96年10月のようす

 

 10月はパナマで一番雨の多い月です。毎日、滝のような雨が降っています。

 今年はとうとうアオスジアゲハの渡りを見ることができませんでした。それで、せめてモルフォ蝶でも見ようかと、パルケ・メトロポリターノという自然公園に行ってみました。そこは動物や植物を採ることが禁止されていて、山全体が自然のままに保存されています。

 久しぶりに山登りをすると、普段の運動不足のせいで息が切れます。(年のせいもあるけどね)

「ハア、ハア、また日本に帰ったら、弥彦山が待ってるのかね。」

と、日本の学校に勤めていた時の弥彦山全校登山を思い出して

しまいました。実は私も主人も山登りが苦手なのでした。

「ハア、ハア、つらい思いをして山に登って一体何が楽しいんだ?」

などと、登山愛好家が聞いたらカッとしそうなことを言いながら頂上に着くと、たくさんのバッタの飛び交う中、一匹のモルフォ蝶が木々の合間を縫ってひらひらと飛んで行く姿を見ることができました。何だかんだ言いながらも、来たかいがあったと満足して帰って来た一日でした。

 

 モルフォ蝶と言えば、2、3カ月前のこと。お土産屋さんに行ったら、モルフォ蝶の標本を一匹$40という、ばか高い値段で売っていました。 モルフォ蝶は、青く光る大きな羽を持つ蝶で、その美しさゆえ、何百枚も羽を並べて額にした飾り物にされてきました。そのため、数が非常に減ってしまっているそうです。私たちも物珍しさで一匹だけガラスに入っている標本を買ってみましたが、「こうやって、買う人がいるからモルフォを捕まえて商売にする人がいるんだよね〜。」と、ちょっと反省しました。しかし、モルフォ蝶の羽の裏を見てびっくり!まるで茶色の汚い『蛾』そのものの模様です。「この模様だったら、

誰も捕らなかったでしょうに・・・」と思ったのでありました。やっぱり、生きてひらりひらりと森の中を飛んでいるモルフォ蝶が一番美しいと思いました。

 

10月の終わりに鷹の渡りが始まりました。何千羽という鷹が空を悠々飛んで行きます。時々、お見合いでもしているようにぐるぐる回って飛んだり斜めに交差して飛んだりしながら海の向こうに消えて行きました。

 

 ナイキの運動靴

 

 インターネットのお陰でパナマでも日本の選挙速報を見たり、読売新聞や『フォーカス』などの雑誌の一部を読んだりできるようになりました。 

 その中で目を引いたのはナイキの運動靴を巡って、いろいろな犯罪が起きているというものでした。

 

 前に、高校生の双子の甥にナイキ・エアマックス2を送ったので、強盗にあっていないかと心配になりファックスを送って聞いてみたところ、「変な奴に言い掛かりを付けられると嫌なので履いていない。」という返事が来ました。今や運動靴は箱にしまって眺めるものになっているようです。

 パナマではナイキの運動靴は40$〜80$位ですので、同じものが日本で3〜5万円とか聞くと、「何それ!?」です。そんな高価な運動靴を、小学生から大人まで先を争って買っているなんて、日本人はちょっと変です。パナマでもナイキは人気がありますが、

特別値上がりするわけでもなく、大騒ぎは全くありません。わざわざパナマまで運動靴を買い付けに来たと言う日本人がいたりして、「どうなってんの?」です。

 けれども、ある日のこと。靴箱から主人のスポーツサンダルともう一人の先生の運動靴が盗まれました。どうも校舎の修理に来ていたパナマ人が盗んで行ったようです。全部盗むとバレると思ったのか、ナイキの靴だけ盗んで行きました。やっぱりパナマ人もメーカーを選んで盗んで行くのでしょうか。

 

 水泳大会

 

 10月30日(土)は学校の水泳大会がありました。心理、侑理は2年生なので、25メートル自由形と、25メートル平泳ぎの競泳に出ます。

 今年は二人とも速い組になってしまいました。4人のうち心理、侑理以外は3歳の頃から水泳を習っていたお子さんで「こりゃ勝ち目ないわ。」という感じです。それでも侑理が自由形25メートルを27秒で泳ぎ、2位になりました。

