96年5月のようす

 

 毎日雨が降ります。去年の今頃は一日一回降る雨がけっこう好きだったのですが、二年目になると体も心もパナマになって来たのか雨季は寒くて嫌いになりました。青空を隠す黒い雲も嫌いです。パナマにはやっぱりさんさんと輝く太陽がよく似合います。

 こうやって太陽に当たっていると、だんだん難しいことを考えたくなくなってしまいます。やっぱり身の引き締まるような寒さも少しは無いと

人間はだらけるな〜、と思います。

 

 

 誘拐事件

 

 5月6日(月)、私たちと同じマルベージャ地区に住んでいる会社社長が、仕事の帰り道で二人組の犯人に誘拐されそうになりました。犯人は警官に変装し、交通違反の取締をするふりをして呼び止めたそうです。

 パナマの警官はただでさえ怪しいのに、今では街に立っている警官を見るたび「ムッ怪しい!」と思ってしまいます。交通違反で「止まれ。」と言われても止まるべきか迷っ

てしまいます。

 また、5月7日(火)にもコロン市でインターナショナルスクールに通う8歳の女の子が誘拐される事件が起きました。身代金を払って無事解放されましたが、スクールバスから降りた直後に車で連れ去られたそうで、日本人学校でもスクールバスにガードマンや教員が添乗して警戒に当たりました。

 それにしても、身代金は15000$(150万円くらい)で、日本の「5000万円用意しろ!」という誘拐に比べるとずいぶん安い気がします。「これなら我が家でも払えるね。」と変な所にほっとしている私たちでした。

 

 ストライキ

 

 パナマの人達はお祭り騒ぎが大好きですが、ストライキも大好きなようです。5月だけでも道路建設の作業員、年金受給者、パナマ大学の学生がそれぞれの要求や反対を訴

えて、毎日どこかでストライキを起こしています。ストライキというといつも出て来る学生達ですが、今回はこんな様子でした。

 

・『国の財政が赤字なので新しい人を雇わない、新しい機械も買わない。』という

  大統領の命令に抗議し、パナマ大学の学生がトランシスミカ通りを封鎖した。

・恩赦法(犯罪人の罪を軽くする法律)案に反対するパナマ大学の学生達数百人が

  道路を封鎖した。石を投げたり、近くに停めてある車に火をつけたりするので警

  官隊が出動し6人を逮捕、40人がケガ。

 

 この後大学はしばらく閉鎖になりましたが、大学を閉鎖したことに怒った学生がまたまたストライキを起こしたそうで「いいかげんにストライキばっかりしてないで勉強したら?」と言いたくなります。

 

 麻 薬

 

 『麻薬と言えばコロンビア』と言われていたのは過去のこと。アメリカがコロンビアの麻薬マフィアを厳しく監視するようになってから、代わりにパナマに麻薬が流れ込んで来るようになりました。今では『麻薬と言えばパナマ』になりつつあります。

 例えば、パナマ市中に建築ラッシュのビルは麻薬でもうけたお金を隠すためだと言われています。しかし、まあ、すごい量の麻薬を運んでいるものです。

 

・コロンビア人一人とパナマ人二人がアメリカとヨーロッパにコカイン(麻薬)14トン

  を送っていた容疑で、パイティージャ空港で逮捕された。

・内務司法大臣は「ダリエン州とサンブラス自治区には麻薬取引のための秘密の滑走路 が存在していることは事実であるが、その数は200もない。」と発表した。

・5月21日(火)税関当局がコロンビアより送られた市場価格にして1500万ドル相当(約 15億円)の大量な麻薬を押収した。

・5月22日(水)二重底になっているアタッシュケースに3キロのコカインを隠して入 国しようとしたジャマイカ人二人がトクメン空港にて逮捕された。

 

 その他パナマらしい事件で、恩赦法案の協議中、ある男性議員が女性議員に「家に帰っ

て子供の面倒でも見ていろ」と言ったところ、怒った女性議員が男性議員を殴り倒すというハプニングもありました。

 

