危険な道を歩む日本


               日刊ゲンダイ Dailymail Business より転載
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■□■ 日刊ゲンダイ Dailymail Business 1999年 1月14日号 No.34
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◆◇ Today's Top News ◇◆
非常に荒れそうだと見られている19日からの通常国会
国民としてこれだけの疑問が解明されない限り到底イエスなどとはいえない

⇒ 決裂か組閣か 自自協議ギリギリの攻防
⇒ 富士重・中島事件で 三塚元蔵相、参考人聴取
⇒ 新潟の毒物混入事件 “容疑者”自供できょうから薬ビン捜索
⇒ 2000年問題 遅々として進まぬ企業の対策

──[ 連 載 記 事 ]──
▼ 【ニッポンを斬る】
・ 大不況下に円急上昇の謎 ──
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─ Today's Top News ─────────────────────────
■ 非常に荒れそうだと見られている19日からの通常国会
■ 国民としてこれだけの疑問が解明されない限り到底イエスなどとはいえない
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7日コーエン米国防長官が自民党池田政調会長に
ガイドライン関連法案の早期成立を迫った。
それにしてもガイドライン法案にはまだこれだけの問題が残されている
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 来週19日から始まる通常国会では、来年度予算案以上に重要といえるガイ
ドライン関連法案が審議される。昨年4月に、橋本内閣が法案提出したものの、
7月と11月の臨時国会でも審議されないまま“たなざらし”にされてきたが、
ガイドラインを作った米国サイドにせっつかれて、いよいよ成立に向けて動き
始めるのである。
「7日、訪米した池田行彦政調会長は、国防長官のコーエンに、ガイドライン
法案の早期成立を迫られました。米国にとってガイドラインは、新たな世界軍
事戦略に沿ったもので、特に朝鮮半島に火種を抱えたアジアでの日本との軍事
協力は不可欠。一日も早く法案を成立させないと軍事行動ができない。北朝鮮
がテポドンを飛ばしたり、ノドンの実戦配備を行ったという情報をもとに、早
く法制化しろと、日本政府に圧力をかけてるのです」(外交事情通)
 コーエン国防長官は、きょう(13日)野中官房長官に会い、明日は小渕首
相に会って早期成立をせっつくつもりらしいが、国会直前に米国の軍事の最高
責任者が乗り込んでくるというのは異例中の異例である。
 九大名誉教授の斎藤文男氏(憲法)が言う。
「この法案は、日本の安保・防衛問題を大きく変えるだけでなく、戦後の平和
憲法を土台から崩す中身です。ガイドラインによる米軍への協力は、憲法9条
で否定している集団的自衛権の容認に当たるし、交戦権を行使することにもつ
ながりかねない。戦後、まがりなりにも守られてきた憲法が踏みにじられよう
としているのです」
 そんな重要な法案が、大した議論もなく、米国のいいなりで決まりかねない
事態だ。数々の関連法の疑問、疑惑が解明されない限り、国民としては到底、
納得できない。

▼ この法案を成立させるには平和憲法の改定 ▼
▲ が必要になってくるがそれでいいのか ▲

 ガイドライン関連法案の最大の問題点は、その中身が、戦争を放棄した憲法
に抵触してしまうということだ。
 そもそも、平和憲法のもとでの自衛隊の活動(自衛権の行使)は、限られて
きた。これまでの政府見解では、(1)わが国に対する急迫不正の侵害がある
こと(2)これを排除するために、他に適当な手段がないこと(3)必要最小
限の実力行使にとどめるべき、とされているのだ。また、自衛権を行使できる
地理的範囲も、「いわゆる海外派遣は、自衛のための必要最小限度を超えるも
ので、憲法上許されない」とされている。ところが、ガイドライン関連法案は
憲法の枠を二歩も三歩も踏み出してしまうのだ。名古屋大教授の森英樹氏
(憲法)が言う。
「ガイドラインでは、日本が戦争に参加するもろもろの条件は、何一ついらな
くなってしまいます。米国が“周辺事態”だと言えば、日本への攻撃がなくて
も、日本は自動的に米軍の戦争に参戦させられてしまうことになっている。し
かも、“周辺”の範囲がアイマイなため、米軍のイラク空爆に自衛隊が駆り出
される可能性だってある。これは明らかに憲法が認めていない“集団的自衛権
の行使”にほかなりません」
 厳密な解釈をすれば、自衛隊だって存在そのものが違憲だ。それを既成事実
の積み重ねでゴマカしてきたのに、一挙に軍隊として海外に派兵するというの
だから、メチャクチャである。

