耳鼻科で鼓膜に付着していた耳垢を取ってもらって二週間になろうというところで鼻風邪を引いた。
鼻風邪という呼び方が正しいのかは分からないが、正確な部位は、鼻腔の奥、喉に開いた辺りである。内鼻腔と呼ばれるところらしい。
なんで正確に言えるかというと、鼻水を強くすすり上げたときに喉に出て行って痰のようになることがあるが、鼻水より粘度のある洟が出るときにショックを感じるからである。ちなみに鼻水がこのように口にでることを「後鼻漏」と言う。
これ、点鼻薬もうがい薬も届かない、という微妙な場所なのだが (炎症が口腔に広がればうがいの効果が出るようになるが、それは「悪化」したあとの話である) 、「鼻うがい」をすると気持ちいい。
鼻うがいというのは平たく言えば、温かい生理食塩水を鼻の中に流し込んで口から出す、というもの。塩を入れるのは浸透圧を体液と同じにして沁みたり刺激で腫れたりしないようにするためで、殺菌効果があるのかどうかは知らない。
発熱はしなかったが、なんだかダルいので得意の半身浴をした。となるとずっと浴室にいなければならないので、暇つぶしとして漫画の雑誌をいくつか買った。
芳文社の「
まんがタイム」のシリーズを読んでいる、ということは何度も書いてきてるが、こういう読み方の場合、それだけでは足りないので、
竹書房の「
まんがライフ」にも手を伸ばしてみた。
と書くと初めて買うみたいだが、数年前から『動物とおしゃべり』の総集編は買っていて、今年はさらに『
森田さんは無口』も増えて、少なくとも立ち読みはしょっちゅう。
で、今回買った「まんがライフ オリジナル」11 月号を読んでみたら、方言の出てくるマンガが二つあったのでちと紹介。
登場ページ順で、まずは
宇仁田ゆみ氏の『
よっけ家族』。はじめて聞く名前なのだが、『うさぎドロップ』というのは聞いたことがある。
これは三重に住むことになった夫婦の話で、ふたりは嫁さんの家族と同じ敷地内で暮らしている。つまり大家族なのだが、コミックナタリーの
記事によれば「
よっけ」というのは三重の方言で「たくさん」という意味だそうである。
余所者からはいわゆる「関西弁」という感じで、大阪弁との区別はできない。
嫁さんの兄は庭で野菜を作っているが、最初の頃はうまく行かなかったらしい。で、出てくる:
変な形のがちょっとしかとれへんだしな
というのは独特かもしれない。
宇仁田氏は三重出身。
『都道府県別 全国方言小辞典(
三省堂)』によれば、三重は伊勢・志摩・紀伊・伊賀の国があったところで、それぞれに特徴があるが、大きくは南北に分かれるそうで、北のほうは京都が近いせいか影響がはっきりしているが、皆々独自の特徴を持っているそうだ。また、北部は岐阜や愛知に接しており、中部方言の特徴が見られるようになる。
挙げられている語彙で面白いのは「
えばる」で、紙が熱によって反り返ることを言うらしい。これに一単語与えているのがすごい。
もう一つは、大分
前にも触れた
深谷かほる氏の『エデンの東北』。これも長いよなー。ちゃんと読むの初めてなんだけど。深谷氏は福島出身。
こちらは福島方言満載。
かおるが犬を拾ってきたところを母の八重子に叱られる。
どーせうちは貧乏だから飼えないんだっぱい。
この「ぱい」が独特でニュアンスが分からない。「飼えないんだよね」か。
捨てられっちゃとこに戻してきな
この融合も福島の特徴か。
本郷さんげでもらってくれるって
これは「本郷さんちで」ってことなのだが、なんかこの「
げ」については触れたことがあるようなないような。
犬抱いて歩ってる
これは、もらってくれた本郷さんが犬を抱いて散歩している、というオチの部分で出てくる。イ音便ではなく促音便。
本郷家ではその犬がやんちゃで手を焼いているのだが、無粋なことを言えば、自分の足で散歩させて疲れさせないと夜泣きもするよね、ということに。
4コマなんて、読まない人には遠い世界のことに思えるかもしれないが、芳文社と竹書房は映像化の面でも激しい戦いを続けている。
ここのところ話題の『
けいおん!』『
魔法少女まどか☆マギカ』はどれも芳文社の雑誌に連載されている作品。
一方の竹書房は、前述の『
森田さんは無口』『
リコーダーとランドセル』をテレビアニメ化しているが、どちらも竹書房の単独製作である。麻雀漫画の『
アカギ』も有名であろう。実写作品も多い。
ついでに言うと実話系の漫画雑誌はどちらも出していて、「超本当にあった(生)ここだけの話」「本当にあった(生)ここだけの話」は芳文社、「本当にあったゆかいな話」「本当にあった女の波乱万丈人生」は竹書房である。表紙の雰囲気も似ており、なんじゃそりゃ、って感じはある。
まぁ、どちらもがんばって面白い漫画を出し続けていただきたい。