整形

 私は現在、43歳です。いわゆる中年といっていいでしょう。体つきも、顔もまさにそれらしくなってきました。

 髪の毛は、生え際前線が着実に北上してきており、視力もだいぶ落ちました。老眼開始かもしれません。腹も脂肪分が発達し、前にせり出してきています。Tシャツは似合わなくなり、スーツがますます似合うようになりました。鏡でみると、つるつるだった皮膚も、でこぼこになっており、皺やしみなども目立ちます。

 あー、年齢に合ったルックスになってきたなあ、と満足です。43歳であれば、このような特徴が現れるのが「当たりまえ」なのです。人のことですと、そう冷静に思えますが、自分のことだと、それが認識できません。この「あたりまえ」に無駄な抵抗を試みます。

 今、若い女性だけでなく、男性にも、かなりお年を召した女性にも美容整形などが流行のようです。しかし、実は「美しくなりたい」というだけでなく、「若くなりたい」という欲求から、希望する人が多いのではないでしょうか。

 美しくなりたいというのは、当たりまえのことでしょう。もっとも、美しくなりたいという心、努力がなくなったら、その人は終わりでしょう。別に美容整形に限らず、きれいになりたいのは、誰でも同じです。努力すれば、その人は美しくなれます。運動してダイエットすれば、スマートになるし、センスを磨いて、いいファッションに身をつつんでいけばいいです。お化粧をすれば、より女性の美しさは強調されるでしょう。どんどんみんなで美しくなるように頑張りましょう。お金をかけなくても、きちんと努力すればいくらでも美しくなれます。

 でも、老いに抵抗するのは、無駄としか思えません。しかし、世を挙げて「老いへの抵抗」をはじめています。「より美しくなりたい」というのとは似ているようですが、まーーーーーーたく別なものだと思います。美しくなるのは、山を上るみたいなもので、努力で前に進めます。でも、老いていくのは、時の流れなのですから、絶対に無理なのです。じたばたしても、対馬海流に逆らって泳いでいるようなものです。

 おばさんでも、きれいなおばさんがいます。いつも、身奇麗にしており、おしゃれです。そして、話し方も、振る舞いも美しいです。きたないおばさんもいます。頭ばさばさです。服装もまったくかまっていません。やることなすこと、欲望剥き出しです。よく列に割り込みます。2人とも年をとっているのは、同じですが、美しさに大差があるようです。

 おじさんも(わたしもそうですが)素敵な紳士と、きたないだけのオヤジがいます。中年でも土日のカジュアルファッションが実にかっこよく、思慮分別のあるまさに紳士です。みていてほれぼれします。対して、もう、おしゃれなど、忘れてしまった人もいます。鼻毛のびそうだい、髪ばさばさ、鼻くそを人前で、平気でほじくります。髪の毛には、フケが沢山ついています。(書いていて自分でつらいですか...)身振りから、傲慢さが見え隠れします。

 若者でも、みていてほれぼれする、きれいな若者(鬼に金棒状態ですね)と、きたない若者がいます。若さがなくなったらどうなっちゃうのか心配になります。(例:道の地べたに、べったり座っている若者集団は、公園の地べたに座り込むジイさんバアさん集団になります。次の世代の若者達に、地べた老人狩り、とか、されないといいのですが)

 ですから、人間には座標軸が2つあって、若いー老い、と、美しいーきたない、が90度で交差しています。そして1つは、努力によって座標軸上を移動できます。でも、1つは必ず一方向に進むのです。

 この老いの流れに逆らう方向で努力するとどうなるのでしょうか。

 まず、皺とりをします。確かに、顔の皮膚をひっぱれば、皺は減ります。でも、ひっぱってない部分には皺が残ります。顔全体を皺とりしても、裸になったら。びっくりです。全身をやればいいのですが、それは無理です。仮に、皺を全部とっても、肌の表面は老化します。腹の脂肪を吸引しても、お尻のたるみはどうしようもないです。マッチしません。たとえ、完璧に老化の兆候を削除しても、だめです。なぜなら、いろんな部分と矛盾が見えてくるからです。

 顔が皺がより、お年がわかるのに、髪の毛は真っ黒でふさふさです。手は老化しているのに、顔の皮膚だけ不自然につるつるで、はちきれんばかりです。声は年寄りになっていても、服装はまるで、小学生のファッションです。

 ですから、一部を若返らせれば、他の処理をしていない部分とのアンマッチがおきてしまうのです。このアンマッチは、本人よりも、他人のほうが強く感じるようです。自分は自身満々ですが、周囲の人間が唖然とすることさえあります。

 また、若返りに成功しても、成功した瞬間から、もう次の老化が進んでいます。いや、若返り処理中に、はじまっているといっていいでしょう。

 そんな努力よりも、年相応を自覚し、その年齢に応じた美しさを求めてはいかがでしょうか。このHPを見ている私の友人もおそらく、おなじように中年の傾向が現れて、自覚しているでしょう。じたばたせず、美しい中年をともに目指しましょう。