 しかし、二人とも(誰に似たのか)かなりの運動音痴なのに、よくこんなに泳げるようになったものです。練習時間が日本にいたときよりもずっと多いからでしょう。

 パナマでは一年中夏なのですから水泳授業が一年間で30回以上もあります。(新潟県だと年間10回くらいでしょうか)ほとんどのお子さんが運動不足の解消のため自分のアパートのプールでも習っているので、泳げるのが当然なわけです。

 さて、水泳大会の日に“50メートルだってスイスイ!”の1年生の中で一人だけビート板につかまって必死に顔を水につけようと頑張っている男の子がいました。水泳大会の2週間前に日本から転入して来たのだそうです。ちょっとかわいそうでしたが、きっと来年はみんなと同じようにスイスイ泳げるようになっていることでしょう。(心理と侑理だって泳げるようになったんだから!)

 

 ところで、パナマ人はさぞかし泳ぎがうまいかというと、とんでもありません。乾季になるとよく川で『何人溺れた』というニュースが新聞に載ります。我がアパートのプールで泳いでいる子供達を見ても泳げる子はいません。水に浸かっているだけか、椅子に寝そべって日光浴をしているだけです。

 パナマの人が泳げない一番の理由は『学校にプールが無い。学校で泳ぎを教えない。』

だと思います。

 そして、二番目の理由は『プールは泳ぐためでなく日光浴をするためにある。』と考えていることだと思います。

 パナマの人達は、こんなに水泳に適した気候に住みながら、水に浸かるだけで泳げない人が多いのです。

 

 お寿司屋さんができた

 

 オバリオ地区に『SUSI・ITTO』というお寿司の専門店がオープンしました。ところがこのお寿司屋さん、メキシコの寿司チェーン店で経営者がユダヤ人だそうで、なんだか変なメニューがたくさんあります。お茶を頼むとコーヒーカップに日本茶が入っ

て来ます。魚のお寿司よりアボガドとかマッシュルームのお寿司のほうがたくさんあって、のり巻きというより、薄焼き卵で巻いたクレープのようです。このお寿司屋が、せめて『小僧寿司チェーン』だったらな〜と思わずにはいられません。

 そして、お寿司の他のメニューがまた変っています。『天ぷらうどん』を頼むと、うどんの上にフリッターのようなふわふわした衣の付いた天ぷらがたくさんのってきます。

その天ぷらの中身がズッキーニというきゅうりの天ぷらだったり、そばつゆが関西風と書いてあるのに、真っ黒で甘〜い天つゆだったりして思わず「何これ?!」です。

 また、『土瓶蒸し』を頼んで、松茸が入っているかと思えば、鳥肉でした。極め付けは『焼きそば』で、本当の日本そばが焼きそばになって出て来ます。お客さんを見ていると日本人より外国人の方が多く、これが『日本料理』だと思われているんだなーと不思議な気持ちになってしまいます。(まあ、インド人が日本のワンタッチカレーを見たらショックを受けるのと同じかもね。)

 お寿司は健康食、ダイエット食として、パナマでも流行るのでしょうか?そういえば、中国人の八百屋でも、けっこう白人の外国人がお寿司の材料を買って行くのを見ることがあります。お家でどんなお寿司を作っ

ているのでしょう?

 

 インターナショナルスクール

 

 インターナショナルスクール(略してインター校)は、アメリカから校長先生が派遣され、アメリカから補助金を受けているアメリカンスクールです。パナマに住んでいるに日本人の方で、お子さんをインター校に通わせている方々から、お話しを聞くことができました。

 

・生活

「土日は休みで水曜日は12時で終わり。他の日は朝7時半〜2時半まで7時間授業がある。」

「夏休みが長くて6月中旬から8月一杯まで休み。9月から新年度。」

「幼稚園から高校まで一貫した教育を行っている。」

「給食は無い。学校内でホットドッグとコカコーラを売っている。」

「入学金が$3000、授業料は一年間で$5000くらい。(日本人学校は入学金$200、授業料一年間で$2400。)」

「教科書は学校から借りて一年間大切に使う。家に持ち帰らない。」

 

