2001/5/19 セガ様へ

 マルチプラットフォーム戦略への転換、株主としてもホッといたしました。私はセガ様のゲームがいつまでも遊べればOKなので、勇気ある撤退をして会社を存続させてくれたことに感謝したいと思います。これからは、買ってから全然使われていないPS2の上でも、セガ様のゲームがはしることになると思うとうれしくなります。

 あ、ところで、「ファンタシースターオンライン」の日本ゲーム大賞の受賞、おめでとうございます。HPでもいち早く賞賛記事を書いていた私としても実に鼻が高いです。しかも、ドラクエ、FF発売年という強豪ぞろいの中、それらに競り勝って、DCのゲームが受賞したというところもすごい。ゲーム大賞審査員の慧眼に敬意を表したいです。

 さて、マルチプラットフォームになったことで、ゲームの売上は伸びていくでしょう。もう、売れるハードの上で、売れるゲームを自由に作ることができるわけです。今、ソフト部隊の皆様も、希望と期待でどきどきして開発されておられることでしょう。

 世間の評価も、セガの開発力を高く評価しており、アナリストなどにも好意的にとらえられています。

 でも、いくつかの懸念事項がありますので、それを生意気にも書かせていただきます。

1.開発パワーの分散

 今までは、DC用だけを念頭において考えてくればよかったわけです。でも、今後は売上を伸ばすために、1つのソフトを多くのプラットフォーム用に開発しようとされるかも知れません。もちろん、プログラム構成も、移植が容易に行えるようなものにされることでしょう。それによって、1つのソフトを開発すれば、それを多機種に移植し、売上を伸ばすことができると思われるでしょう。

 でも、その労力が不安です。DC用にあたらしい斬新なソフトを開発する労力を100としましょう。4機種で動かすようにするためには、100+A×3の労力が必要でしょう。さあ、このAの労力がどれだけかということになります。少なめに見積もっては失敗します。テスト工程などがかさみ、想像以上にAの値はでかいものになる傾向があります。また、機種展開のときに、完全に同じ物でいいわけではなく、機種ごとの個性も少しださざるをえません。

 セガのゲームにいいものが多い理由に、「すべての開発パワーを1機種に絞ってこれたから」というのがあるでしょう。会社の全部の力を集中できたのです。ゲーム内容そのもの、オリジナル性に注力できたのです。

 でも多機種展開では、会社のパワーのうち、かなりの部分を、多機種展開のために裂かなければなりません。ですから、今までと同じようなやり方はできなくなります。しかも、機種展開の時の作業は、ややクリエイティブとはいえない面があります。どきどきしながら仕事するという楽しみもよわくなります。

 また、プログラマにしてみれば、今までDCの開発環境、特性だけを知っていればOKだったのに、多くの開発環境、特性を知っていなければなりません。勉強も大変です。

 つまり、多くの機種に展開することで、結局、会社のパワーがさかれてしまい、従来のようなゲーム内容のすぐれたものを連打するということができなくなる恐れがあります。

 また、多くの機種に展開すれば本当に、がっぽがっぽ売れるのでしょうか。私の友人を見ると、今のゲームファンは以下のような2つの層にわかれます。「一番売れている機種を1つもっている人」「全部持っている人」全部もっている人は、その機種ごとに同じゲームを買うわけではありません。

 ですから、できるだけ、多くの機種に展開する、は止めていただいて、もっともそのゲームの内容にふさわしい機種を1つ選択し、その上でのみ開発したほうがいいと思います。そうすれば、ゲーム内容の充実にパワーを集中できるし、開発のコストパフォーマンスはあがると思います。

 今のところ、まさにセガ様はそのとおりになっているようで、PSOはGAMECUBEとか、1作品1機種という方向のようですね。ほっとしました。このまま、ぜひ行ってください。反対に1作品多機種というメーカも多いですが。ちなみに、ENIXは、この1作品1機種という哲学のようですね。

2.DC版の他機種への移植

 DCでいいソフトといわれたけど、DCが売れていなかったので、ソフトもうれなかった。だから、他機種に展開すれば、再度売れる...これは確実に間違いです。ほとんど売れないでしょう。

 他機種には、やはり、新規にソフトを開発してほしいと思います。それは、DC版のソフトをすでにもっている人は、ほとんど買わないからです。他の機種の出荷台数が多くても、そのうちの結構な数の人は、DCも持っています。ですから、はじめから、購入可能性のある台数を割り引いて考える必要があります。

 DC台数を100、A機種を400台とします。DCで10うれたので、Aで40売れるということはなく、400−100=300台がベースとなり、30うれそうだとなります。しかも、DCのそのゲームに興味を持った人の多くは、DCを買っているでしょうから、残りの300台のオーナもそのゲームを面白いと思わない可能性が強いです。

ということで、結論としては、「今後も新しいゲームの新規開発のみに注力する。多くのマシンに開発する必要はなく、もっとも適した機種1つに開発するべき」ということになるかと思われます。 ちょこっとおまけを付けて他の機種でも同じゲームを出す、というのはよく失敗しています。

追伸:

 ところで、かつてのライバルSCEですが、最近、どうしてこんなに動きが遅くなったのでしょうか。今までの超迅速、的確な動きはどうしてしまったのでしょうか?いまさら、提携話しをガンガンは発表していますが、どうもゲームファンにしてみれば、場違いな感じを受けます。その割には、ネットワークゲームの展開はいまだに、ほんのわずかしか、はじまっていないし、ネットとの接続での可能性も形になって私たちに提示されていません。

 あいかわらず、ゲームに購買意欲を強くそそるものがなく、最近ではPS2用に巨額の開発投資をしたゲームメーカの悲鳴がよく報道されるようになりました。また、決算発表でも、数字となってでてくるようです。こちらの充実のほうに、早く手をうってほしいものです。ともかく、PS2はゲームマシンとしてほとんどの人は買っているのですから、本道のゲームをまずきちんとしてほしい。XBOXの意識で、間違った方向に進んでいるような気もするのですが。

 XBOXのほうは、ハードスペックは高いため、原価が大変高くなり、売るたびに赤字になるのではないか、といわれています。まあ、どのハードメーカも似たり寄ったりですが。赤字になった分は、XBOXの世界で取り返してくださいね。頼むから、XBOXの赤字を、Windowsの価格に転嫁しないでくださいね。PC世界の税金をこれ以上あげないように。

 ゲームボーイアドバンスですが、さすがに任天堂も柱です。まさにスーファミがポケットに入ったという感覚です。GB,GBC用のソフトも基本的に動作しますので、安心して買えます。セガ様も、チューチューロケット以外にもどんどんソフトを作ってください。買います。