最後の悪徳商法手口

1.倒産

 「XXXXを今YYY万円でお買い求めいただければ、ZZ年後のOOOOO万円のお支払いを保証します。」
 「まず、QQQQしてください。代金は1ケ月後に口座にお支払いします。」
 「当面、代わりにはらっておいてくださいますか?XXXのお支払いと一緒に振込みます」サイドビジネスとか、投資話とか、アルバイトとか一般の市民が出会う話に上記のような説明がついていることが多い。もっとも、これらの条件はすぐにおかしい、といった話ではない。でも、悪徳商法と、からむと危険である。

 悪徳商法をしている企業の最後の決着手段が倒産である。倒産してしまえば、被害者も債権者の仲間いり。回収に努力をしていかなければならない。また、お金がないから倒産したわけで、回収できても、その配当はほんのわずかである。数%とかの場合もあろう。株式会社なので、基本的には、経営者個人には支払いの義務はない。「努力しました」といえばいい。一般の人間に回収のノウハウなどはない。何をしていいかすらわからないだろう。

 悪徳商法をやるような会社ならば、財産もほとんど、隠したり、処分したりしてしまっているだろう。だから、彼らにとっては、被害者に払う必要のあるお金を一気にクリアできる「リセットボタン」のような手なわけだ。だから必殺わざとかいたのである。

 つまり、あなたにはあとでお支払いします、といったシステムの商売なら何でもいいのだ。2年度に返します。5年後に倍にします、などの、きちんとした契約書を作成して渡してやる。被害者は、会社が契約書を作って支払いを約束したのだから、平気だろう。なにかあったら、裁判にしればいい、などと錯覚して安心してしまう。会社が倒産したら、そんな契約書は守られない。契約書は存続している会社の約束なのだ。

 おいしい話の募集をかけて、被害者を集めて、わーっと金を集める。大金が集まったところで、金を給料だ、役員報酬だ、なんだと、分配したところで、予定とおり倒産する。被害者が金を取り返すのは困難だ。まだ社会問題になるような規模の大きなものなら、お金を出し合って弁護士を雇って、被害者の会を設置して、回収にも乗り出せるだろう。でも、少人数では被害者側も苦しい。さらにこの上、弁護士を雇うなり、自分で債権者活動するのは、非常に難しいのだろう。

 最初からこのように計画的に集金して倒産させるのもあるが、そうでない場合もあるようだ。それは、健全企業の資金繰り悪化である。こちらも我々は気をつけなければならない。

 きちんと事業をしてきた会社ではあるが、資金繰りがくるしくなった。現金を至急集めなければ。で、かえって危ない事業・商品の方に力をいれてしまう。すると、当面の資金を集められる。会社をもたせるためには、お金をともかく集めなければ、と営業にカツを入れる。営業が努力した結果、倒産した場合の被害者を増やしてしまうのだ。

 デマにおどらされる必要はないが、資金繰りが苦しい企業と、「あとで会社側がお金を払います」、といった契約をする際には慎重になることだ。こんなことは、企業の担当者なら、当たり前のことで、ネガティブな信用情報が流れれば、掛売りはしなくなる。でも、一般の消費者などは、そういう危機管理はしないことが多い。

 倒産して、お金を回収できなくなった一般市民の被害者。彼らは、倒産近くの時期に、契約をかわしてしまった人間が多いことを忘れないことだ。被害は倒産間際が多くなる。今は、大企業や銀行ですら、倒産する時代だ。倒産しないという保障のある企業は存在しないのである。

 そごうは「ダリア友の会」の処理を迅速にきちんと行なった。でも必ずしもこのような適切な処理をしてくれる企業ばかりではない。宝石買戻しを約束した某宝石店のような事例をわすれないことである。

2.豊田商事

 TV番組で豊田商事問題に関係する、中坊公平氏を中心とした回収プロジェクトのドキュメンタリーを見た。正義の味方、弁護士かくあるべきという内容だった。胸のすく番組である。ここでは、豊田商事に関係する話題を。

