発生的に派閥は再生します。それよりも、どうすれば、利益誘導できないようにするか、などを集中して検討するべきなのです。

 「自民党は派閥同士でいがみあってしょうがないねえ」という前に、みなさん自分たちの身の回りをご覧になってください。ちかくで、派閥の弊害がたくさん、観察できるでしょう。これらをなくしていくべきなのです。