Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第759夜

今頃



 会社の若いのが逝ってしまった。
 若いと言っても、俺より若い、ということで、中堅どころなのだが。
 去年から入院してたらしく、春先にいくらか快方に向かっているような噂を聞いていたのだが、先日、会社から訃報が入った。

 彼とは何度も一緒に仕事をした。現在、俺が派遣されている職場にもいたことがある。仕事はまじめで着実、部署替えなんかがあると取り合いになるような種類の人材であった。
 人当たりもいいので、飲み会などで彼が一緒のテーブルだと、人当たりのよくない俺はかなり気楽になれた。

 俺がここのホームページを持っていることを知っている人は社内ではそんなに多くないが、おそらく最初に見つけたのは彼である。なんで俺だとわかったのかは聞きそびれたが、何度か感想も聞いた。
 ここでは本を紹介することがあるが、読んでみたい、と言ってくれたこともあった。そのとき、貸そうか、と言ったりしないのが俺の悪いところである。その時は、彼は会社に戻っていて、俺は依然として派遣されていたから、顔を合わせるのは年に数回だ、という理由もあるにはあったが。そういう風に言われると、自分が照れるのが先に来ちゃって言葉が続かないのである。

 そう言えば、録画し忘れたかなんかで、「仮面ライダー クウガ」のビデオを貸したことがあった。当時、俺はまだケーブルテレビを導入してなくて、アパートの共同アンテナより室内アンテナの方がまし、という状態だったので、恐縮しながらテープを渡した。そのころはまだ、退社後に待ち合わせてそういうことをする余裕があった。
 手書きで作ったクウガの紋章を壁紙にしてたから、それで連絡をよこしたんだろうな、きっと。
「五代雄介」と書くところを「五代裕作」と書くボケが通じる奴だった。*1

 彼は比較的、秋田弁をまじえて話をする方だった。まぁ、社内の知った顔だから当たり前と言えば当たり前だが。

 病気のせいで容貌がかなり変わってしまい、あまり見舞いに来て欲しくないというような話で、それを真に受けていたから、結局、見舞いには行ってない。復帰の時期を探っている、というようなことだったので、そろそろか、などと思っていたのだが、間に合わなかった。俺が行ったところでどうにかなるわけではないが、本くらい持ってってもよかっただろうに、と今頃になって思っている。まさに、今頃、だ。

 今年はなんだか、精神的に厳しい出来事が多い。




*1
「五代雄介」は「仮面ライダー クウガ」の、「五代裕作」は「めぞん一刻」の主人公。後者の主人公は響子さんか? (
)





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