2000/7/4 DNA

 人のDNA(遺伝子)の配列が概要解読終了し、更に完全版を解読中だそうです。まもなく全部わかります。でも解読終わっても、人間の命を自由自在に操れるというわけでは全然ないです。

 なぜなら、遺伝子を「加工」できないからです。遺伝子の切り貼りが自由にできればいいのですが、そんなに小さな鋏や糊はありません。ですから、特定の遺伝子の配列をみつけて切断するという特別な酵素を使ってきり、特定の配列同士で、接続させるようにする酵素が必要です。

 決められた遺伝子ごとに、それだけに作用する酵素を使うのですが、これを1つづつ作らなければならないわけです。結構大変です。遺伝子配列は、公開されるようですね。でも、これを使いこなすための技術、薬品などはまさに各社、各国のノウハウになります。このへんのノウハウを作るのには金も時間もかかると思います。

 遺伝子配列がわかってくると、遺伝子で人間の価値を判断する動きがでてくるでしょう。背の高さ、鼻の構造なんかは、遺伝子でほぼ決まるわけですから。 意外なものも遺伝で決定されるようです。同性愛抑制遺伝子なんてのもあります。同性愛はするな、と抑制する効果をもつそうです。

 もっともっといろんな遺伝子がわかってくるのでしょうね。そのうち、短気な人の遺伝子とか働き者の遺伝子とか...でも、犯罪をしやすい遺伝子なんてわかってきたらイヤだなあ。遺伝子がわかってくると、よくない面もどんどん出てくるでしょう。

 人間で遺伝子で決定されるのは、ほんのわずかでしょう。ヒトラーの遺伝子を持つ人間を作っても、絶対にヒトラーにはならないと思います。シュバイッツアーの遺伝子を合成しても、密林にいかないと思います。人間の行動は、ほとんどが、生まれてからの環境、体験、友人、家族の影響をうけて、構築されてくるわけで、同じ状況になど絶対にならないからです。

 野口英世が医学者になったのは、やけどをしたからで、遺伝子に入っているわけじゃないし、ガンジーも汽車から放り出されたから、あのような偉大な人間になったわけです。

 つまり、人間は、「人間=遺伝子+環境(友人、家族、体験)からの影響+偶然性」で決まるのでしょう。それが十分わかっていない方たちが、「人間=遺伝子」と誤解したままだと、恐ろしいことになりそうですね。

 既に米国などでは、IQの高い人間の遺伝子を持つ精子の市場があるようですし、既に勘違いをしているわけです。大科学者だって、「ああ、勉強して身をたてよう!」と決意することになる、大事件が人生にあったはずなのです。だから、勉強・研究に常人以上の頑張りをしたのだと思います。

 保育器の中で育てれば、遺伝子の要素が100に近づくのでしょうが、人間は社会の中で生きていますので、そうはならないのです。どんないい遺伝子をもっていても、立派な人間になるとはおもえないです。

 DNAは2重螺旋だということは、みなさん、知ってますよね。発見者はワトソン、クリックの2名です。でも、実は、当時壮絶な構造決定の競争が行なわれていたのです。ノーベル賞を2度とっているライナスポーリング博士は、3重螺旋ということで研究を進めていました。DNAの決定の業績は、タッチの差だったのです。このタッチの差は遺伝子の違いではないことは明らかです。

 えーあと薀蓄をば。ジュラシックパークとか、マンモスを生き返らせるとか、面白いですが、ほどんど難しい。DNAは巨大な高分子であり、簡単に壊れてしまうのです。設計図が、古くて、ぼろぼろになり、数100パーツにわかれていたら、ほとんど役にたたないことがお分かりと思います。

 犯罪操作でDNA分析が行なわれますが、DNAそのものを分析しているのでなく、DNAの破片を分析していると思っていただいて結構です。生物再生の話とは次元が違います。

 癌は、DNAがなんらかの理由で損傷し、アホみたいに異常増殖するのが原因です。DNAを傷めるものとして、腸内の悪玉菌の物質、紫外線などがあります。あまり日光にあたらないようにしましょう。夏ですので気をつけてください。