 主人の夢 その1 世界のソニー

 

 日本人学校は私立学校ですので児童の納める授業料が学校の運営資金となります。それで児童数の減少がそのまま運営資金の減少につながります。日本政府からの補助や、日本人会からの援助がありますが、校舎の修理などで使われてしまうため十分とは言えません。それで、パナマにある日本企業の寄付の申し出は非常に有り難いというわけです。

 さて、今年のPTA役員選挙で会長に選ばれたのはソニーに勤める方でした。そして、

嬉しいことに「PTA会長になったお祝いにソニーの製品を学校に寄付をしたい。」と申し出てくださったのでした。

 主人は視聴覚の担当なので、PTA会長を案内して学校で使っている機器を見ていただくことになりました。教務室を出る時に、校長が小さな声で「何でも買ってもらえ。」

と言うので「よっしゃ〜!」とばかりに、あれもこれもと見せて歩きました。

 学校の備品は壊れなければ新しいものを買ってもらえないので、10年以上前のテレビやビデオでも我慢して使っているものです。PTA会長いわく「よくこんなに古いものを今まで使っていましたね。」「う〜ん、これは博物館行きだ。」・・・

 一通り見て回った後で、PTA会長は「全学年の教室に、テレビとビデオをあげましょ

う。」と信じられないようなことをおっしゃいます。さらに「他にほしい物はありませんか。」とのお言葉に、主人も調子に乗って、「CDラジカセを2台と、CDプレーヤー、オーディオラック、スクリーンにスポットライト、フットライト、放送室の校内放送調整卓、おまけにチャイムのアンプなんていかがでしょう。」とお願いしてしまったのでした。

 さて、翌日のことです。ソニーの経理部の方が、まだ早いうちから学校に来て一つ一つの備品をつぶさに調べているではありませんか。きっと、まだ使えるものがないかチェ

ックしに来たのでしょう。やっぱりうますぎる話は実現しないようです。結局全て『白紙』に戻すことに。「たった一日の短い夢だった。」と主人はがっかりしていました。

 

 

 主人の夢 その2 インターネット

 

『インターネット』とは、「たくさんのコンピュータを電話回線でつないで、情報を交換しやすいようにした世界的規模のシステム」のことです。

 我が家は5月16日(木)『インターネット』に加入しました。これでいよいよ日本とコンピュータ通信できることになりました。日本人学校のコンピュータもただ今設定中です。主人の夢だったパナマと新潟の小学校同士の通信も、もうすぐです。

 

 さて、その『インターネット』を使ってこんなことができます。

1 電子メール(e−mail)

   インターネットに加入すると、自分だけのユーザーネームを持つことができます。

   これは郵便の住所と同じでアドレスとも言います。このアドレスを書いてメールを送信すれば、世界中のどこにでも一瞬で着いてしまいます。受け取ったメールは、見たい時にいつでも読むことができます。

   しかも、パナマでは電話代は市内料金ですむので一カ月分で20$。ファックスを送るより安上がりです。これはけっこういい話ですが、問題は相手がインターネットに加入していなければ通じないということです。

   パナマの渡辺真也宛のe-mailは shinya@pananet.com です。 (※注 今は違います)

 

2 WWW(World Wide Web 世界に広がるクモの巣)

  WWWのホームページでは、自分の好きな文字や画像・音声などの情報を一枚のポスターのように提示することができます。今ではテレビのように動く画像も送ることができるようになりました。クリントン大統領が飼っている猫の鳴き声も聞けます。新潟の天気予報を知ることはもちろん、マイアミに行く飛行機の時刻を調べたり、ニューヨークのホテルを探したりもできます。

    また、WWWの情報を見て、世界中のお店から本や洋服、アクセサリー、電気製品などを取り寄せることができます。

    主人が早速コンピュータの部品を注文してみたところ、わずか2日後に品物が到着しました。「こりゃいいわ。今度は何を注文しようかな〜。」などと言っているので『インターネット』はちょっと危ないです。