▲ 「後方地域での支援」というゴマカシ ▲

「集団的自衛権の行使」「憲法違反」という批判をかわすため、政府は「後方
地域での支援」と説明している。「戦闘地域の外で輸送や補給に協力するだけ
だから、米軍の武力行使とは一体化していない」という理屈だ。しかし、これ
も奇弁である。神奈川大教授の佐藤司氏(憲法)が言う。
「“後方支援”を普通の言葉に直すと、“兵站”となり、これは立派な軍事行
動です。戦争に前面も後方も関係ない。紛争の相手国から見れば、日本は米軍
と同じ当事国に見えるはずだ。しかも、戦闘ではまず第一に敵の兵站をたたく
のが軍事上の常識。となると、自衛隊も応戦せざるを得ない。後方支援は、交
戦権を認めていない憲法9条2項に違反しているのです」
 政府は、米軍の戦闘機に直接に給油するのでなく、一度、地上のタンクを通
すから軍事行動でないと説明している。こんな子供ダマシで憲法問題をクリア
しようというのだからデタラメだ。
 ガイドライン関連法案を成立させるなら、まず、平和憲法を改定するかどう
かを論議すべきである。


◆ 日本は名実共にアメリカの属国化、 ◆
◆ 世界戦略の基地化させられるのが必至というが、◆
◆ 真相はどうなのか ◆

 ガイドライン関連法案が成立してしまったら、日本はいよいよ名実ともに米
国の属国になってしまう。
「ガイドラインの本質は、米国の国益のために、無条件で日本が参戦する“自
動参戦装置”です。少なくともこれまでは、日本が攻撃を受けた場合に限って、
日米が共同で対処するというものでした。ところが、ガイドラインは、たとえ
日本の防衛とは無関係でも、米国が“これは周辺有事だ!”と言い出したら、
日本は黙って米国のために戦わなくてはならない。周辺有事かどうかを決める
のは米国だからです。日本はノーと言えない。日本は、米国の言いなりで戦争
をすることになります」(立正大教授・金子勝氏=憲法)
 政府は「対米支援を決めるのは日本独自の判断」なんて言っているが、これ
まで米国にノーと言えた総理大臣が一人でもいたのか。だいたい、いまでも在
日米軍が出撃する時には、「事前協議」が義務付けられているのに、一度だっ
て協議されたことがない。
「実際、ガイドラインは日本が一方的に米国に便宜をはかるものです。日本が
提供する支援策はざっと1000近くあるといいます。米軍への武器、弾薬、
燃料、食料などの供給や輸送、空港や港湾の提供など、それこそ、国を挙げて
米国に奉仕することになります」(国会関係者)
 これでは、日本は植民地と一緒だ。

▲ 日本全土が米国の「不沈空母」になる ▲

 ガイドラインを日本に迫る米国の狙いはハッキリしている。ズバリ、日本を、
米国の国際戦略に組み入れることだ。
 元国防長官のチェイニーが、「米軍が日本にいるのは日本を守るためではな
い。米軍が必要な時に出動できるための前方基地として使うためだ」と明言し
たことがあったが、これが米国のホンネだ。評論家の岡本愛彦氏が言う。
「冷戦後、唯一の超大国になった米国は、中東からアジアまで、世界中に君臨
しようと画策しています。アジア戦略については、日本を前線基地にするつも
りです。日本は治安も良く、思いやり予算も含めて年間6400億円も米軍の
ために負担してくれる。そのうえ、優秀な技術力、良質な燃料、食料、水など
が簡単に手に入る。政治家も米国の言いなりです。地理的にも中国へのニラミ
になる。米国にとって、こんな便利な国はない。米国はガイドラインで、その
体制をさらに強化しようとしている。ガイドラインが成立したら、日本は完全
に米国の世界戦略に組み込まれてしまいますよ」
 かつて中曽根元首相は「日本を米国の不沈空母にする」と言ったことがある
が、ガイドライン実施で、日本は米国の下請け、出先機関に成り下がることに
なる。

