2000/7/14 広報担当

 雪印の社長の発言が話題になりました。

 あの会見を見て、「あ−この会社の広報担当の人、権限もっとあればなー」って思いました。きっと、広報担当の人は悔しがっているのではないでしょうか。広報によってきちんとコントロールできていれば、あそこまで消費者の怒りをかわなかったでしょう。

 外資系企業にいるとわかりますが、アメリカ人はマスコミに接するときには、本当に慎重です。どういうことを聞いてくるか。そのときにはどう答えるか。資料は何をだすか。どういうことを言ってはいけないか。などを事前に徹底的につめておきます。また、日本法人の担当も、記者の気持ちになって、発表や会見を組みます。新聞A社にだけ伝えれば、B社の記者の顔をつぶすとか、どう伝えれば記者は喜ぶのかなどをよく知っています。

 私も米国の副社長が来たとき、記者会見をさせました。15分程度なんですが、事前打ち合わせは1時間以上です。「まず、イトウは私がどういう内容を話して、記者にどういうイメージをあたえると都合がいいのか」と日本法人の事情をききます。本社に意向を主にして、それをマージします。そして、記者に伝える内容を抜粋して決めます。記者が必要な資料をすぐに揃えて、副社長の写真、経歴書などもそろえておきます。

 まず、副社長がAとBを話す。で、イトウがCとDを話す、と決めます。それ以外は話してはなりません。次に予想される質問を書き出し、一つ一つ、回答の担当とその内容を決めます。これもその通り話すのです。このくらい、外資はマスコミに慎重ですし、また重視をしています。大切な相手なわけです。

 ところが、今回の雪印を見ると、まったく違います。社長は現場とミーティングすることなく、すぐに記者会見に臨んだそうです。これは危険です。外資なら、あらかじめ、じっくりと現場の状況の説明を聞き、広報担当の意見を聞いて、どう質問に答えればいいかを決めておくでしょう。今回のようなパターンでは弁護士も当然、参加すると思われます。もちろん、絶対に言ってはいけないことも伝えられます。

 つまり、記者会見のプロが、コントロールするわけです。社長すらそれに従うのです。雪印では上記に書いたようなことが何も行なわれていなかったように感じます。昨日の記者会見では、4時から記者会見をするからと伝えて記者を集めたのに、8時に伸び、実際は11時だったようです。始まると、短時間の発表を読み、記者の質問には「知らない」「わからない」で「本社に効いてくれ」 これでは誰でも怒ります。記者も人間ですから、これでは好意的に書いてくれるわけがないです。

 雪印にも、広報室はあるのでしょう。でも、いろんな情報が伝わっていないようですし、会見の前に社長や専務をコントロールするような権限を与えられていなかったのではないかと思うのです。

 結果として、会見の席上で、社長が工場長に話しを聞いてしまったり、言ってはいけないことを言ったり、発表はごてごてになり、段取り最悪をやってしまったのでした。日本企業も、「専門家」としての広報担当をおき、専門性を尊重して、会見などの際には、まかせるような体制にしないと、みっともない会見が続いてしまうのかも知れません。