 

3 ネットニュース

    コンピュータを使ってたくさんの人が入れかわり立ちかわり、おしゃべりをしているという感じです。もちろん会話をキーボードで打たなければならないので、むっつりしながら指だけは忙しく動かしているという『おたく』の世界ですが、顔も知らない人達とおしゃべりするのもおもしろいかも知れません。

 

4 FTP

  世界中のコンピュータからソフトをコピーすることができます。

 

 『インターネット』に加入してから一週間。主人はコンピュータにどっぷりと浸かり込み、放課後は学校のコンピュータとにらめっこをし、家に帰ってからは毎日夜中の1時2時まであれこれやっています。一週間後には朝起きたら7時過ぎという結果になり、

「しばらくコンピュータ禁止!」ということになりました。

 

 主人の夢 その3 ワシントン&ニューヨーク 

 

 春休みは日本から来た家族にパナマを案内する役でしたが、今年の夏休みは任国外へ旅行に行こうということになりました。南米はどうかと考えたのですが、『南米の8月は冬。』『飛行機は4時間待ちは当たり前。』『途中で荷物が消える。』という話を聞くと、3人の子連れにはちょっときつそうです。それに『やっぱり文明恋し』と言う訳で、今回もアメリカを中心に旅行先を決めました。

 ワシントン、ニューヨークは主人が高校生の時、ホームステイ中に行った思いでの場所。「あのリンカーン像をもう一度見たい。」「またニューヨークの道を歩きたい。」という主人の夢もあったからです。

 しかし、今度の旅行から子供の航空運賃が大幅に値上がりし、子供でも大人の75%のお金を払わなくてはならなくなりました。この前までは心理、侑理は大人の半額で、あてなは2歳以下なのでタダ。子供3人で大人1人分の料金で済んだのですが、今回は子供料金3人分を払わなければなりません。あてなも一人前か〜。

 

 

 パナマの習慣 その1

 

 ある日、学校の運転手のルイスさんが主人に「あんたは奥さんを何人持ってる?」と聞きました。主人が当然「1人だよ。」と答えると、「何でたった1人なんだ?」と不思議そうです。そこで主人が「ルイスさんは何人奥さんがいるんだ?」と聞くと、「3人だけだ。」という答えが返って来ました。

 以前お知らせしたように、パナマでは圧倒的に女性の数が男性の数より多いので1人の旦那さんに対し3人の奥さんがいるのも珍しくありません。また、婚姻届けを出すために女性が健康診断を受けてエイズなどの病気でない証明書をもらわなくてはならないのですが、その検査料が40$前後もするため貧しい人達はほとんど婚姻届を出さないのだそうです。

 その結果父親のいない子供がたくさんいますが、母親は女手一つで大切に子供を育ててます。そして、子供が大きくなったら一生懸命老いた母親の面倒を見るという深い絆で結ばれています。しかし、父親は別。父親は家族の一員ではないのです。

 ま、しょうがないことでしょう。

 では、お金持ちの人達はどうでしょう。もちろん法律の上での奥さんは1人ですが、他のアパートに別の奥さんがいることがあります。そして、奥さん達は旦那さんが働いている間、ショッピングをしたり、エアロビクスに通ったり、美容院へ行ったりしています。家事、育児は全て泊まり込みのメイドに任せていますし、子供の学校に関する仕事も一切ありません。何といい身分でしょう。

 つまりパナマにおいては貧乏にしろ金持ちにしろ、何となく女性の方が男性より幸せに暮らしているようです。

 

 

 パナマの習慣 その2

 

 メイドのマルタがわが家で働き始めて9カ月になりました。最近は私にスペイン語を教えようとしているらしく、私が何か言うとゆっくり言い直して「繰り返して見よ」と催促しています。

