2000/9/15 いったりきたり

 橋本内閣が倒れたときのことを覚えていますか?

 バブル後、ようやく景気が立ち直りだして、さあ、これからかというときに、すかさず、財政赤字削減優先と称して、増税、歳出削減、行政改革。その結果、出鼻をくじかれ、景気急降下。今にいたっております。もう、そんなこと、わすれちまった、という人は多いでしょう。

 そのときに、景気に悪影響が出ることはもちろんわかっていて、財政赤字削減のため、それっと大ナタをふるって、改革に乗り出したのであります。そのときに、反対していた経済評論家はいなかったと思います。赤字のことを橋本首相が力説し、国民に理解をうったえていました。

 しかし、景気が急降下しだすと、橋本首相がなぜか戦犯になりました。不思議です。景気悪化の張本人扱い。彼は首相を退いたのです。経済評論家は、景気の腰を折ってしまった、大失敗の経済対策である、橋本の責任だと称しました。

 小渕首相がでてきたときには、「景気回復優先!」として、今度は財政出動をしました。新聞、国民(の多く)は、なにも文句をいいませんでした。拍手はしなかったけど、歓迎をしました。

 バブルの付けが多かったようで、時間もお金もかかりましたが、ようやく、こんど、ちょっと(もしかしたら、全然ないのかもしれないが)、景気が頭をもたげました。で、再度、財政赤字はどうするんだの大合唱です。経済評論家が数値を持ち出し、1人600万近い借金だ!大変だ、わかってんのか、どうするんだ、と叫びだしました。

 はて、前回、日本はどういう失敗をしたのでしょうか?橋本首相が失敗したというのは何だったのでしょうか?もうきれいさっぱり、忘れたのでしょうか。

 だって、橋本首相が財政赤字削減したときだって、景気にどんとパンチがあたることくらい、誰でも知っていて、不退転(新聞より)の決意ではじめたはずなのです。それが失敗すると、なにやってんだ、景気が悪くなったじゃないか、とくる。

 そして、今度は、景気優先でやると、なにやってんだ、大変な赤字じゃないか、何をやってんだ、とくる。橋本首相の政策を変更したときに、赤字は増えるのは承知で、景気回復先行だ、としたはずです。本当です。新聞も経済評論家もうんうんといっていました。忘れたかもしれませんが本当です。故小渕首相のでたときのうたい文句が、景気回復優先だったのです。怒った人間はいませんでした。

 上記の話で、同じ経済評論家と政治家が、コロコロいうことをかえて、赤字削減、景気回復と交互に叫んでいるのはもう大笑いを超えて、なけてしまいます。

 たとえていうと、「生活が苦しい家庭があった。倹約をつづけていたら、奥さんが、ねえ、たまには旅行いきましょうよ、そうでもしないと、頭狂っちゃう、で、だんなも同意して、旅行へいく。かえってくると、家計簿をみて、あー、大赤字じゃないの。もう!どうなってんのよ。あんたの稼ぎがわるいのよ、きー」というところです。お金は使えばなくなります。使わなければたまります。

 もちろん、前回の橋本首相のときと、これこれ、しかじかで事情が違うので、今度は景気悪くなっても、やるのだ、というのならわかります。でも、TV討論などをみても、ただただ、どうすんだ!この赤字は、子孫にこんな借金残すのか!と叫んでおります。

 これでは、国家という船が氷山にぶつかりそうになり、右だ、右に切ったらいや左だといっているうちに、正面衝突してしまうのではありませんか。右なら右(どっちでもいいけど)に徹底してきらないと、氷山はさけられません。

 財政赤字削減、であるなら、国民全員、歯を食いしばり、倒産、失業、不景気など耐えぬき、ともかく国をたてなおそうと一定期間倹約節制して借金返すため、頑張ればいいのです。借金づけなのですから。やがて借金は消えます。景気回復なら、赤字は増えてしまう、でも、なんとか景気を建て直し、金の流れを元に戻そう、そして企業がしっかりし、個人消費が盛り上がったら、そこで増税・財政赤字削減。失業率最大なのですから。どっちもヤダイ、とやりますから、ちっとも、どっちも直らないのです。

 財政赤字削減が優先か、景気回復優先か、どっちがいいかはわたしにはよくわかりません。でも、どっちも御願い(どっちもヤダ)はまずいかもしれません。まるで、先の一家の話になってしまいます。

 政治家の責任ではなく、国民が、彼らを、右にやったり、左にやったり、うろうろさせてしまっているのだと思います。

 と思うのですが....