 豊田商事は、実際には金(きん)を渡さず、証券だけを渡すという、金まがいもの商法で有名である。金を買ったように見せて、紙(証券)しかわたさない。だから、倒産したとき被害者には、紙しか残らなかった。あたかも、買った金をあずかっていますよ、そして配当をあげますよ、という錯覚を与えるため、金のイミテーションを展示したりしていた。ペーパー商法である。高価なものを用いて、金をあずかり、倒産どろん、という商売だ。

 このペーパー商法を生み出しただけではなく、豊田商事はいろんな面で悪徳商法の新しい面を作ったといえよう。

1.社会的弱者(老人など)を狙え、を悪徳商法の人間に定着させた。それまではそこまで、薄汚ないやり方はなかった。それからは、すっかりこの弱者を責めるイジメ的な残酷極まりないやり方が普通になった。老人はおいしいという感覚を広めた。

2.倒産を前提にした、金の徹底的な持ち逃げ、隠し。倒産は悪徳商法にとって便利な手法だということを世間に知らしめた。

3.大企業までを巻き込んだ、利益の分配。優良と思われていた企業まで、利益を提供することで、仲間にすることができた。全貌解明を困難にすることができた。

4.社員の給与としての、被害金額の配分。給料によって、ともかく金を分けてしまう。罪をおわずに、美味い汁をすって短期で逃げる社員が現れた。火事場泥棒のような奴が現れた。

5.社員が、悪徳商法のうまみ、基本的なやり方を知った。そして、全国で悪徳商法をはじめた。以後の新たな悪徳商法の人材を豊富に輩出した「悪徳商法人材提供学校」だった。人を騙すプロを生み出した。一度うまみを知り、プロになった人間は、一生悪徳商法からは離れられないだろう

6.会社組織としての悪徳商法として、「マニュアル」を作成した。誰もが、そのマニュアルの通りやれば、騙せるようになるという。騙す手法を確立させた。人を騙すマニュアルを作ろうなどという発想はこの会社がはじめてだろう。マニュアルによって、悪徳商法従事者を量産できるようになった。

 豊田商事はつぶれて解体したが、人材とノウハウはオニヒトデのように全国に散ったわけだ。「悪徳商法年表」というものがあれば、豊田商事の悪の功績は間違いなく掲載されるだろう。こういう企業に在籍し悪の歴史に名を残すようになる恥だけは、なんとしても避けたいものだ。

 豊田商事事件でまなぶべきものは、「金ペーパー商法」の手口ではなく(どうせ、手口などは新しいものをどんどん考えてくるのだから)、こういうことを恥とも思わず、平気でやり続けている人間が今の世の中には、沢山存在しているということである。恐ろしい世の中なのだと、改めて認識することだろう。

3.大学生

 大学の中の空気はいいなあ。のんびりしていて、自由だ。まあ、それほど悪い奴も少ないようだし安心していられる。見知らぬ人とも、きっかけがあれば、簡単に友人になれる。この世界で、警戒心もあまりもたずに、どんどん友人を作れる。こんな世界は他にはないだろう。いいことである。大学生は18歳以上であり、のんびりはしているけど、それなりに大人の扱いをうけている。でも、この世界に慣れてしまうと、大学の外ではあぶない。

 クレジットカードに関する調査のアルバイトというのがあった。クレジットカードを作って、それを使って商品を購入させる、そしてその商品をアルバイト先に渡す。そして、あとでバイト代と、商品代をもらえる、というやつ。キャッシングをさせるのもある。または、作ったクレジットカードをしばらく、アルバイト先にあずける。

 お、楽なバイトじゃん、おれもやるよ、と参加するが、いうまでもなく、バイト代どころか商品の代金・キャッシング代金ももらえない。また、カードは使われまくって莫大な請求書が届く。バイト先はドロンである。

