続株式マニア

1.忘れちまえ

 今(2000/9/20)、下げ相場である。ネット関連株バブルもはじけ、原油価格も上がりだし、失業率は下がらず、景気も底を本当にうったとは思えない。で、下げているとき、自分の買った株がどんどん下がっているときの「心のもち方」を説明したい。

 株はその罫線の性質から、「ほとんどいつも」下げているものである。だから、株をやっている人は、ほとんどいつも、「ああ、損している」「ひええ、下がっている」と嘆いているである。だから、そういうものなのだ、と思いなさい、そして、その恐怖、不安、ストレスに耐えなさいと以前書いた。

 株の長い人は、なんらかの自分なりの「耐える方法」をもっているようだ。そのいくつかを書いてみる。

1.見ない

 将棋の米長氏は、この方法らしい。いろいろ研究して「よし、この株を買う」と決めて、購入したら、もう、株価をほとんど見ない。 日々の値動きをいちいち見ない。狙いの時期に、目標の株価になるか、その会社が目論見とおり注目されるまで、気にしない。その会社のニュースにも一喜一憂しない。経済関係の新聞、雑誌の記事も気にしない。そして、売却の日になったら、どんと売るわけである。だから、「ああ、下がってる!」「うーん間違えたかなあ、失敗」などとくよくよしたり、初心忘れて売ってしまったりしない。

 気持ちを惑わすものを「見ない」のであるから、これは有効である。氏は「株で勝つ方法は、日本経済新聞を読まないことである」といったそうである。

 最近、インターネットのサービスで、「あらかじめ設定した目標株価に到達すると、電子メールでおつたえします」とかのサービスがあるそうだ。この「見ない」という方法によく合うサービスである。

2.叫ぶ

 これはキレてしまう手である。財産が半分になってしまった。誰にもいえずに悶々と悩んで後悔する、こんなことをせず、誰でも彼でも、「ああー。どうしよう!俺はもうおしまいだ!大損しちまったあああ」と訴えて、泣くのである。不思議にこうすると、不安もなくなるのである。

3.マゾになる

 逆に、自分の心の中の「不安」「恐怖」を見つめ、そこに快感を見出す方法である。心がちくちく痛むのを、ああ、今、俺はこんなに悩んでいる、ああ、とマゾチックに喜ぶのである。最後に、株価をみて「うひひ、今日はこんなに下がってら。あは、あは、あははは。わらっちまうね。」と笑えるようになる。

4.忘れちまう

 私がお勧めするのはこの方法である。下がっているときには、絶対に不愉快なのだから、もう、その買った株のことは忘れちまうのである。仕事とかほかの趣味とかに没頭する。人間の頭は便利なもので、こうしていると、本当に忘れてしまう。すると、数ヶ月して、何かのきっかけで、あ、あの株どうしたかなあ、などと思い出す。で、経済誌を見ると、あれ?こんなに上がっている!ということになる。

 私はIBMでこの「忘れちまう」作戦でいった。買った値段の何分の1になったのだから。(こんなことは株式市場では日常茶飯事)株価を毎日みたり、他の評論家の意見を読んだり、悪材料の記事を読んだりすれば、頭が狂ってしまう。どんな人間でももたない、きっとどん底で売ってしまうだろう。ある長期の仕事が1段落ついてから、株価みてびっくり仰天であった。

 「不愉快なものは忘れてしまう」これはどんなことでも、精神衛生上いいものである。株価が回復するのは、時間がかかるからである。

 みなさんはどの方法で精神の安定を保ち、下げ局面を乗り切るだろうか。ともかく言えるのは、本当にまじめで几帳面な性格の人間で、株価の上下を毎日観察し、人の意見をよくきき、この株を買ったのは間違いなかったのか、とかを真剣になやんでいるようでは、到底株では勝てないし、頭がおかしくなるだろう。そのうちに、神経性胃炎になる。誰かにあたったりする。ある程度、アバウトな性格でなければ耐えられないのだ。

2.冷却期間

 株を買う。思惑通り、上がって、売却。大変な利益を得た。さあ、あなたはどうするか?

