いっしょ

 会社の中で貴方が一定のポストを与えられたとしましょう。必ず存在するのが「貴方を監視する人」です。こいつ、きちんと仕事をしているのか?やることやってるのか?インチキしてサボってないかと見張るわけです。通常は上司となります。

 更に貴方が不正をして会社のお金をちょろまかした、としましょう。それがバレて貴方は頭を下げます。上司はかんかんです。優しくて一度は許してくれたとしましょう。でも、なんとか、こいつが2度とごまかせないように手は打ちますよね。一度、信頼を裏切ってごまかしたのですから、許すにしても、上司は、チェックを厳しくするし、ごまかせないような仕組みを考えて、それに変えるでしょう。

 そして、貴方を評価して報酬を決定する人がいます。これも上司でしょう。どんな仕事をしたのか、などを考えて、来期の報酬を決定します。このように、社会では、その人の動きをいろんな面から、監視しているわけです。これが通常の社会の常識です。

 でも、こうなったらどうなりますか?貴方の仕事をチェックするのは、貴方とします。サボってないか、業績はあがっているかを自分で判断します。誰も監視しないのです。そして、貴方の評価をして、報酬を決定するのは、貴方自身とします。自分で自分の評価を決定します。また、インチキして会社から非難されても、再犯をどう防ぐかは自分で考えろ、となったら。

 つまり、通常はその本人以外の人がやらなければならない、今まで書いた全ての行為を本人がやるようにするのです。これで、この人の仕事はうまくいくでしょうか?絶対にいかないと思います。人間は見てなきゃ、サボろうとしますし、金をごまかそうとしますし、自分の報酬はあげようとしますし、...

 これは誰でもそうですし、そう思うではありませんか。業務を行う人間と、それを監視する人間がどうしても別に必要です。いっしょにしてはなりません。

 でも、社会の多くの分野でいっしょになっているものがあります。

 外務省で、不正に税金を使い込んでいる人間がいました。つまり、信頼をうらぎったわけですよね。んで、再発防止策をたてます。さて、誰が再発防止策を検討しているのでしょうか? なんと、外務省の人です。信じられないけど、その方向ですすんでいます。外務省の人間が不正をしないような、ごまかせないような策を外務省の人間がきめているのです。まともな策ができるのでしょうか?

 もともと、例の不正蓄財の人は、機密費についてはチェックしている人がいなかったのです。つまり自分がチェックすることになっているわけです。

 国会議員の人の多くは、1ヶ月100万円の通信なんとか費をもらっているそうです。このなんとか費は、バブル崩壊してから、増額されています。この国会議員がもらえる費用の増額を提案して決めたのは誰でしょうか?なんと提案したのも、決定するのも国会議員です。そのほかにも国会議員の数多くの特権が国会の全会一致で決まっているそうです。自分が入手できるお金を自分で決定できるという素晴らしい制度です。

 バブル崩壊でいやというほど、金融界で不祥事が起き、これをどう今後改善していくかという多くの対策会議が開かれました。でもそのメンバのほとんどが、大蔵、日銀、銀行の関係者、銀行出身の教授、評論家っていうのは大笑いしちゃいました。抜本的対策がこれでできるのでしょうか?

 他にも、不正が発見されて、その防止策を本人たちが作って、これで大丈夫といっているのは歴史にいくらでもありますし、自分たちの報酬や、待遇を自分達で決めるなどは日本では多く行われています。

 自分で自分を律し、自分で自分の不正を監視し、自分で自分の評価を正しく行い、自分で自分の正当な待遇を決定する、このようなやり方は、明治時代の謹厳実直な自己の欲望を自制できる人間には通用したのかも知れませんが、現代人には到底むりです。そりゃムチャです。

 どのような人でも、監視評価は別な人が行い、報酬もきめるべきです。不正が起きたときの対策も第三者が立てるべきです。