 驚くほど、簡単な手口だ。まるで、相手を馬鹿にしたような簡単さだ。これは、第三者が聞くと、なんでそんなのに、かかっちゃうの?だって、カードを相手に渡したり、商品・金を見知らぬ相手にわたしてんでしょう?いくらなんでも無防備すぎるんじゃないの?という。でも、人間は、ヒドイ目にあって、学習しているだけで、誰でもこういったやり方にひっかかる可能性をもっている。大学生はまだひどい目にあう機会が少ないだけだ。

 その悪徳業者は大学生を狙ったこのような簡単な手口を次のように考えていることだろう。

1.大学生は18歳以上で、カードなどを作れる年齢になっている。でも、大学の自由な雰囲気で、警戒心が希薄になっている。ねらい目だ。

2.払えなければおそらく、親が支払うことになる可能性もある。しかし、親は我々をなんとかしようとは思わず、息子・娘を怒鳴りつけて、「ばか者、いい勉強になったろう!」で済ませてしまうだろう。安心だ。

 でも、大学生が悪徳商法の被害にあったときに、親が決着をつけてあげられれば、まだいいほうだ。大学生は、一人悶々として、更に被害拡大したり、決着付けられずになやんでいることも多い。親は、大学生の子が1人ぐらししていても、定期的に連絡を取って、なんでも話しやすそうな雰囲気を作ってやることだろう。問題おきたら、すぐに親が介入してあげられるようにしよう。大学生はバイトをしてはいるけれども、基本的に収入がないわけだ。また、だいたい使ってしまっているからお金はない。悪徳商法に騙されても、誰かに相談しないと、決着つけられないのだ。

4.突然のメ―ル、失礼致します

 この前、またまた「儲かる話の勧誘メール」を受け取った。例によって、下の複数の口座にお金を振り込んで、このメールを増やして数名に送れ、するとお前の口座にお金ながっぽがっぽ。ばら色の人生!という奴である。面白い材料なので早速分析をしてみよう。

1.礼儀正しい人間

 ご迷惑でしたら、ごめんなさい、とか、不要でしたら削除して、云々書いてある。きちんとした人間だといいたいのだろうか?お友達になりましょうメールと違って、相手にお金を払わせる内容だというのに、自分の実名をださないことがそもそも失礼である。

2.確実、絶対、簡単

 怪しい商売ほど、好んで使う常用単語である。「確実絶対」の儲け話なんて、それこそ「確実絶対」世の中に存在しない。この単語が出たところで私は通常、捨てる。

3.私自身が儲かりました 

 自分が成功した、という体験?を書く。この成功談も次のメールにコピーされていることを忘れないように。

4.わずかXXXX円です、気楽に遊び心で

 いくら額が小さかろうが、払わなければ、それだけの御小遣いが無駄にならずに使える。なお、この商売やってる人間たちは、「遊び心」ではなく「ドロドロの欲望」でやっているだろう。この欲望を気楽な遊びこころで満たしてやっていることになる。

5.最初は僕もそんな美味い話があるかいなと疑っていました?

 はじめに感じたとおり、そんなにうまい話はない。その直感は正しい。また被害者の心理をトレースして、信じさせる手法を使っている。いうまでもなく、儲かった話はコピーされたものだし、そもそも誰も確かめ様がない。(確かめたかったら、騙されてくれってか)

6.掲示板のアドレスに送れ

 これは新手である。つまり、HPの管理人宛てのメールだというわけだ。HPの掲示板の管理人がひっかかれば、そこに書き込み人間がみんな被害者に早代わりというわけだ。人数多いので効率よさそうである。そうでなくても、掲示板につけたメールアドレスがターゲットにされだしているということだ。従来のこの商法は、友人宛てに行なうのが、普通だった。もう、友人限定では商売がうまくいかないので、ターゲットを広げたのであろう。