 ほとんどの人は、早速次の銘柄を買う。間に、1週間、一ヶ月どころか、なんと次の日にかってしまう。そして、こんどは、その銘柄が下がり始める。あ、しまった。少し売買の間をあければよかったなあ。と失敗。いままでの儲けがあっという間に減ってしまう。

 1つの銘柄があがって、売りたいくらいになった時には、相場全体も実は上昇しているものなのだ。だから、売った代金で、さあ、次の株だ、と買ってみると、それもすでに天井になっている可能性が非常に高い。だから、下落することが多いのだ。でも、株で儲けると、株が面白くなるので、1日でも株をもっていないと、不満・不安になる。「相場は明日もある」という格言とおりに、毎日あるにもかかわらず、今しか、買うチャンスはないように思って、つい、買ってしまう。何度も売買しているが、常に株をもっていないとイヤダという人は多い。

 ここでは、ぜひ、株で勝利したら、しばらく、休みましょう、そして次の勝負にそなえましょう、といいたいのだ。勝利の余韻で、威勢がよくなって、慎重さがなくなっているし、少し天狗にもなっているかもしれない。熱くなってしまっていることもある。そして、相場が天井かも知れない。

 さて、以前から、投資家に非常に便利であった、このための道具がなくなってしまおうとしている。それは「中期国債ファンド」である。これは、購入すると、一ヶ月解約できない。だから、株をうって、売却代金を中期国債ファンドにいれると、次の銘柄を買うのは、最低でも一ヶ月後である。これが冷却期間になる。おそらく、ああ、今買いのチャンスなのにい、と思うかもしれない。でも一ヶ月くらいたつと、「ああ、あの時、買えなくて助かったああ」と思うものだ。

 多くの投資家はこのメリットを自覚し、使っていたはずだ。不思議だが、次の買いときがなぜか、一ヵ月後にまわってきていたものだ。でも、これが残念なことに、償還されようとしている。(野村アセット)つまり、なくなってしまうわけだ。

 そして、最近の流行が、「オンライントレード」である。インターネットで買い売り注文ができてしまう。目の前で即取引を確認できる。非常に簡単で便利である。夜中でも注文を出しておくことができる。でも、私はこれが本当に恐いのだ。

 以前は、営業時間になって、担当さんに電話をして、「XXX銘柄を、YYY株買い、御願いします」と注文した。前の日に、慎重に考え、電話をするときには、大変緊張した。電話をするまでに、本当に買っていいのだろうか。とか何度もまよって考えたものだ。前の日に熱くなって、よし、明日売りだ、買いだ、と思っても、翌朝冷静になると、うーん、いや、やっぱやめておこう、となった。電話する直前で、思い直したこともある。そして今、振り返ると、不思議にその迷い、優柔不断は、いい結果をもたらしていた。熟考期間、冷却期間をもてたのだ。しかし、オンラインでは、5分前にかんがえたことを、即、売買実行したりしている。これはやばいのだ。

 売買の前に、強制的に頭を冷やし、冷静になり、慎重に検討する、こういうことができないように、できないように、世の中は進んでいる。売って、すぐに次を買ってしまうようになっている。ぜひとも、売買には間隔をあけ、冷静になるような期間を持てるような工夫を自分で見つけなければならないようだ。

3.アナリスト

 未来学会というのがあったと思う。今でもあるのかなあ。それで、長期予想を発表したことがある。この中で、覚えている最後の項目が、「2000年 人間は死ななくなるだろう」とかであった。他の予想もほとんど当たっていないはずである。(確か、発表数年後のが、「イルカと会話できる」であった。)この学会のメンバは各界から選ばれた優秀な人たちである。小松左京氏などは作品の中で、老人になって、「でたらめな予想しやがって」といじめられる自分自身を想像して登場させていた。

 なんでも、未来予想というには、「現在のベクトルが将来もつづくと仮定し、い数年後にどうなるか」というものらしい。アナリストの仕事もにたようなものだ。小学生をみて、アナリストが予想すると、「この人は、現在のペースで成長を続けると、10年後に、30メートルになるだろうと思われる」といった感じになるのだろうか?だから彼らのレポートをみると、成長を続けている会社を見ると、この成長が何年も続くとして、5年後には、年間総利益が1000億を超える、とか、言い出し、会社経営がスランプであると、この会社には5年後はないと予想する。やれやれである。

