今週は、
秋★枝という人のコミックス『
的中! 青春 100%』。
コンピュータの文字では、星を表す記号は「☆」と「★」の二種類があるのだが、これを入力するときはいつもどっちだか迷う。
特に人の名前に「黒星」ってのは使いづらい様な気がして「★」を入れるのを躊躇するのだが、色が何になるのかは「
★」「
★」と、こんな感じで状況によるので、考えてもしょうがないのかもしれない。
ちなみに Google では、「秋★枝」でも「秋☆枝」でも同じような検索結果になる。Google がよきにはからっているのだと思う。他人の個人情報を集めるだけじゃないらしい。
なお、このペンネームは「アキエダ」と読む。
この人の漫画を読むのは初めてだと思うのだが、全く見たことがないわけではないような気がする。おそらくどっかの4コマ誌でチラっと見たのだろう。
これを買ったのは、表紙の女の子が可愛いから。立派な理由だ。
舞台は中国地方らしい。どこかははっきりしないが、弓道の中四国大会で岡山に行く、という描写がある。作中、「越智」「橋本」という駅が出てくるが、ザッと調べた範囲では、その地域にそういう駅はない。
その辺りのとある高校。
主役の杉本まもるは弓道大好き少年で、嫌いな武将は毛利元就。矢を折るという所業が信じられないから。そういう自己紹介をしたおかげで彼はずっと「毛利」と呼ばれることになる。
*1
もう一人の主役、表紙のコは楠いろは。彼女は弓道経験なしだが、
毛利杉本と同時に入部。
後書きにあるのだが、作品中の言葉は、「山口ベースで愛媛+静岡+わたしの口癖」という感じで作った方言らしく、作者はこれを「
造弁」と呼んでいる。
面白い表現だと思う。
ちなみにググってみたが、清朝の陶器工房「造弁処」の記事がほとんどである。
そんな「造弁」をちょっと。
人の複数形、「たち」が「
ら」になっている。「
先輩らー」と伸ばす形が何度も出てくる。これが西日本の雰囲気をかもし出す。
ほかには、「ないから」の「
ないけー」、「寒いから」の「
寒いけー」、「しようよ」の「
しようやー」がそういう効果を与えている。
うまいと思ったのは「
ぶり」。これは強調の語らしい。
大阪から九州北部にかけて、「
ばり」とか「
ぶち」とかいう語が使われているが、これのバリエーションと言うことになるのだろう。
「
ぶり寂しい」「
ぶり調子えぇ」という表現が出てくる。
わからないのは「
ほ」「
ほい」。
「
ほ」の方は、「
こんな部活で楽しいほ?」「
今好きなひとっておるほ?」という使い方なので、おそらく大した意味は担っておらず、調子を整えるか、疑問形であることをしめすためのものかと思うのだが、「
ほい」の方は、「
これまでテキトーにやってきたほい/引退前だからってちゃんとやるほうが、真面目にやってきた人に失礼かな」「
日頃と変わらず撃っちょるほい当たるんよ」という具合で、「〜のに」という意味なんだと思う。
これは、「造弁」のときに出てきた作者の口癖に相当するんだろうか。
という具合に、わからない言葉 (おそらく正確なところは作者にしかわからない) の文章を読んでると、「
先輩らーと一緒やと勉強かったのう」にも反応してしまう。
これは、先輩達にとっていじられキャラである毛利が、試験前に先輩達に勉強を教わろうとしたが、成果が上がらなかったときに言う台詞。
これは方言ではなく、「勉強
にならんかった」の「にならん」が抜けてるんじゃないかな。
弓道部の話なので、専門用語も出てくる。
「ギリ粉」は、弓を引く方の手
*2の指につける粉で、松脂を煮詰めてすりつぶしたもの。指がスムーズに離れるようになるらしい。弓を引いたときの「ギリギリ」という音からついたんだとか。
的に命中した場合、観戦者 (同チームだけ?)が「射 (しゃ)」と叫ぶ習慣があるそうな。
「学ジャー」という語も初めて聞いた。「学校指定のジャージ」のことらしい。
帯に「ふまじめ先輩×熱血弓道野郎」とあるとおり、毛利が先輩らーにいじられる一年の物語で、そこにいろはとの関係 (あるんだかないんだか) が加わり、くすくすと笑いながら読める。一月発売だが、書店によってはまだ平積みになってるところもあると思うので、是非。