7.XXXXX円は開業資金です

 開業とはよばない。開業とは事業を開始することである。

8.計算してみましょう...少なく見積もってこれだけ儲かります

 無尽蔵に騙される人間がいれば、計算上これだけ儲かるということに過ぎない。騙される人間はそんなに多くいない。あなたが最後の騙される人だと思っていい。

9.弁護士は法律違反ではないといってます

 権威のあるものの名前を借りて、自分にも権威をつける手法である。その弁護士の名前をなぜ書かないのかを考えてほしい。

10.悪徳商法の説明を付け加える

 マルチ、ねずみとかの定義を書いて、あたかも自分たちはこれとは違う、法律違反でないといいたいようだ。ひっかからないように気をつけましょう、などと書いてあるのには驚く。でも、ひっかかった人たちは間違いなく、あなた方を恨む。結論からいうと、このメールを出した人は「法律に触れなければ、人を不幸にしても自分が儲かればいい」という価値観なのであろう。こういう価値観の人とは一切関係しないほうがいいと思う。

11.振り込み口座をかいてある

 この方々が騙された人たちなのか、ひとにわざわざ不幸を送りつけた人たちなのかと可愛そうになる。このまま、国民生活センターに報告させていただく予定ではある。ほとんどは偽名だろうし、商売を開始したひとたち自身の名前かとは思うが。

 さて、ともかく今度のでは、メールを出すターゲットを「インターネットの掲示板」に書いた発言者のアドレスを使い出したというところが新味である。しかも、掲示板管理者などにも、出しているようだ。なぜそう予想するかというと、私が各種のリンクサービス(自動的なリンクの仕組みを提供するサービス)に参加したとたんに、このようなメールが、やたら来るようになったからである。ハイエナも参加HP一覧をみているのであろう。便利で素晴らしいシステムにはハイエナも入ってくるということだ。掲示板管理者でこれを読んでいる方がいたら、注意するようにうながしたい。リンクサービスでHP訪問者が増えるが、コンタクトを取ってくるのは善人だけでなく、ハイエナも含まれている。我々がひっかったが最後、我々のHPは不幸を提供するHPになってしまうのだ。

5.ダイアルQ2 その後

 ダイアルQ2(直通国際電話でもできるが)とインターネットダイアルアップ接続を組み合わせた悪徳商法については、既に述べた。

 友人宅にいって、この悪徳商法のことを話した。で、話しながら、「ここにつくった覚えのない接続アイコンが現れるんですよ」と、友人のコンピュータのダイアルアップネットワークのディレクトリを開いた。...すると。

 驚いた!なんと、2個の得体の知れないアイコンが既に並んでいるのである。もしや、と思ってプロパティを覗くと。いずれもダイアルQ2の番号。0990XXXXXXXが。しかも2つは異なる番号だ。既に2箇所の怪しいサイトにかかったことになる。

 つまり、「偶然」友人のコンピュータをのぞいたら、もろに感染していたのである。一体、どのくらい多くのサイトが、この手口を用いているのだろうか。また、どれだけの被害者が出ているのであろうか。友人も何かをダウンロードして実行したということは、ないという。つまり、以前書いたような、手口によるものと思われる。

 私が認識しているよりも遥かに多くのHPで、この手口が使われ、遥かに多くの被害者が続出しているのだろう。

 「自分は大丈夫だよ。そんなへんなダウンロードをしやしないから」などという甘いことを言わずにぜひ、一度、自分のコンピュータが既に感染していないかを覗いて確認してみることをお勧めする。

 1.まず、「マイコンピュータ」(次にWinMeでは「コントロールパネル」を開く手順が入る)次に「ダイアルアップネットワーク」を開く。

 2.作った覚えのないアイコンが現れていないかを確認する。

 3.もしそのようなアイコンがあったら、マウスの右ボタンで「プロファイル」を選択する。ダイアル番号を確認して、0990...で始まる番号だったら、あなたのも感染している。おそらく、インターネットに接続するたびに、Q2に電話をしている。