◆ 政治水準の低いこの国の大部分の国民には、 ◆
◆ この法案の具体的内容をまだ正確に知らない人が多いが ◆
◆ 理解させなくともよいのか ◆

 怖いのは、国民の大半がこうしたガイドラインの実態に気づいていないこと
だ。
 中身を考えたら、大規模な反対デモが起きてもおかしくないのに、だれも危
機感を持っていない。
「国民が危機感を持てないのも、当然です。恐らく、ほとんどの人がガイドラ
インの正確な中身を知らないはずです。それは、政府が巧妙にゴマカし、真相
を隠しているからです。例えば、英文ではハッキリと“ウォー・マニュアル
(戦争手引書)”と書いてあるのに、自民党政権は“ガイドライン”などと、
意図的に言い換えている。昨年末には、1億3000万円の予算を使って、全
国の新聞75紙に“平和のためにガイドライン”という広告を出しています。
中身を知らなければ、国民も危機感の持ちようがありませんよ」(政界関係者)
 もちろん、国民の政治意識が低いということもある。これまでも、何度も自
民党政権に騙されて痛い目に遭ってきたのに、いまだに政権を担わせているお
人よしだ。それに、長年、国の防衛をお上任せ、米国任せでやってきたから、
いまさらガイドラインといわれてもピンとこないのも当然だ。

▲ 次にくるのは国家総動員の有事立法 ▲

 しかし、ガイドラインは国民生活に直結する大問題だけに、“知らない”で
は済まされない。
「ガイドライン関連法案が成立したら、間違いなく日本本土が戦場になります。
例えば、朝鮮半島で有事が起こり、日本の後方支援を受けた米軍が戦闘を始め
たら、北朝鮮は確実に日本を敵国と見て攻撃してくる。いくら日本が“われわ
れは後方支援だけだ”と釈明しても通じない。台湾有事だったら、中国が相手
国になる。日本は米国の国益のために戦火に見舞われますよ。もちろん、空港、
港湾、高速道路も米軍に提供させられるし、民間の鉄道、輸送機関、医師も総
動員させられます」(岡本愛彦氏=前出)
 さらに怖いのは、ガイドラインの成立後には、確実に“有事立法”が浮上し
てくることだ。戦争をやるとなったら、自衛隊や米軍が自由に行動できるよう
な特別な権限を法律で認めたり、自治体や民間に規制をかける法律が必要にな
ってくる。国民生活はがんじがらめにされてしまう。
 実際、久間元防衛庁長官は、かつて「次期通常国会(98年1月)に有事立
法を提出したい」と言っていたものだ。
「大マスコミは、国民にガイドラインの真相を知らせるべきです。なぜ今、ガ
イドラインなのか、周辺事態とはどういうものか、国民生活はどう変わるのか、
記者なら知っているはずです。ガイドラインは、日本から平和憲法を奪い、日
本を米国の属国にし、国民を戦場に送るものです。大マスコミは、今からでも
遅くないから、警鐘を鳴らし、国民に正確な内容を伝えることです」
(金子勝氏=前出)
 ガイドラインは、国民生活をガラリと変える。庶民はそのことを自覚すべき
だ。

◆ この法案に対して自民党以下各党はどんな対応見解を持っているのか ◆

 対米従属、憲法違反のガイドライン関連法案は、国会でどんな審議が行われ、
どんな結末になるのか。それは、与野党各党の法案に対する態度を吟味すれば
見えてくる。
 与党の自民党は当然、賛成だ。最近では国会議員だけでなく、自民党の地方
議員にも、「国民の平和と安全を守るために、地方公共団体に協力要請するの
は当然のこと。ガイドラインが危険だと考えることこそ誤った考え方」という
レジュメを配っている。
 自由党も、「ガイドラインの法整備で、日米関係の信頼をより強化する」と
賛成。しかも、自民以上の安保・防衛強化論だ。
「自自連立の協議でも対立点になっているのが、周辺事態法からの船舶検査の
切り離しです。国連決議に基づく船舶検査は、周辺事態の場合に限定せずに、
広い範囲で実施できるようにしろというもの。これにはさすがの自民党も、憲
法解釈の変更につながると二の足を踏んでいるのです」(関係者)
 繰り返すまでもないが、憲法9条には、「国際紛争を解決する手段としての
武力行使は永久に放棄する」とあり「武力によらない平和」が基本理念である。
ところが小沢党首の主張は、「武力による平和」だ。「ガイドラインなんて、
まだ甘い」と思っているはずだ。