 会社などは、必死にああでもない、こうでもないと、苦しいときには大赤字でもいろんな知恵を出し合い、辛い思いをして頑張っている。でも、そんなものには目が届かない。逆に、大黒字のときには、会社がゆるみだし、競合も準備を開始し、すでに転落の傾向があらわれているのに、いつまでも、成長が続くという前提のレポートをだす。人間、会社は、単なるものではない。生きててもがいているのである。また市場には革命的な変化がよくあらわれる。衰退も急速に起こる。

 よく、経済誌で、ぼろかすに書かれている企業がある。でも、これらの企業は大変な努力をしているはずだ。でも、経済誌を見ると、「もう、打つ手がないだろう」と平気で偉そうにかく。ある業界での次の打つ手を、その業界の素人(または毛のはえた)のアナリストがわかるわけがないのである。有名な企業名で、高そうなサラリーをして、頭よさそうなので、さぞかし、綿密な調査をしているのかと思えば、アナリストは、会社発表の資料の数字をみて、せいぜい、何回か会社を訪問し説明を聞き、商品をちょこっといじってみて、ふーんとかんがえてみて、ニュースを集めて、判断を下しているといったところか。たとえば、ソニーが今度、秘密にどんな製品を準備しているかは、わかるはずがないのだ。それを、金融時代には、金融の専門家のように評価を下し、ゲームを見れば、ゲーム企画者のような発言をする。情報通信になれば、やはり、おなじようなことを言い出す。

 だから、私はアナリストの評価など、ふーん、くらいしか見ていない。こんなことを言う人間も世の中にはいるのだなあ、といった感じである。まして、このレポートを見て、信じて、株を買うなど、ありえない。(本音でいうと、私にはジャンク情報に限りなく近い情報である)株とはあまり関係ないと思う。財務状況悪し、なんて書いてあっても、そんなことは誰だってわかっとるわい、である。

 いや、唯一、レポートが役に立つときがあった!

 それは、ある会社の株を買って「あがるかな、どうかな?」と不安のとき、べた誉めレポートを見て、自分を納得させ、安心するのだ。「ああ、やっぱりみんな誉めている。大丈夫だろう」反対にうってしまって「速すぎたかな」と思ったら、悪く書いているレポートをさがして読めばいいのである。結構、投資家は無意識のうち、精神安定でこういった使いかたをしているようだ。

4.倒産

 個人投資家は、絶対に長期投資でいくべきだ。それも、逆張りで、下げたところを拾う作戦でいく。これを守っていれば、必勝だろう。(慣れてくると、短期で、順張りをやるようになってしまい、大負けするようになっていくのだが)

 この作戦で、唯一の問題点が、投資企業の「倒産」の可能性であろう。逆張りではどうしてもこの危険性がつきまとう。ある日、TVで、新聞で、「XXXX会社更生法申請」とか出る。みた瞬間、血の気が引く。そのあと、ああ、0になった株券のお金があれば、海外旅行にいけなたあ、あれが買えたなあ、ああ遊べたなあと後悔が心にうずまく。

 最近は倒産の危険のほかに、新たな危険が増えてきた。「減資」である。資本金が半分とかにされてしまう。倒産、減資とかを察して逃げる方法はあるのだろうか。あれば、更に逆張り作戦必勝となる。

 結論をいうと、倒産・減資を、たかが、個人投資家が事前に察する方法などあるはずがない。更正法と存続の違いはほんとに紙一重である。このあたりでは、社員すらわからないように、極秘に進む。マスコミや信用調査機関だって、探っているところなのだ。山一證券などは、社員でも「つぶれるとは思わなかったので、みんなで自社株を買い増した。」といっていた。あなたが、経済誌の記者とかであればわからなくもないが。

 前に、書いたのであるが、なんの理由もないのに、ずるずる異様に下げ出すというのは危険シグナルではあるが、これを察して売りに入るのは実はきわめて困難である。既にそこまでで下がっているはずだし、下げた状態で損切りするのは誰でもなかなかできないものである。

 じゃ、どうしたら、いいのか。使い古された手であるが、「たまごを1つのかごに入れるな!」である。つまり、総投資額を全部、一つの銘柄にいれるというのをやめればいいだけである。総投資額を少なくとも、3分割、またはそれ以上にわけ、銘柄に投資するのだ。5社の株を買っておけば、1つ倒産しても4社が残る。つまり20%の株価下落と同じである。こんなものは市場でいつもおきている。