 4.説明が重複するが、次の対策を至急行なう。
  ・感染していたら、すぐにそれらのアイコンを削除する。
  ・更にNTTに料金確認などの相談をする。
  ・必要ならば、ActiveXの無効を設定する。
  ・必要ならば、ダイアルQ2の使用停止を申請する。
  ・必要ならば、NTTに発信者番号不通知をデフォルトにしてもらうように申請する。(必要ならばと書いたのは、その人のインターネットや電話の利用状況で、そう単純に実行するわけにはいかないだろうからだ。ご自身で判断することだ)

 悪徳業者は、自社のモデムに被害者が電話をかけてきた履歴を保存していると思われる。その履歴には、(発信者番号通知になっていれば)被害者の電話番号も保存される。NTTのQ2支払いを拒否すれば、業者は、被害者の電話番号を用いて、住所を割り出し、直接、自分たちで、料金回収をかけてくる場合があるのだ。今では、Q2支払い拒否をしてもプライバシー情報の業者への通知はされないようにもできるとのことだが、番号通知によって、業者側には、電話番号がわかってしまう可能性がある。だから、発信番号不通知という手段も検討してほしいと書いた。

 もっとも、こんなことをやっても、絶対安心とはいかないのだ。なぜなら、彼らはまた別の手口をあくなき情熱で考え出してくるのだから。しかも、技術的にも向上している。自分は詳しく知っているから大丈夫、なんていう「うぬぼれ」はやめてほうがいい。絶えず、自分のパソコンは狙われているのだと知って注意して欲しい。

6.エステ

 大手エステティックの会社が倒産した。復習の意味で書いてみたい。

1.有名 

 「TVでCMやってる」「有名」「でかい会社」だから安心、というのは全く間違っているということの証明になってしまった。今の時期、絶対安心で倒産しない会社などない。またこれは今回の件とは直接関係はないが、、でかいからといって、正しい清い会社とは限らない。悪いことをやって大きくなった会社などいくらでもある。有名宝石店、ふとん販売会社、悪質取立ての会社もTVCMをガンガンやっていた。
 有名だからシステム的に不安があっても、警戒心を解いてしまう、というのは誤っている。

2.現物まがいもの

 エステ関連の商品(化粧品、器具など)を販売していたようだが、引換券方式を使っていたようだ。つまり、お金はまとめて払い、その分の引換券という紙をもらっていたわけだ。会社はそれと引き換えに商品を渡すが、倒産してしまえば、本当にただの紙である。ある日突然、客から債権者へ仲間入り。債権者説明会にでて、回収作業をしなければならない。

 パチンコ屋、鉄道、電話のプリペイドカードなんかは、前払いであっても、たいした額にならない。せいぜい、数1000円。でも、エステの商品はそんな額ではないようだ。桁が2桁以上違う。危険すぎるのだ。多くの企業が前払い方式を使っているのは、それによって、利息のいらない資金を調達できるからなのだ。つまり、前払いというのは、その会社にお金を貸しているのだということを忘れないように。

3.高額

 エステはなんにしても、高額である。(「人」が提供する大量生産できないサービスだから当然ではあるが)数10万、数100万という額なので、いざ被害にあったときには、いきなり深刻な問題になってしまう。額の桁によって、警戒心を上げるというのは、当たり前のことなのだが、美しくなれるという強烈な思いを前にすると、警戒心、慎重さが0になっている人が目立つ。

4.全額前払いとローン

 高額になるので、ともかくローンを組ませる。業者はローン会社から一括して全額を受け取れる。こういう仕組みなので、企業は安心である。(手数料は取られるが) 別の言い方をすると、後はしらん、ということだ。ただし、ローン会社にも責任を負わせるという法律もあるので、被害者は適用してもらえるのかを法律家に相談したほうがいいと思う。
 今回の倒産では、「ローン組んでも、いやになったら、いつでも解約できるわよ。そのときには、全額お金かえしますから」といってローンを組ませたが、解約してもローン会社に連絡していなかったという被害も報告されていた。
 悲惨なのは、被害者がローンでなく、全額前払いにした場合だ。これでは保護してくれる法律もない。単なる債権者である。