・言葉

「ほとんどの授業を英語で行っている。スペイン語の授業は週4時間。」

「日本人の子供がインター校に通う場合、英語を話せるようになるまでは英語の特別授 業を受ける。」

「海外生活が長くなるので、インター校に入れて英語をしっかり身につけさせたい。」

「一年生だけは日本人学校に入れて日本語の基礎をきちんと身につけさせたい。」

「言葉が分からないため、一年分の勉強が空白になった。」

「英語の力をつけるため、家でも家庭教師をつけて勉強させている。」

「日本語を忘れないようにするため、家で国語の問題集をやらせている。」

「学校では英語、メイドと話す時はスペイン語、親と話す時は日本語。兄弟で話す時は ごちゃ混ぜになっている。」

 

・学習

「インター校に行った6年生のお兄ちゃんと日本人学校の3年生の弟が算数で同じ程度 の分数の問題をやっている。」

「掛け算を習うのは日本より一年遅れて3年生になってから。」

「日本の学校からインター校に入った時、言葉が分からなかったが、算数だけは天才と 言われた。」

「計算問題はいつもクラスで一番速いし一番正確。」

「日本に帰った時、算数の遅れが不安。」

「日本人の子がインター校で認められるのは算数か体育。」

「インター校に転入してからなかなか友達ができなかったが、体育の時間にかけっこで クラスで一番速い子を負かしたとたん、人気者になった。」

「日本の子供は体育ならどんな種目もできる。みんな日本の学校で習って来たから。」

「縄跳びや馬跳びを家で教えている。」

「自分で調べたことを発表するのでレポートの宿題がすごく多くて親も必死。」

 

 それぞれのご家庭のお子さんの言葉が『日本語中心』『英語中心』『スペイン語中心』

と様々なのでお家の方の意見も様々でしたが、日本の学校との違いが分かってとてもおもしろかったです。

 例えば、日本の学校では体育の時間に色々な種目を丁寧に教えるので、まあまあの運動神経があれば、インター校に来た時はヒーローになれるそうです。日本人はみんな跳び箱が跳べるし、サッカーもバスケットボールも野球もできるし、足が速いし・・・・なんだか「えっ?日本人が体育が優秀なんて信じられない!オリンピックも悲惨だったのに。」と思ってしまいますが、“天才はいなくとも、みんなができる”これが教育の成果なのでしょう。

 また、理科では日本では先生が教材・教具を使って、色々な分野の学習内容を一つ一つていねいに教えますが、インター校では先生の専門分野しか学習しないことがあります。例えば科学の得意な先生に教わると、その他の生物や物理の分野がすぽーんと抜けてしまうこともあるそうです。

 そして、何と言っても算数の学習内容に驚くべき差があることを知りました。

インター校の6年生と日本の学校の3年生の学習内容が同じだとすると日本の算数はかなり高度です。

 ちなみにバスケス先生のお嬢さんが13歳で高校生だと言うので、「数学は何を勉強していますか?」と聞いたところ、「x,yを使った方程式です。」と言うので、それなら日本の中学生と変わらないなと思ったのでした。

 しかし、日本の算数が高度だということはなんとなく嬉しいような気もしますが、良いことばかりとは限らないかもしれません。5年生を担任した時、かなり内容が高度で、

教科書がなかなか終わらなくて苦労をした経験があります。正直言って、もう少し上の学年で学習した方が楽なのではないかと思うほど難しい問題もありました。

「日本の算数は難しすぎると思うか?」とバスケス先生に聞くと、「パナマの算数が低くすぎるの。」という返事が返って来ました。

 

 幻の休日

 

 10月22日(火)の新聞に、『パナマの元大統領が死去し、24日(木)を国を挙げて喪に服する日に定める』という記事が載りました。それを見て、学校、役所、企業、全てのお店が休みになるという噂が流れ、大騒ぎになりました。