 分散投資は、投資信託などで使うのであるが、実は最も有効なのが、個人投資家の逆張り投資の際なのである。なぜなら、個人投資家は逆張りで、虎の子の財産を賭けるわけで、倒産してしまえば、はだかになってしまうのだから。個人投資家は、必ず3銘柄以上に分けて投資せよ。

 倒産寸前というのは、ヘタをすれば、逆に持ち直す変換点にもなるのである。倒産寸前から、持ち直せば、莫大な儲けとなる。簡単に数倍の株価になる。危険であると同時にチャンスでもあるのだ。恐がってはいけない。したり顔で、「もっと、安全な株をかったら」などと言われるけども、気にする必要はない。

 単純化した計算だが、3銘柄に投資。1銘柄が倒産で0.2銘柄が持ち直し、倒産せずに、2倍になれば、ちゃんと利益がでるのである。

5.売り時

 自分の持ち株が騰がりだした。うれしくてたまらなくなる。で、今、いくら儲かっているとかの計算をしてみる。しかし、計算だけでは利益は確定しない。売ってはじめて現実のものとなる。

 で、いつ売ったらいいのだろうか。これほど、難しいものはあるまい。

 なぜなら、騰がっているときには、いくらでも、もっともっと騰がるような気持ちがしてきて、もう少し待ってみようとするからである。2倍になれば、3倍になるような気がしてくる。マスコミもそういうときに限って、いい材料ばかりを書き、あおるのである。
 やがて、その思いとは裏腹に、下がりだす。押し目で戻るかな、などと思っていると、ズンズン下げ続ける。そうして、とうとう、買値くらいまで下がってしまう。すると後悔する。ああ、失敗したあの時に売っておけば、儲かったのに!車が買えたのに!

 罫線を見ると、ここで売っとけばよかったのだ、とすぐわかるけど、あくまでそれは過去のことで、その時点ではわからない。よく株式の本を見ると、買い疲れがみえてきたとき、とか、みんなが強気になったとき、とか書いている。でも、それは無理である。株価が動いているときに、「底」[天井」とかを見抜くのは非常に難しい、というよりも、人間では不可能だと私は思う。みんな、あとで、あそこが天井だった、とわかるだけだ。

 私は売り時については1つだけの決め事を使っている。「その株をかったときに、決めた目標株価になったとき」である。

 つまり株を買うときに、いくらになったら、売りましょう、とあらかじめ決めておくのだ。うーん、この株は今、1000円。でも、XXXXになって、市場も持ち直せば、3000円になるだろう、とか予想するわけだ。で1000円で買う。これは3000円になるまで、我慢する。そして、3000円になったら、躊躇なく売るのである。これが最も後悔せず、かつ、確実な方法である。

 決して、目標になったときに、迷ってはならない。また、目標に達するまでに売ってもいけない。あくまでも、最初の目標で売るのである。

 なぜなら、最初に投資したときの、考えがもっとも、冷静で客観的で正しい判断であった、ということが多いからだ。それが値上がりすると、自分の考えは、ぐらついていき、正しい判断ができなくなってくる。いわば、欲に目がくらんだ、という状態になるのである。

 もちろん、売った目標株価を越して、更に上昇することもあるだろう、でも、最初に決めた作戦が成功したのだから、「成功のあとの後悔」なのだ。それが、自分の決めた売り時を逃すと、「後悔する失敗」になってしまうのだ。成功は成功なので、その利益をがっちりつかみ、次の投資にいかせばいい。

6.人に話すな・人に教えるな

 XXXの株を買ったよ、きっとXXだから、YYYになるよ、AAAはもうダメ、あがらないと思うよ、だってZZZだから。俺はHHHHにしたよ。云々。

 自分の買った・売った株について、また、その相場感については、決して人に語ってはならない。ましてや、人に買うべき銘柄を教えるなどとんでもないことである。

 得意がって、人に株のもくろみを話しているひとを見かける。でも、それはまずいのである。やめたほうがいいと思う。まだ、素人に話すのはいいけど、同じような株式ファンに話すのは絶対にまずい。