 エステを倒産させてしまった経営者も、別に客に被害をあたえようとしたのではなく、彼らなりに経営に頑張ったのであろう。別に悪徳でなんでもないのだろう。企業経営にリスクはつきものである。でも、以下の点には非難される余地があると思う。

 それは倒産の危機が少しづつ見えてきた段階で、「全額前払い」「引換券」などの方式をやめてこなかったという点である。倒産するかも知れないと思い初めているのに、またその危険が増してきているのに、こういう販売方式を取り続けてたというのは、道義的非難は免れないと思う。客を高額な債権者にさせてしまうというのは、非常に残酷なやり方だ。出入り業者などと異なり、一般の客は債権回収のノウハウなどないのだ。それに客として購入したのであり、そんな回収のリスクなどを頭に入れて購入したのではない。

 また、とエステ業界では、エスティシャンと客とは強い信頼関係が必要ときく。一生懸命に仕事をしてきたエスティシャンたちへの信頼、人間関係をも損なってしまう。このあたりは、倒産した保険会社の外交員の悲しみに相当するものなのだろう。

 ともかく、今のエステ関連では、全額前払いに重みをおきすぎる。提供したサービスに応じて代金を頂戴するというのが、正道のやり方なのである。資金が安定し、顧客をかかえこめるのはわかるが、額が大きいのであるから、自社になにかあったときのリスクを客に転嫁するのはいかがなものか。他にも、解約に関するトラブルがあまりにも多い。解約する際になかなか解約に応じてくれないとか、解約時の客側負担金が大きすぎる

 医学にきわめて近い領域の業務を、高額な料金をとって行なっているのであるから、信用を最大優先に考えてほしいものだ。

7.親

 若い人でこの文章を読んでいる方もいるだろう。悪徳商法にかかったら、ともかく親に相談することを絶対お勧めしたい。

 親なんぞ、古臭い頭で、若い人の気持ちを理解してくれない、説教するだけだ、というのが正直な思いだろう。でも、いざというとき、本当に危険になったとき、やばい事態になったとき、こういうときこそ、親は頼りになるのだ。

 親に対して、いつも逆らっている手前、相談なんかできない、と思うのかも知れない。相談すれば、確かに怒鳴られるだろうし、馬鹿といわれるだろう。でも、相談すれば解決が最も早い。その理由を書く。

1.迫力

 親の子供に対する愛情は凄まじい。あなたがわかっていなくても、親はあなたのことを真剣に愛している。(うまく表現できていないだろうが)だから、子供に何かあったとき、子供を救おうとする気持ちは凄まじい。自分のことなど、忘れて解決に努力する。

 あなたが、悪徳商法だとしよう。ある20歳くらいの青年を騙したら、50歳くらいの人が怒鳴り込んできて、うちの子供に何か悪いことをするのはやめろ!と迫られたとしよう。その親の目はきっと殺気だっているだろう。これ以上、なにかしたら、逆にこの親に復讐されるような恐怖を感じるだろう。その迫力は凄まじいものなのだ、

 こういう親の子供を救おうとする一念は、悪徳商法関係者にとっても、恐ろしく感じられる。このあたりで解約に応じてやろうかと思うだろう。

 更に、解決案が浮かばないときでも、情熱をもって真剣に解決する方法を探してくれる。あきらめない。考えてくれる。自分のことのように。どんな弁護士よりも最終的に頼りになる。

2.経験

 もちろん、社会人としていろんな経験をしている。それが解決に対して有効に働くのも事実だろう。でも、親も悪徳商法にかかった経験があるものなのだ。また、親の友人、知人などがかかった経験を聞いている、というのもあるだろう。そういった、先例を親は社会人として何十年もいきてきたので、事例も知っているし、解決のノウハウを実際、多く持っているのだ。