 パナマ日本人学校にも「パナマの学校はみんな休みだそうだが、日本人学校はどうなのか?」「休みの連絡はまだか?」という問い合わせが殺到しました。

 しかし、日本人学校の返事は「パナマ文部省から通達がきていないから休まない。」というもの。「どーしてー???」と言う父兄の方々の声がパナマの青空に広がりました。ところが、新聞には『喪に服する』とは書いてありましたが、『休日にする』とは書いてなかったのでした。23日の夜になって『24日は休みではありません。』というニュ

ースがテレビに出ました。パナマの星空に「なーんだ。」と言う声が広がったに違いありません。

 当日は何もなかったように全てが平常どおり。あの二日間の大騒ぎは夢だったのでしょ

うか。

 

 NOTICIAS

 

10月5日(土)

 外務省の医療団がパナマに来ました。パナマはわりと医療は充実していますが、やはり日本語で相談したいという人は診察を申し込みます。けれども、日本人学校が会場なので、検査と言っても尿検査と血圧だけ。3年間そんな検査しか受けないで大丈夫かと不安になります。(怖いので考えないようにしてますが・・)

 今年のお医者様は聖マリアンナ大学の茶髪の先生を含む3名。来る人は日本の薬をもらうのが目的なのに「僕たちあんまり薬持って来てないんだ。だから薬はあげらんない。」と言って、みんなを怒らせていました。

 侑理の心電図をとってもらうと、紙を見ながら「う〜ん、多分問題ないでしょう。よく分からないけど。」という診断。心理の心電図はとらないことにしました。「あてなの目がちょっと寄り目なのですが・・」と言うと「ちょっと寄り目のほうが色っぽいって言うじゃありませんか。」と言う答えでした。

 

10月12日(土)

 学校の先生方とスクールバスの運転手さんで、リオアトという所に1泊2日の職員旅行に行きました。1番の目的は『お酒』、2番は『釣り』という旅行です。小さな釣り舟を雇って糸を垂らすと、30センチくらいのパルゴという魚が5匹ほど釣れました。

 主人の釣りの最高記録です。

 

10月15日(火)

 JICAの所長が帰国しました。2人の息子さんも転出したので、パナマ日本人学校には中学部3年生がいなくなってしまいました。

 

10月17日(木)

 国立劇場でピアノのコンサートに主人と心理・侑理が行きました。心理・侑理がピアノを習っているドイツ人の先生夫妻のコンサートでした。夜8時開演だったので心理は半分寝ていました。知っている曲が1つしか無かったそうですが、主人は「なんだか分からないけど、ものすごかった。」と言っていました。

 

10月19日(土)

 サッカーの試合がありました。中学生が減ったうえ、子供が11人しか来なかったので、心理・侑理も前半・後半の1時間をフル出場です。(と言ってもほとんどボールに触らない。)前半は 1対1でしたが、後半はみんなへとへとになってボロ負けしました。

 主人はその後、3J会のゴルフ大会に出ましたが、ブービー賞でした。ビリの方は3回連続罰金で、「来月は出場しないぞ。」と決めたそうです。主人はちょっと危ないです。来月はビリかも・・。

 

 

10月31日(木)

 ハロウィーンでした。あてなは幼稚園でパーティーがあるので、朝から魔女のかっこをしています。お気に入りのほうきを持って、バスに乗って行きました。後でパーティーの様子を見に行くと、ドラキュラ、お姫様、獣レンジャー、スパイダーマン、セーラームーン、亀、ウサギ、などのかっこうをした子供達がどろどろになって遊んでいました。

 後で知ったことなのですが、『外国のお祭りであるハロウィーンで仮装して外を歩くものには罰金が課せられることになっている。』と新聞に出ていました。「何これ?」です。そんなこと全然知らずにみんな仮装して歩いていました。

 

 

・ 日本からEメイルをいただいて大変嬉しく思っています。ところが、電話に関しては非常にいい加減な(電話だけじゃないけど)パナマですから毎晩4時間かかってもインターネットにアクセスできず、イライラのあまり『パナネット』という会社を見限って『シンフォネット』という会社に乗り換えてしまいました。しかし!送ったはずのメイルが着いてないなど、未だにご迷惑をかけています。みんなパナマのせいですので、怒らずまたメイルを送ってください。

  

   新アドレス Shinya@sinfo.net です。