 なぜなら、話したが最後、どうしても、話した自分の言葉に縛られてしまうからである。

 その理由はなにか。友人の株ファンに、得意がって、A社の株の先行きの明るさを自信満々話したとしよう。翌日大きくさがってしまった。

1.「これはもしかしたら、見込みが間違っていたのではないか?」というイヤーな予感がしたとしよう。でも、友人がやってきた。で、おい、さがったじゃねえかよ、どうしたい?といやみを言われる。すると、そんなことはない、大丈夫だ、これからだよ、などと負けず嫌いに応えてしまう。
 これで、なんとなく、売りづらくなってしまう
だろう。だいたい、いやな感じといった予感は正しいことが多いのだか、友人にたんかをきってしまった手前、自分の言葉に縛られ、自由に売買できなくなってしまったのである。

2.更に下がり続ける。すると、友人は面白がるはずだ。おい、いってたことと全然ちがいうじゃないか、もうどのくらい損した?たいへんだねえ、などといわれる。人間は他人の幸福は許せないし、不幸は面白いのである。だからからかう。すると、かまわん、下がっても持っていようと思っていても、その友人の言葉にがっくりくる。めげてしまう。で、意に反して売ってしまうのである

3.ましてや、他人に買わせてしまったとしよう。するともっと貴方は縛られる。今度はもくろみと違えば、強く非難されるだろう。大丈夫だ、などといってしまう。自分だけ、売るわけには絶対にいかなくなるだろう。これで、自分を縛る縄がまた倍になってしまったわけだ。

 いうまでもなく、騰がった場合には、よお、おごれよ、とか、儲かったんだから、けちけちするな、などといわれる。下がるにせよ、騰がるにせよ、人に話して得になることなど、何一つないのである。絶対に、自分の株式投資の状況は人に話さないことだ。もくろみが当たったときなどは嬉しくて、人に思わず話したくなるのはわかるけど。

7.ボックス圏

 株価がある一定の範囲をいったりきたりしている状況を「株価がボックス圏に入った」という。たとえば300円と350円の間をいったりきたりしているようなものである。何度も何度もいったりきたりしていると、この振幅を利用して、値幅で儲けてやろうという人が現れる。このやり方は途中は別にして、だいたい失敗で終わるようだ。

 300円になったら買って、350円になったら売る。これをひたすら繰り返す。この思惑通り、単純にその通りになるのだったら、苦労しない。過去・現状、そのような動きをぶらんこのようにしてきただけで、明日はどうなるかわからないのだ。少しでも、その想定した振幅の範囲を超えると悲劇が発生する。この商いのやり方も、「相場をなめている」ということだ。そんな単純なやり方で儲けられたら誰も苦労しない。

 300円で(現物買ったら)あら、350円に戻らず200円になっちゃった。というのなら、被害はない。ああ、損しちゃったけど、しばらく待つか,...で済むわけである。それでも、わずかな値幅で儲け様とするのだから、その人は必ず建て玉を大きくしているはずである。そうしないと利益が小さいからである。痛手は通常の投資よりも大きいのだ。小さな値幅で儲けるためには建て玉を大きくするしかないのだ。これは一度、逆に振れた時の損害を大きくすることになる。いつか逆に振れる。5回成功しても1回失敗すれば大損

 これなどはまだまし。多くの投資家はここで、利益を大きくするため信用取引をして、持っているお金以上の取引をしている。だから、損害は上記の比ではない。しかも、いつまでも塩漬けで持っているわけにはいかない。決済をして損を確定しなければならない。ここで負け確定である。

 更に悲劇なのが、350円で、空売りをしかけて、逆に振れたときである。だいたいボックス圏をうわっぱなれするときには、爆発的上昇になるものだ。あとで見たらボックス圏が充電期間だったということが多い。350−>300円のわずかな値幅のために、ものすごい危険を冒しているのに気が付かない。これはどうみても、危険で損ということになる。

 ボックス圏というのは、誰でもわかりやすく、「あ、この株、完全にボックス圏だ。よし、スイングを利用して儲けてやれ」などと思ってはならない。ボックス圏とは、昔の過去の実績がボックス圏だったというだけで、明日を保障したものではない。この衝動は多くの投資家をとらえてしまう、悪魔の誘い水である。