 58歳でかなり人生経験が豊かなので、パナマの習慣を私たちにも教え込もうとしています。

 心理、侑理が学校から帰ってくると、玄関で靴を脱ぎます。すると、『足を冷やすとリュウマチになる。』と子供にスリッパを履くように言います。心理と侑理は全然言うことを聞かず裸足で歩き回っていますが、私は何度も注意されて「へいへい分かりましたよ。」とスリッパを履くようになりました。

 また、心理が帰ってすぐに冷蔵庫をのぞき込んでいると、『耳の痛い病気になる。』と言って注意しています。

 マルタが私に、冷蔵庫の中から自分のお弁当箱を取ってくれと言うので、「開けてかまわないよ。」と言うと、『アイロンをかけた後で冷たい物に触ると病気になる。』と言います。パナマの昔からの迷信で、アイロンがけの後は洗い物もしません。冷たい水に触るとリュウマチになると信じているのです。

 またこの頃、「我が家に来る時間が遅くなったなー。」と思っていたら、毎朝どこかでマンゴーを採って来るらしく、袋一杯にマンゴーを詰め込んで遅刻して来ます。「セニョーラにもあげるよ。」などと言っているのでなんとなく文句を言う気になれません。

 マンゴーを採るなら遅刻しても良いという言い伝えはなかったと思うのですが。

 

 パナマの習慣 その3

 

 あてなが幼稚園に通い始めて1カ月半経ちました。今のところ風邪で数回休んだだけで、いやがる様子も見せずに行っています。しかし5月になって一つ問題が・・・・

 それは靴です。あてなが家に帰って来たときに、靴を脱がせようとすると、ガムテープでぐるぐる巻きにして靴が脱げないようにされているのです。

 日本人は家の中で靴を履いていることに抵抗があるので、玄関でスリッパに履き替えます。子供はスリッパも履かず裸足で過ごしています。つまり、あてなが幼稚園に着いて一番初めにする事は、靴を脱ぐことなのです。

 しかしパナマでは、日本以外のほとんどの国がそうであるように、家の中でも靴を履いているのが普通です。ベッドの上でもじゅうたんの上でも靴を履いたままが普通なのです。パナマに長く住んでいる方によると、あてなのように靴を脱いでしまうということは、授業中に席から離れてふらふらするのと同じくらい行儀が悪いとみなされてしまうそうです。あてなにしてみれば「いつもおうちの中に入れば靴を脱ぐのに、どうして先生は怒るのかしら?」と思っていることでしょう。親としてはどうしたらいいのか困ってしまいます。

 

 

NOTICIAS

 

5月1日(水)

  ディア デル トラバッホ(メーデー)でお休みでした。日本ではメーデーというとデモ行進をしたり、集会を開いたりしますが、パナマではいつもの事なので珍しくもありません。

 

5月4日(土)

   サッカー同好会が始まりました。今年度の部員は全部で17人。7月末で4人減って13人になることになっています。11人より少なくなったら廃部かな〜。

 

5月10日(金)

   全校遠足でジャングルのサミット公園に行きました。今年の新任の先生方は『晴れ男女』らしく、一日中天気も良くすいか割りを楽しみました。昨年は行事というと雨が降ったのは、やっぱり主人が『雨男』だったようです。

5月28日(火)

   パナマ見学会に私が参加しました。今回はパナマの文化に触れるということで、セラミカ(瀬戸物)のネームプレートを手作りしました。感心したのは参加した奥様方が皆すばらしく上手なことです。パナマの職人さんに負けていません。日本人て何でこんなに器用なんだろうと思わずにはいられません。

 

5月31日(金)

   全校写生会でした。1〜4年生はサミット公園の動物を描き、5年生〜中学部はモラ広場で働くインディヘナの人々を描きます。

   他のお子さんはさっさと描いておたまじゃくしを捕まえて遊んでいるというのに心理と侑理はいつまでも終わらず猿のオリの前に座っていたそうです。これで芸術作品でも描いているのかと期待したくもなりますが、現実はきびしいようです・・・