 また、見逃せないのが、親の持つ法律的知識だ。別に法律を学校で学ばなくても、社会の荒波をもまれると、実践的な法律の知識を多かれ少なかれ持つようになる。

3.金

 解約などの処理をする際にも、法律家の助けを借りるにも、ともかく悪徳商法を解決する際に、金がかかることがある。このとき、親が助けてくれる可能性がある。これを消費者金融に借りて、かえって被害を大きくしたりしてしまったり、悶々として解決を遅らせたりしては大変だ。 

4.人脈

 親の持つ、法律家、悪徳商法に詳しい人などへの人脈で、相談できる相手を紹介してもらえることも考えられる。

 ともかく、親に相談できる人はすることだ。親は、悪徳商法にかかったと、しょぼんと頭を息子・娘がさげてくれば、「この馬鹿!」とかどなって、舌打ちするだろうが、本当は子供を救うために全力を出せて嬉しいものなのだ。親がいきているうちに、頼ってあげるのも親孝行なのだ。

8.旧友

 会社関係、仕事関係、金銭関係、こういったものを離れても、まだ、率直に話あえる友人というのは、本当に貴重だ。大切な友人とは何十年ものつきあいになる。会社だけでなく、子供のころの近所の遊び仲間、学校時代の友人も大切だ。なぜなら、なんの利害関係がなくても成立する友情というのは非常に少ないのだ。

 でも、旧友にも「恐怖の旧友」が存在する。かつては利害関係抜きでの友人だったのが、突如、利害関係をもって何十年ぶりに現れるのである。そして、「友情は貴重である」という考えを逆手にとってくるのである。

 よくある話で、突然、電話がかかってくる。「はい」「おーい、俺だよ。俺」「は?どなたですか?」「ほら、小学校のころの同級だった、佐藤だよ」「....ああ、3年のときの同級だった、佐藤君か」「そうそう。ひさしぶり」... 小学校の頃、当時は仲が良かったなあ、でも、クラス分かれてから、音沙汰なしだった。38年ぶりだ。なつかしがっていると、「あわないか、今度。」 ....ここでは「悪徳商法手口」と書いているので、みんなピンとはくるだろうが、通常は「まあ、会ってみるか、なつかしいなあ」となる。

 ところが、会ってみると、適当に昔話をしたあと、早速勧誘だ。今、自分がやっている素晴らしい商売にお前も参加してみないか、ほら、1単位でいいからやってみようぜ。旧友1人でくることもあれば、はじめから、悪徳商法の幹部と待っていることもある。また、セミナーにいきなりつれていかれることもある。

 友人も雰囲気が当時とかわっているようにも思える。おとなしかったのが、目をぎらぎらさせて、儲け話を熱っぽくかたる。なつかしさと、友人の変貌と、幹部との共同戦線の勧誘が混じって、何がなんだかわからないまま、契約してしまったりする。まさに、悪魔の旧友というわけだ。結構、このパターンの勧誘電話はみんな一度くらいあるのではなかろうか。

 人が、幼馴染から、小学校、中学校...社会人となるうちに、友人、知人は非常に多く生まれる。一生の友人になる仲もあれば、それっきりというパターンもある。つきあいにも、深い浅いがある。そして、その人たちはみな、あなたの氏名、住所、電話番号を知っている。(クラス名簿、卒業名簿、社員名簿などである)話のきっかけもいくらでもある。会おうよ、といえば会ってくれるだろう。つまり、もし、それらの多くの友人、知人のなかに、悪徳商法の道に脚を踏み入れた人間がでてくれば、それを使ってくることは当然であろう。きっと、あなたとの友情関係があったときには、いい人だったのだろう。でも、一度悪徳商法のうまみを知り、泥沼に脚を取られ、知人を金に替えることができることに気が付くと、もう、卒業名簿が金儲けのツールにみえてしまうのである。つまり、ゾンビにかまれた友人はゾンビになり、あなたに噛み付きにきたのである。かわいそうではあるが。