 ボックス圏で、見込みとはずれたときに、あわてて、両建てにするということをやる人もいる。両建て両損である。絶対に損をする。両建てにするくらいなら、決済をしてしまって、あらためて、出直せばいい。証券会社は両建ては、ダブルで手数料入るから、万々歳であり、勧めてくると思うが。

8.夫婦

 夫婦は2人ではあるが(例外の人を除いて)、財布は一緒である。お金のことについては、へそくりなどは別にして、お互いで、相談して使い道などをきめていくだろう。それが自然である。お金については夫婦では秘密を持たないほうが結局は双方幸せなようだ。

 夫婦でお金について秘密を持ち始める。きっかけは簡単で、「御小遣いを増やしてみよう。あの人にないしょで」なんていうエゴのものから、「2人の家を建てる資金をあいつに秘密で増やして、驚かせてやろう」などという暖かいものもある。で、その手段として、株式投資を選らんでしまう夫婦がいる。

 株式投資をやっても、夫婦で話し合い、喧嘩し合い、喜びあってやっていくのなら、素晴らしいのだが、どうしても、パートナーに内緒で投資をはじめてしまうのだ。もちろん、成功して、ハッピーエンドということもあるのだろう。でも、反対に触れたときに大変な悲劇へと発展する。前に書いた「投資は人に話すな」というのは、夫婦の間では全く反対の結果となる例外である。話さない理由に「お前に全部お金のことはまかせたよ」といわれていたからというのもある。

 株は儲かるときも大きいが、損するときも大きいのだ。お金が5分の1なんてのもザラだし、わずか1ケ月の期間でお金が半分なんてもある。株をやっているひとはわかるだろう。そして、夫婦の間でのお金というのは、だいたい苦労して貯金してきた大切なお金なのだ。将来のために、何年も汗を流して作ってきたはずだ。2人のものなのである。

 もっとも、2人とも株が好きで、2人で相談して損をしたのなら、それはいいと思う。2人でこんちきしょーと悔しがればいいのだ。

 ところが、パートナーに秘密で株などをやってしまい、何年も2人で大切に作ってきたお金を3分の1くらいにしてしまう。マンションかおうね、と頑張ってきた資金2000万円、それを証券マンの言うとおりにかって、旦那に秘密でネット関連に投資してしまい、あっというまに、300万円にしてしまいった主婦をネットでしっている。

 今、このことを旦那さんに隠しているが、彼女は毎日が地獄だそうである。毎日仕事でつかれきってかえってくる旦那にどうしても、はなせないという。貯金通帳を楽しみに見ている旦那さんを見ると、胸が締め付けられるそうだ。自分がしてしまったことを後悔して毎日泣き暮らしているという。おそらく、更なる地獄はこのあとにやってくるのだろう。旦那さんは笑ってすませることはとてもできないと思われる。

 それというのも、夫婦の間で、お金に関する秘密をつくって行なったことだからである。今、旦那さんに、奥様に秘密で株式投資をしている貴方、悪いことはいわないから、きちんとパートナーと相談して、合意した範囲の金額で投資しなおしたほうがいい。2人で考えて投資すれば、株があがったときの喜びは倍になり、さがったときの悲しみは半分になる(古いことわざ)。相手が株式投資に理解を示さなければ、何日でも徹底的に話し合い、大喧嘩をして、合意して、結果としてわずかな資金になってもいいではないか。または、投資できなくなったとしても。

 秘密にして損したときには、夫婦の苦しみは1000倍になるようだ。

9.新規公開株

 最近は新規に公開する株を一般の個人投資家も買える様になってきた。バブル時期には大口投資家以外は入手はできないものだった。

 セブンイレブンという会社の株は新規公開時に1000株買っていて、今、所持していたとすると、5億円になっていることになるそうである。ネットバブル、バブル時期には、新規公開と言えばぼろい儲けが期待できるものと思われていた。今は絶対とはいえない状況になりつつあり、公開してすぎに、公募価格をしたまわることもある。

 公開時の利益を、幹事証券会社、公開企業ともに得るためには、バラ色の未来のイメージを植え付けて、公開することになる。だから、公開前にはその企業に厚めの「お化粧」がなされているのである。公開する前の数年間は、無理やり、右肩あがりの利益曲線を描くように工作されていると思われる。、

