2000/10/22 涙

 若乃花の断髪式のドキュメンタリーをみました。お母さんの憲子さんが、その様子をみていて、次第に感無量になり、ついには、涙ぐんでしまう。あのシーンにはじーんときました。(雑誌「女性自身」が大好きの姉は憲子さんがきらいだそうです)

 あのときの涙ぐんだ表情。人間が本当に感極まって泣く時には、あのような表情になるのです。まず、目が涙で潤む。しかも、目の周り全体が少しハレはじめて、眼は充血しはじめます。あっというまです。更に鼻がぐすぐすいいます。涙がでるときには、必ず人間は鼻水も(きたないですが)分泌されるようになっています。

 そして、少し眉間にしわがより、最後に口のまわりがワナワナします。わっと泣き出すと、くちが醜くゆがみ、そうして、涙がとまらなくなるのです。しかも、手は震え出します。

 これが人間が「泣く」ときの、様子なのです。そんなに人間は違いません。アフリカの原住民の方が泣かれたときも、同じ様子でした。世界中で感極まったときの泣き方は同じです。オリンピックをみればわかります。

 ドラマでラストの感動的シーンで、主人公が泣き出すシーンがあります。俳優さんも、ほんとは目薬は使わないそうで、ドラマの登場人物になりきると、自然に泣き出してしまうそうです。そうでないと、真に迫ったシーンにならないのでしょう。目薬では、目から水がでるだけです。全く泣いている表情にはなりません。俳優さんも、そのシーンの撮影が終わると、1日は目が腫れ上がってしまうといいます。

 人間が泣くということはこういうことなのだと思います。

  しかし、TVを見ていると、うわああーんとTVカメラの前で、ドラマでもないのに、叫ぶ人がいます。泣いている「つもり」なのでしょうか。ここで、泣かないとまずいと思うのでしょうか。かっこいいと思うのでしょうか。同情を得られると思うのでしょうか。泣いたふりをしています。号泣されておられました、なんて司会者も調子っぱずれなことをいってます。

 だって、涙もでてないし、なんか、目をこすったらしく、ほんの少し目が赤いだけで、鼻も正常。すぐにもとに復帰するし、目をハンカチで必死に吹いてますが、なんにも水分がでていません。そのくせ、顔だけは、大げさにぐちゃぐちゃにゆがませて、大声でうわうわわーんと叫びます。

 スタンドプレーのつもりなら、もっと、「泣く」芝居を研究したほうがいいですよ。あの若乃花の断髪式のビデオでも教材にして、何度も研究してください。ウソ泣きしかできないんじゃあ、だめです。子供がうわあーんと、「うそなき」するのはいいものです。かわいいです。でも、責任ある「大人の男」がうそなきしてると、頭にきます。でも、スタジオの人間はなんともらい泣きまでしている奴がいますし、気持ちはわかるよ、うんうんなんて、言ってるのです。

 子供の大人も、男性も女性も「うそなき」を堂々と自分を主張するために、平気でやるようになってきました。しかも、誰もそのうそなきがおかしいと思っていないのです。私も、泣く練習でもしときます。