 悲しい嫌な話だ、でもよくあるパターンなので書かざるを得ない。人間は、数年で変わる。環境によって、よくも変わるし、悪くもかわるのだ。それを何10年かぶりに電話がかかってきたときに、無条件で昔の彼・彼女と同じ人間とは思ってはならないのだ。もちろん、同窓会の誘いとか、みんなで集まって飲もうや、というのはよくある。でも、そういった理由も特になく、そんなに親しくもなかった、全然連絡もしてこなかった、なぜ、何10年ぶりに電話をしてきたのか、を逆に考えてみることも大切だ。そんなに親しくなかったのに、なんで?となることもあるだろう。生涯で数1000人近くにもなるであろう、古い友人、知人...さして親しくなかったのに、突如、電話がきて、2人で会おう、ときたら、警戒をしてもいいのではなかろうか。あって、上記のような話をしてきたら、早々に切り上げて帰途につくことをお勧めする。しばらくして、別の友人とあうと、「俺のところにも、奴が同じ電話してきたよ」なんてこともある。

 要警戒パターン:別れてから何10年、何年も連絡もつきあいもなかった。そんなに親しかったわけではなかった。突然の電話で2人で会おうといってくる。同窓会とか結婚式とか飲み会とかの理由もない。すぐに商売の話をしてくる。どこかにつれていこうとする。電話では言わなかったが、別の人も待っている。 なお、友人、知人の99%のひとは、あなたにとって以前大切な人なのだ。警戒しすぎも禁物だ。単に1%の怪しくなった友人にも注意しておいたほうがいいでしょうということだ。

 最後に、このパターンの変形版を。友人でもなんでもないのに、友人を装って、入手した名簿で電話をしてくる。会っても、当時の友人と信じてしまう場合もあるそうだ。信じがたい話だが、時間がたつと、顔も体格も変化するからだろうか。ともかく悪徳商法は人を変える。

9.悪徳商法とは

 どういった商売のやり方を悪徳商法と呼ぶべきなのだろうか。営業の友人に、営業なんて多かれ少なかれ悪徳商法だ、なんていう人もいる。極論にしても、相手のことを中心に考えていては確かに、あまり商売はできないだろう。

 次のような場合には、悪徳商法と呼んでいいのではないかと思う。

1.商品・サービスを買った消費者が、買う前よりも、買った後のほうが損をするであろうことを、販売側が知って販売している場合。通常は、なんらかも「メリット」を買った人間はうけるだろうが、逆にデメリットを受ける。ひどい場合は悲惨な状況になる。そうなることを知って売っている場合。

2.利殖ものの商売で、「必ず儲かる」「確実」「絶対」というセールストークを使用する場合。

3.拒絶をできないような状況に持ち込んで販売する場合。監禁、脅迫などが含まれる。

4.商品を買うときの判断基準を「大きく」損なうような、うその説明をした場合。(わざと判断を狂わせようとして、あきらかなウソをして言っている場合)

 消費者に対する悪徳商法としてはこのような基準で私は考えている。法律を基準とはしていない。法律は、あくどいやり方で社会的に糾弾されるようになってから、「あとから」それを規制するためについてくるものだからだ。あくどいというのは、通常の人が感じる社会的通念であればいいと思う。法律にはひっかからなくても、社会的糾弾を避けることはできないのだ。法律には従っているから文句ねえだろ、と叫び続けて糾弾をかわしてきた企業が、法律改正されてどうなったかを考えてみればいいだろう。

 企業側も消費者のクレームをうけたときに、しゃあしゃあと、法律には違反していません、などと胸をはっていわないことだ。消費者が法律違反か否かだけを考えているのではなく、消費者に危害をくわえているかどうか、を見ているのである。優良企業であっても、この点を勘違いしていれば、どっかの企業のように消費者から強い社会的糾弾をいつか時間の問題でうけることになるだろう。法律改正されるまでは、そのままでいいや、などとは思わないことだ。

 みなさんが思う悪徳商法の基準とはどういうものでしょうか。