▲ 党内事情で腰が定まらない民主、公明 ▲

 民主党と公明党はどうか。野党が結束して法制化に抵抗すれば、国会論戦は
興味深いものになるが、どうも腰が定まらないのである。まず民主党。菅代表
は本紙にこう説明する。
「問題は、自衛隊の活動がどこまで許されるのか。米軍と一緒にイラクまで出
て行くとなると、これは戦闘目的となり9条に違反する。周辺事態というアイ
マイな範囲ではなく、極東周辺に限定すべきであり、支援計画は事前に国会の
承認を得るようにしないと歯止めがなくなります」
 もっとも、これは菅個人の意見であり、党内での統一見解にはなっていない。
代表選挙に立候補した松沢成文は「国際貢献の義務を憲法改正して明記すべき
だ」と言っているから、むしろ小沢自由党の主張に近いのである。
 民主党は、昨年秋にガイドライン関連法案の「対案」を発表しているものの、
その中身は「両論併記」。この党は、旧新進党や友愛の改憲派と、旧社民の護
憲派の呉越同舟だから、国会審議になって、どう出るかは未定なのである。
 態度未定は公明党も同じだ。赤松正雄衆院議員(安保担当)が言う。
「周辺事態の定義がアイマイだし、支援計画は国会での承認が必要です。しか
し、公明党は昨年11月にできたばかりで、公式な対案はできていません。国
会審議を見ながら修正案を作っていくことになるでしょうね」
 いやはや、なんとも心細い限りだ。事情通が言う。
「ガイドライン関連法案で、党内は2つに割れてます。新進党を経験した衆院
議員を中心に“条件付き賛成派”と、参院議員や地方議員らの“反対派”です。
バックの創価学会は婦人部を中心に護憲・平和の伝統があり、統一地方選を前
に明確に反対を打ち出したい。しかし、自公協力を目指す衆院議員や幹部たち
は、“条件付き賛成”で自民に恩を売りたい。そんな党利党略で、いまだに党
としての路線が決まらないのです」
 党内事情で右往左往の民主と公明。結局は、危険な関連法案作りの協力者に
なりかねないのである。


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■ 2000年問題 遅々として進まぬ企業の対策
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▲ 「とても保険金は支払えません」損保もお手上げ! ▲

 1年後の西暦2000年1月1日、コンピューターがパニックに陥り、世界
中で大混乱が起きる――。この「2000年問題」で各企業は大わらわだが、
ここにきて大手損害保険各社は、被害が発生しても保険金を支払わない方針を
決めた。その理由は「とてつもない被害が生じそうだから」というもの。20
00年問題の深刻さは予想以上のようだ。
 大手損保の法人向けリスクコンサルティングの担当者が言う。
「目に見えて日付が関係する請求書伝票などのシステムの改修に着手し始めた
企業は多いようですが、問題はあらゆる電気機器に内蔵されているマイクロコ
ンピューター。全世界に数百億個も存在するといわれ、いたる所にあります。
この1つでも誤作動すれば、被害はあっという間に連鎖し、大事故や大災害に
つながる可能性があるのです。大手メーカーを中心に全製品について点検され
つつありますが、産業用ロボットやセンサー類、ビルの空調やセキュリティー
関係の自動制御装置などは、ずいぶん問題を残しているようです」
 大企業はまだしも、中小や零細企業にいたっては、対策はゼロに近い。その
ため〈工場のラインで工作機械の作動が少しズレて、不必要な個所を摩擦し続
け、熱で火災が発生する〉〈鉄工所の溶解炉が異常過熱し工場が爆発する〉と
いった危険が予測されている。
 突然、自動車のブレーキが利かなくなったり、心臓のペースメーカーが停止
して患者が死ぬケースも出てきそうだから怖い。果ては発展途上国のミサイル
が間違って発射される可能性だって指摘されている。
「2000年問題の対応が進んでいる米国でも、あらためて再チェックしたら、
手つかずの分野が次々と見つかり、大慌てです。しかし日本では、政府も企業
も怠慢で、対策はほとんど手つかずに近い。今年の暮れには、都市部を脱出し
たほうが無難ですよ」(別の損保関係者)
 これでは損保各社が、「想定不能で保険金は支払えない」と言い出すのも当
然か。


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