2000/8/26 巨大化するゲーム開発

 タイトルと違って、いきなりプロレスの話からはいる。30年くらい前の馬場、猪木の時代には、試合もそんなに、過激ではなかった。怪我もしずらかったようである。1年で200試合以上はやっていただろうし、それでも、何十年もの選手生命があったのである。

 最近は、内容がどんどん過激になり、その加速度を増している。バーリトューデュなどがその1つの極だろうし、そうでなくても技が強烈に、かつ危険なものになっててきている。30年前では、ブレーンバスター、逆えび固め、通常パイルドライバー、人間風車(スープレックス)、キャメルクラッチ、ニードロップなどが、試合を終了させる技、きめ技なのである。最高強烈技である。その技がでれば、相手はノックアウトし、試合終了。

 でも今では、上記の技は一般技に格下げになっている。そんな技では終わりに出来ない。もっともっと、危険、強烈な技がきめ技になっている。その過激化はどんどん加速度的にすすんでおり、このままでは、選手生命は短くなるか、けが人、引退者続出となる。プロレスは本来、50歳くらいまでは楽に選手を続けられるのである。

 TVゲームのRPGも、規模、内容ともエスカレートしている。後戻りできないように、ひたすら大きなものになってきている。

 ドラクエの1、2を遊んだが、1は適度な大きさのゲームで「もうちょっと遊びたいな」2では「おお、やりごたえあった」という感じ。このへんが私には適度な大きさであった。3,4,5、6とどんどん大きなゲームとなり、遊び終わるまでの時間・労力は大きなものになっていった。5,6あたりだと、買った人の何割が、最後までプレイしたのだろうか?

 最新作は、シナリオだけで1万数千ページという凄まじい規模である。次回作は楽に5万ページくらいいくのではないか? 過激になると、ファンは増えるが選手生命は短くなるのと同じく、ゲームは話題になるが、必要な開発パワーは巨大なものになり、発売間隔は大きくなってしまう。既に、ドラクエシリーズの発売間隔はオリンピックより大きい。

 でかくなっていくしか方法がないため、莫大な時間・労力、そしてお金がかかっていくようになり、開発のリスクが大きくなる。売れなければ、会社は存亡の危機になるし、そうでなくても、開発失敗すれば確実に会社がつぶれる。また、失敗すれば開発スタッフのショック、心労も大きい。

 「マザー」という糸井重里が開発に参加している有名なゲームがある。ファミコンで1、スーファミで、マザー2を発表し、よく売れた。で、マザー3を開発開始。途中で、NINTENDO64がでたため、方向転換、NINTENDO64での開発となる。PSの好調さに影響をうけ、64ディスクシステム用ゲームの柱にすえられる。で、内容を斬新なものにし、ディスク対応に。町並みなどが、時代の経過で変化していくというディスクシステムのメリットを生かした大変なゲームになっていく。あまりに、規模が大きくなり、ゲームの自由度も大きく、開発は困難を極める。テスト作業も大変なものになることが予想された。

 そして、最近、任天堂は、64後継となるドルフィンこと、GAME CUBEを発表した。これによって、NINTENDO64システムの寿命は間違いなく限られたものとなってしまった。

 64のゲームが売れるのは、間違いなく、今年のクリスマスが最後となってしまう。さて、マザー3であるが、開発は進んでいない、でも開発リミットが決まってしまった。この段階で、マザー3の開発が今年のクリスマスに終わる可能性は残念ながら、なかったのである。プロデューサの宮本氏によると、まだ、3割しかできていないとのことである。これから、また、ドルフィンに変更するとなると、ますます大変な開発作業となってしまうことは明らかだ。

 そして、なんと、マザー3の開発中止というショッキングな意思決定がとうとうなされてしまった。開発チームは解散となった。それまでの開発期間は、な、なんと6年間である。6年。人間の平均寿命と比較しても馬鹿にならない時間である。それでも、3割しかできていないのである。

 作られた膨大な素材、シナリオ、ソフトウェア、デザインなどは無駄になったわけだし、なによりも、6年間汗みどろになって作ってきたものが日の目をみることなく、終わりになってしまったスタッフのショックはいかなるものであろうか。あなたが、6年間精魂こめてつくってきたものが途中で中止となったら、どう思われるであろうか。

 超大作は話題にはなるし、うれるのかもしれないが、こういった悲劇が増えていくことになる。映画は超大作でも、ぼけーと見ていれば楽しめるが、超大作のRPGは最後まで行くのにも大変な労力が必要となる。この方向ばかりでいいものなのか?超大作ばかりでは、いいセンスを持った、小品的RPGを小さな開発会社から生み出せなくなってしまう。

 規模拡大ばかりに向かうのでなく、規模を小さくして、丁寧につくったソフトを小刻みにだしてほしいと思っているファンもいるのではないだろうか。

 プロレスは、ファイトの過激さだけを追及しない、冬木らの団体もあらわれる。エンターテイメントと割り切る動きもあるわけだ。WWFもそうである。RPGゲームも、でかさを追求しない企業があらわれてほしいものである。

 UNIXというOSは、MULTICSという巨大OSの開発失敗を懲りたメンバーが、「もっと軽いOSを作ろう」という発想のもとシンプルなOSを作ったのである。んで、今もWindowsと対抗できるOSとなっている。なおNTはひたすら巨大OSになりつつあるようだ。

 でかくなる一方のものは、いつかその方向を変えないと、崩壊してしまうことになる。恐竜がそうだった。

 この文章も長すぎて、何をいいたいのか、書いている人間もわからなってきている。このへんで終わる。