 公開して値上がり益が得られなければ、証券会社も企業も困るのである。そのことを忘れてはならない。当然、将来性抜群といいように証券会社側、資料は書いてある。

 まだ、そんなに大きな会社ではないのだから、新規公開株を買おうかと思ったら、その会社を自分なりに何らかの形で調べてみることをお勧めする。証券会社側資料だけで信じて、購入するなんてのはやめましょう。同じ業種の企業につとめる友人にきいてもいいし、店をだしているなら、そこに訪れてみればいい。また、社員と話せば、その会社の人材の質もわかる。商品開発しているのなら、その商品を試しに買って使ってみればいい。

 上場してもう10年とか、たっているのなら、もう会社の実情、実体は明確に世間にわかってきていると思うが、新規公開の会社はまだ見えていない、闇につつまれた部分がほとんどなのだから、値上がりしてほしいと思う証券会社の資料だけを見て、買うのはあまりのも危険すぎると思う。

 公開する直前の会社側の予想の業績では、利益10億だったのが、上場して、すぐ下方修正して、50億の赤字なんてヒドイのもある。もう上場に向かって突っ走ってしまったので、直前に赤字になりました、やめます、とはいえなかったのだろうか。えーい、公開するまで発表を待とう、というとんでもない話しだったのだろうか。創業者も、公開利益に目がくらんだのかも知れない。なんとか、上場するまでは、黒字にしとけ。

 ましてや、最近はいろんな上場基準の市場が増え、赤字でも上場できる場合が多い。だから、投資家はよりいっそう、慎重に新規公開の投資先企業について、自己調査するべきであろう。

10.天才投資家

 少し株があがってくると、すぐにマスコミが「天才投資家あらわる!」と持ち上げ出す。これは世界中で毎回繰り返されることだ。

 彼らは波にのれて、自分の投資方針と株価の動きが偶然一致したのである。だから、莫大な利益を手にいれた。でも、ほとんどは、次の下げ局面に破綻している。マスコミに騒がれた天才投資家を思い出してほしい、みな破綻しているはずである。仲には失踪してしまって(抹殺された?)いる人間もいる。本人は事業家と勘違いしていることもあるが。

 なぜ、破綻してしまうのか。まず、上げ相場で莫大な利益を得るためには、相場が上げても恐怖を感じないで、超強気を保ち続けることが必要だ。勇気といえば聞こえがいいが、蛮行なのだ。もともと、危機意識がない、だから成功したといえる。当然下げ相場でも、恐怖を感じないので、逃げられない、従って破綻する。

 また、マスコミが騒ぐために図にのってしまう、自分の単純な投資方針に自分でほれ込んでしまう、ということもあるだろう。だから、一本やりな投資行動を繰り返してしまう。

 更に上げで得た利益を、再投資の資金として蓄えておらず、湯水のように浪費、またはくだらない物件購入に使ってしまっていることもある。損したときの、クッションがまったくなくなっているので、いきなり破綻する。

 マスコミはともかく、騒ぐ。これはいいのだが、我々一般投資家が警戒しなければならないのは以下のとおりである。

1.投資雑誌、経済雑誌などで、彼らの絶好調のインタビューが連打される。これには、彼らの単純な投資方針が、神の託宣のように書かれている。これを間違っても信じて、追従してはならない

2.彼らの推奨、儲かった銘柄集団に人気が集中する。すなわちバブルになるのである。他の銘柄はまるで、紙くずのように市場で扱われる。このため、彼らの成功話と関連して考えてしまい、自分までその銘柄に投資してしまうのだ。上がり方がハンパでなかった分、下げかたもハンパではない。まさに大損のチャンス?にあってしまう。

3.感化されるのは、マスコミと我々だけではない。評論家、証券会社まで感化され無責任なことを話し始める。知識のない一般投資家までをまきこもうとする。

 天才投資家というのは、タレントに近いものであり、見て楽しむものである。そして彼らの栄華や凋落を見て、面白がるべきものである。生きた平家物語なのである。決して、マネするべきもの、自分の人生、投資の師匠とするべきものではないのである。